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レースハイライト

第30回 ばんえいグランプリ

2018年8月12日(日) 帯広競馬場

障害ひと腰で人気馬を突き放す
グランプリ2勝目で重賞通算19勝

 2010年春、士幌町の六車實子さんの牧場で2頭の仔馬が生まれた。ともにウンカイを父に持つ、食欲旺盛な栗毛馬と、その9日後、暴れるようにして生まれた青毛馬。この幼馴染同士が今年の古馬重賞タイトルを分け合っている。
 今年度は青毛のオレノココロが旭川記念、栗毛のコウシュハウンカイがばんえい十勝オッズパーク杯と北斗賞で、それぞれ圧倒的な強さを見せつけてきた。4戦目はBG1、夏の大一番ばんえいグランプリ。出走馬を決めるファン投票ではオレノココロが688票で、466票のセンゴクエースに大差をつけ1位。単勝1番人気は、今年度6戦5勝、2着1回のコウシュハウンカイで1.4倍。2番人気はオレノココロで一騎打ちムードとなった。
 今年の帯広は涼しく、夏らしい日が数日しかないまま秋になりそうな気配をみせていた。馬にとっては過ごしやすく、特に夏に弱いというオレノココロも「今年は楽だった」と槻舘重人調教師。2年前にばんえいグランプリを優勝した時は直前まで夏バテ気味だったそう。今年はさらに、午前3時頃の涼しい時間に調教することでコンディションを整えてきた。
 当日の最高気温は26.9度で、日差しも強く夏らしい雰囲気。縁日などの場内イベントも盛り上がりゴールデンウィーク並の5489人が来場した。レースにはファン投票で選ばれた7頭と、賞金上位馬2頭の9頭が出走。馬場水分は前日までの雨の影響もあり1.4%だった。
 道中はコウシュハウンカイやキサラキクなどが先頭を入れ替えながら、各馬が5回ほど止めるゆったりとした展開。
 最初に第2障害で仕掛けたのはコウシュハウンカイだった。手こずりながら先頭で障害をクリアし、その後5番手で仕掛けたオレノココロが、障害ひと腰2番手で続いた。オレノココロの鈴木恵介騎手は、コウシュハウンカイの障害を見て「届くと思った」。すべての現役馬の特徴を理解し、レース展開を読む能力に長けた鈴木騎手らしい一言だ。残り30メートルでコウシュハウンカイを交わし、騎手の手綱は持ったまま。力強い末脚を見せ、2着に8秒7の差をつけてゴールした。
 残り10メートルで行き脚が鈍ったコウシュハウンカイを差し切った良血馬センゴクエースが2着。世代限定戦のない6歳になっても古馬戦線で好成績を続ける。「ハンデをもらったときにチャンスがあれば」と槻舘調教師は期待を寄せる。3着は好調が続くシンザンボーイだった。
 オレノココロはこれで重賞19勝となり、最多勝記録を持つカネサブラックの21勝にあと2勝と迫った。「戦車のように歩く」と鈴木騎手が評する力強い足取りは衰えを知らず、漆黒の馬体はつやつやと輝きを増す。コウシュハウンカイは珍しい失速で4着だったがこのままで終わるはずはない。秋を迎える帯広で今後も熱い戦いが見られそうだ。
取材・文:小久保友香
写真:中地広大(いちかんぽ)

コメント

鈴木恵介騎手

嬉しいです。この馬にちょうどいい馬場で、スタートも良くいい位置取りで2障害手前に付けられた。相手はコウシュハウンカイだと思って見ながら障害を仕掛け、うまく上がることができた。ファン投票で選んでくれた方の期待に応えられてよかったです。ばんえいを代表する馬なのでこれからも期待しています。

槻舘重人調教師

調子も良く、今年はだいぶ涼しいので馬にとって楽でした。障害に不安があるので、ひと腰で降りられるよう祈って見ていました。馬のことを良く知る騎手の手綱捌きのおかげ。ファン投票1位に選んでくれた方に感謝です。これから大きなレースもあるので、体調を崩さないようにしたい。