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レースハイライト

第22回 マーキュリーカップ JpnⅢ

2018年7月16日(祝・月) 盛岡競馬場 2000m

スローな流れも圧巻の決定力
粘る逃げ馬をとらえ連覇達成

 この3連休は各地で体温を超えるほどの猛暑が伝えられたが、盛岡競馬場の気温は辛うじて30度前後で上昇が収まり、やや蒸し暑いという程度でマーキュリーカップJpnⅢが行われた。遠征馬は計7頭だが、豪雨で道路事情が悪くなった高知のミッキーヘネシーも、プラス体重で元気な姿を見せてくれたことに一安心。14頭が無事揃ってゲートが開いた。
 人気は例によってJRA勢が集めたが、フェニックスマーク(1番人気)とミツバがともに単勝2.2倍となり、連勝式の軸も2頭で割れた。繰り返しの好走が多い盛岡競馬場のグレードレースで前年度覇者か、連対パーフェクトの上がり馬か。2頭は初顔合わせでもあり、比較は難しかった。
 ただ、実戦へ行けば6歳馬ミツバに一日の長があった。ヨシオの逃げをマイネルバサラが追い、フェニックスマークは3番手を追走したが、「フェニックスマークが前にいてレースはしやすかった」(加用正調教師)というミツバも通常より前目の位置取り。どちらも不利のない展開ではあったが、レースのラップタイムは前半1000メートルが1分3秒1に対し、後半1000メートルは1分00秒4とスローな流れ。ヨシオが完全にレースを支配して、最後の直線を向いても脚色が衰えない。フェニックスマークが差を詰めることができないのに対して、ミツバは「ゴーサインを出して、良い反応でした」と松山弘平騎手。見た目にはジワリジワリという伸びだが、残り600メートルから11.8 - 11.3 - 12.5という高速ラップを見れば、他がほとんど順位を変えることができない中で、決定力の違いは明らか。ミツバ自身の推定上がり600メートルは35秒2、昨年ピオネロやクリノスターオーを突き放した時の36秒3よりも、さらに1秒以上早い上がりの脚を使って差し切りが決まった。
 昨年はこのレースの段階で「帝王賞へ行っても良いレースができたはず」と語っていた加用調教師。今年も帝王賞JpnⅠは補欠1位で出走が叶わなかったが、逆に早めに目標を切り替えており、キッチリと2つめのタイトルを獲得した。昨年は川崎記念、JBCクラシック、チャンピオンズカップとすでにJpnⅠ/GⅠで僅差の争いに加わる地力を蓄えており、あとは出走権の確保が問題。「今年はJBCが京都だから、出走権は取れそう。頭数が増えることで位置取りが課題になるね」と秋の大目標は、京都のJBCクラシックJpnⅠに置いている。
 地方勢では北海道のドラゴンエアル(4着)と岩手のエンパイアペガサス(7着)が単勝100倍を切り、期待を集めた。ドラゴンエアルは終始JRA勢の先行集団に手応えよく加わり、最後まで食い下がった。「最後は瞬発力の差が出たが、5着の馬を捕らえたのは収穫」と服部茂史騎手。エンパイアペガサスは先行集団の直後追走も「勝負どころでついて行けなくなりました」と菅原俊吏騎手は語ったが、上記するように勝負どころからのラップは、自身が体験したことのない速いもの。グレードレース2回目の挑戦で、大きな経験を積んだと解釈したい。2頭とも再度の挑戦に期待する。
取材・文:深田桂一
写真:いちかんぽ(佐藤到、国分智)

コメント

松山弘平騎手

スタートは速いほうではないし、外からも来たのでその後ろにつけました。スローペースだったので、早めに動きましたが良い反応でしたし、今日はミツバの強いレースでした。(斤量が)1キロ増えていましたが、昨年以上の強さ。徐々に大人になって成長を感じさせるし、今後も期待しています。

加用正調教師

帝王賞が補欠で、出走できないことが早めにわかったので、目標を切り替えて調整できました。逃げた馬が2着でしたが、前目の位置につけられましたし、フェニックスマークが前にいてレースはしやすかった。この後はエルムステークスへ向かい、京都のJBCクラシックを目標に考えています。