レースハイライト
第21回 黒船賞 JpnⅢ
2019年3月21日(祝・木) 高知競馬場 1400m
好位から早め先頭で押し切る 浦和JBCを見据え会心の勝利
ハルウララブームから15年。連戦連敗の牝馬に、“天才”武豊騎手が騎乗する姿を一目見ようと大勢の人で賑わった2004年の春は第7回黒船賞当日でもあった。その日に記録された高知競馬の1日の売上レコードが今回、更新された。当時を約1億6000万円上回る、10億3090万900円。廃止の危機に瀕していた四国の小さな競馬場だが、その後、全国で初めての通年ナイター“夜さ恋ナイター”や“一発逆転ファイナルレース”の創設、さらにネット投票の普及などにより、こうして息を吹き返した。
最近は在宅で楽しむファンが増えたが、高知競馬にとっては年に一度のダートグレードレースデー。市街地からの無料送迎バスは満席になるなど多くの人で賑わう中、1番人気はサクセスエナジーで単勝1.7倍だった。重賞2勝馬で、以前は揉まれ弱いところもあったが、昨年末の兵庫ゴールドトロフィーJpnⅢでは1番枠ながら上手く立ち回ってアタマ差の2着。内ラチ沿いの砂が深い高知競馬場で3枠3番を引き、どんなレースを見せるかにも注目が集まった。2番人気以下もJRA勢で、地方勢では兵庫ゴールドトロフィーJpnⅢ4着で「地元の方が馬の雰囲気がいい」と赤岡修次騎手が胸を張るサクラレグナム(高知)が6番人気30.4倍だった。
スタートから押して行ったのはサイタスリーレッド。内でクレセントシティー(大井)が応戦するのをサクセスエナジーの松山弘平騎手はすぐ後ろで冷静に見ながら「どうやって外に切り替えようかと考えていましたが、スムーズにいけました」と2、3番手外につけた。その後ろにテーオーヘリオス、外のエイシンバランサー(兵庫)は「今までで一番というくらいのスタートでしたが、今日(の馬場)は無理して行くと止まっていたので控えました」と下原理騎手。さらにサクラレグナムと内にヤマニンアンプリメが続き、2年連続黒船賞JpnⅢ2着のキングズガードはその後ろで自分の競馬に徹した。
最初に動いたのはサクラレグナム。向正面半ばで「先にいい位置まで動いて行こうと思って」と、ペースが落ち着いたところで赤岡騎手がポジションを上げた。しかし、抜群の手応えだったのはサクセスエナジー。「早めに抜け出してしまうと最後が甘くなってしまう馬なので、極力我慢しました」(松山騎手)という中、直線手前で先頭に立った。ゴール前は大外からヤマニンアンプリメが追撃してきたが、アタマ差凌いで優勝。水の浮く不良馬場で、勝ちタイム1分26秒6と速い決着となった。
2着ヤマニンアンプリメの鮫島良太騎手は「直線に向いた時は交わせるかなと思ったのですが。2着ばかりで申し訳ないです」と、今月開業した長谷川浩大厩舎で3度目となる2着。厩舎初勝利まであと一歩に悔しさを見せた。5馬身差の3着に馬体重プラス11キロながら末脚を発揮したキングズガード、さらに1馬身後方では地方馬2頭が接戦の末、4着エイシンバランサー、ハナ差5着がサクラレグナムだった。
昨年はエイシンヴァラーで同レースを制覇した下原騎手は「この馬場で57キロ。良馬場ならもう少しやれたかもしれません」。サクラレグナムの赤岡騎手は「相手が強かったですね。10歳馬ながら頑張りました」と話した。
勝ったサクセスエナジーの北出成人調教師は「脚質的に地方コースが合うと思うので、この後は浦和のさきたま杯を目指す予定です。今年の浦和でのJBCはこの馬にとって一番のチャンスだと思うので、出走枠に入れるようきっちり賞金を加算したいです」と秋を見据えた。
地方競馬全国協会理事長賞の副賞として畜産品が贈呈された
地方最先着は4着のエイシンバランサー(兵庫)
取材・文:大恵陽子
写真:桂伸也(いちかんぽ)
コメント
58キロでしたが、状態はとてもいいと聞いていましたし、強い競馬ができて良かったです。直線に向いた時に手応えが十分ありましたし、抜け出してから頭が上がってしまいましたが、それでも最後までしっかり凌いでくれました。サクセスエナジーともっともっと上を目指してがんばりたいです。
内枠は嬉しくはなかったですが、月1走のローテーションをしっかり走っていて、毛ヅヤもピカピカで体調面の不安はありませんでした。レースは外に切り替えてからは安心して見ていました。先頭に立つとフワフワする面がなかなか解消されないのはもどかしいですが、それでも勝ってくれるので強い馬です。