ダートグレード競走を中心としたレースハイライトや、シリーズ競走等の特集、各種連載など盛りだくさんの情報をお届けします。
font
標準

レースハイライト

第65回 エンプレス杯 JpnⅡ

2019年2月27日(水) 川崎競馬場 2100m

苦心の調整で重賞3勝目 今年も牝馬戦線の主役へ

 混沌としている牝馬ダート戦線。1月に行われたTCK女王盃JpnⅢでは、地方のレース初出走のビスカリアが優勝し新星登場となった。
 舞台を変え、川崎2100メートルで争われるエンプレス杯JpnⅡには13頭が集結。ビスカリア、プリンシアコメータ、ミッシングリンクという牝馬ダートグレードレースの勝ち馬と、昨年のこのレースの3着馬サルサディオーネの4頭が、単勝オッズ3倍台から5倍台にひしめき合う状況。昨年からの情勢を鑑みるとファンが迷うのは当然のことだろう。
 地方からは、昨年のロジータ記念優勝馬クロスウィンドや、関東オークスJpnⅡ・3着のクレイジーアクセルら注目の明け4歳馬、また、ブランシェクール、アルティマウェポンという実績馬などが参戦した。
 ゲートが開くと先手を取ったのはクレイジーアクセルで、スタート直後、主張する構えを見せたプリンシアコメータが2番手に控えた。3番手にサルサディオーネがつけ、この3頭がうしろを少し離してレースが進んだ。4番手にミッシングリンクが追走し、1周目スタンド前で中団から進出したビスカリアが5番手まで上がり、前を窺っていた。
 向正面半ばでプリンシアコメータが先頭に立つと後続の騎手たちの腕も動き始め、3~4コーナーでミッシングリンクとビスカリアが併走しながら迫った。しかし、プリンシアコメータの力強さが上回っていた。「ゴーサインを出したらもう一回伸びてくれた」と岩田康誠騎手がコメントしたように、最後はライバルたちを突き放し先頭でゴールを駆け抜けた。
 2馬身差の2着には大外から猛追したブランシェクール。そして1番人気のビスカリアは3着だった。森泰斗騎手は「外を回らされるようなかたちになり展開が向きませんでした。それでも最後まで頑張ってくれました。もう少し内枠が欲しかったですね。上手く噛み合えばいつでも勝てると思います」と振り返った。
 勝ったプリンシアコメータはこれで牝馬ダートグレードレース3勝目。昨年のレディスプレリュードJpnⅡ優勝の後は、二桁着順が続き人気に応えられずにいたが、ひと息入れて巻き返しの勝利となった。
 矢野英一調教師によると、この中間メンコを外して調教するなど新しい方法に取り組んだとのこと。「年齢的なものもあるし、レース慣れしてしまっているのもあって、いろんな意味でやり直さなくてはと思って。急仕上げではありましたが、直前で動きがとても良くなりました。でもまだまだ良くなるのは先かなと思います」(矢野調教師)。今後は馬の状態次第だが「地方のコースが合う」ということで、今年も牝馬ダート戦線の中心的存在になりそうだ。
 そして中央勢に割って入ったブランシェクールはこれが引退レース。それまで牝馬ダートグレードレースで2着2回と悔しい想いをしてきただけに、このレースに懸ける陣営の想いも強かったことだろう。ただ、最後も2着という結果ではあったが、直線の素晴らしい末脚に胸が熱くなった人も多かったに違いない。
 「なんとか一つ勝たせてあげたかったけど良いところは見せられました。ブリンカーを着けたことで雰囲気が変わって、最後までしっかり走ってくれた。早くこれくらい走らせてあげたかったです。最後の最後で初めてガツンという手応えを感じました」と吉原寛人騎手は語った。ブランシェクールはこの後、北海道に移動し繁殖入りとなる。

地方最先着は2着のブランシェクール(大井)
取材・文:秋田奈津子
写真:築田純(いちかんぽ)

コメント

岩田康誠騎手

本当に上手いこと走ってくれました。ゲートも決まってスムーズにレースができました。ハナを切って自分のペースでという指示だったんですが行く馬がいたので控えました。リラックスしてコーナーを回ってくれて、3~4コーナーも手応え良かったです。先行したら強い馬だし今後も頑張ってほしいですね。

矢野英一調教師

上手くレースを運べたし、最後の直線は力強く走ってくれました。去年のレースを踏まえると逃げた方が良いかなと思い作戦を立てましたが、行く馬がいて流れが速くなって結果的に展開が向きました。直線は机を叩いて応援していました(笑)。強かったですね。まずは今年初戦を勝てて良かったです。