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レースハイライト

第33回 全日本新人王争覇戦

2019年1月22日(火) 高知競馬場

リポート動画

期間限定騎乗の経験を生かす 南関東所属騎手が2戦とも勝利

 一生に一度の舞台、全日本新人王争覇戦。1年で最も寒さが厳しいと言われる大寒を迎えたにも関わらず、最高気温14度でコートを脱ぐ人もいるほど暖かな日差しだった。今年は出場騎手12名中8名が2017年デビュー組で、その年からヤングジョッキーズシリーズ(YJS)が始まった。それゆえ若手同士の戦いをいくつか経験しているとはいえ、高知競馬初騎乗という騎手も珍しくはなかった。
 そのうちの1人は2018年のYJSで2代目チャンピオンに輝いた櫻井光輔騎手(川崎)。高知第1レースでエキストラ騎乗をしたが、「聞いていた通り、馬場は内が深いですね」と改めて馬場傾向を実感したようだった。同じく「高知は初めてですけど、がんばりますよ!」と気合いを見せたのは永井孝典騎手(兵庫)。昨年7月のYJS以来の高知となる富田暁騎手(JRA)は同期の武藤雅騎手(JRA)と一緒にレースの準備をしながらモニターで高知のレースを観察していた。
 第1戦は1400メートル。内の砂が深い高知では内枠不利と言われているが、最内枠に入ったのは現在、高知で期間限定騎乗中の塚本弘隆騎手(金沢)。出場騎手の中で最もこの馬場を経験しているだけに、スタートすると外へ騎乗馬を誘導した。しかし、「もう少し外へ行きたかったんですが、来られてしまって」と、藤田凌騎手(大井)が並びかけて2人がレースを引っ張り、ペースは流れた。
 3コーナーで脚色が鈍る塚本騎手に対し、藤田騎手は少しずつリードを広げて勝利した。2着は仲野光馬騎手(船橋)。「返し馬ではテンションが高かったのでサーっと流して行ったら3コーナーでふわっと抜けてしまいました。過去のレースを見てもそういうところがありそうだったので、レースでは逆のことをやってみようと思いました」と前半は中団に控えて、直線で脚を伸ばした。3着は粘った塚本騎手、4着は「ゴール前、交わせたと思ったんですが惜しかったです」と2016年に31歳でデビューした田村直也騎手(兵庫)。5着に富田騎手だった。
 迎えた第2戦も1戦目と同じくC3クラスの馬による1400メートルの争い。地元騎手が「かなり面白いメンバーですよ」という組み合わせに加え、これで優勝が決まるため1戦目の内容を踏まえて勝負をかけてくる騎手がいるであろうことも想定された。
 しかし、レースは意外にもスローな流れになった。逃げたのはヘキサゴンと岡村健司騎手(船橋)で、2番手に渡邊竜也騎手(笠松)が続いた。「思ったよりも2番手の馬がこなくてマイペースで運べました」と岡村騎手が直線でリードを広げて勝利。2着は好位から脚を伸ばした武藤騎手、3着に渡邊騎手だった。
 2戦を終えて、総合優勝は誰なのか。最も気になっていたのは2戦目を勝った岡村騎手のようで、「レース後、引き返してくるときに(1戦目を勝った)藤田に『何着?』と聞くと、『4着だった』というのでそこで負けを確信しました。今年から1着と2着のポイント差が大きくなったので、勝てればなんとか表彰台の中央に上がれるかなと思ったんですが、悔しいです」。昨年であれば勝てずとも2戦とも上位に入着すれば優勝の可能性もあったが、1着50ポイント、2着25ポイントという今年の設定では、仮に2着、2着でも優勝は不可能。10着、1着の岡村騎手は10ポイント差で2位、3位は仲野騎手と同ポイントながら2戦目の成績上位者という規定で11着、2着の武藤騎手になった。
 総合優勝の藤田騎手は昨年、2位の岡村騎手も長期間に渡って2度、佐賀で期間限定騎乗をした。「偶然ではなくて、佐賀での経験が生きていると思います」と岡村騎手。高知と同じ右回りで小回りの競馬場で数多くのレースに乗った経験は若手騎手にとって大きな糧となっているのだろう。そして、新人王でのこの経験も彼らにとってこれからの糧になっていくことだろう。
取材・文:大恵陽子
写真:桂伸也(いちかんぽ)

コメント

総合優勝
藤田凌騎手
(大井)

2勝することが目標だったので、嬉しさ10%、悔しさ90%です。1戦目はやめるところのある馬と聞いたので、無理に抑えずに行くことを意識しました。2戦目は4コーナーで外に行くか迷った分、勢いがなくなってしまいました。ベテラン騎手もいる普段のレースとは違う展開でまわりから刺激を受けました。

総合2位
岡村健司騎手
(船橋)

1戦目は、返し馬から馬の状態をもっと把握できていればレース運びや結果が変わったのではないかと反省しています。2戦目の馬は気を抜くところがあると聞いていたので、リズム重視で運びました。いい馬に乗せていただけましたね。勝ってこその世界なので、もっと1着をとれる騎手になりたいです。

総合3位
武藤雅騎手
(JRA)

1戦目は出遅れて後ろからになったので早めに動きましたが、最後は脚が上がってしまいました。2戦目は思っていた通り、なるべく砂を被らない位置でレースができ、気分よく走らせられました。優勝したかったので3位は悔しいですが、普段乗る機会の少ない栗東の同期とも一緒に乗れて刺激になりました。