後方追走も3コーナーから一気のまくり
ゴール前余裕の手応えで着差以上の強さ

　今年から、アメリカのケンタッキーダービーへの出走馬選定ポイントレースに指定された全日本2歳優駿JpnⅠ。それを記念して、場内を薔薇色に装飾したり、パネル展示を行ったりと様々なイベントを実施。ケンタッキーダービーが行われるチャーチルダウンズ競馬場の協賛レースとして行われた第9レースの本馬場入場前には、ケンタッキーダービーの馬場入場の際、観客が大合唱をする『マイオールドケンタッキーホーム』が独唱され、川崎競馬場のファンからは大きな拍手と歓声が上がった。
　例年以上にハイレベルと言われた今年のメンバー。兵庫ジュニアグランプリJpnⅡで逃げ切り勝ちのハヤブサマカオーや、北海道2歳優駿JpnⅢを快勝したドンフォルティスなど、JRA勢は実績と勢いのある5頭が参戦。地方馬も、兵庫ジュニアグランプリJpnⅡで3着に好走した北海道のソイカウボーイや、鎌倉記念の勝ち馬リコーワルサー、ハイセイコー記念の勝ち馬ハセノパイロなど期待馬が登場し、これからのダート界を担う13頭が集結した（北海道のダモンデは馬体故障のため競走除外）。その中で1番人気に推されたのは、デビューから2戦2勝のルヴァンスレーヴで単勝1.8倍の支持を受けた。そして、その期待に応える見事なパフォーマンスを披露したのであった。
　ゲートが開くと、先手を主張したのはサザンヴィグラスで、逃げが予想されていたハヤブサマカオーは2番手、その後にダークリパルサー、ソイカウボーイと続いた。ドンフォルティスは中団うしろ、ルヴァンスレーヴは後方3番手でレース進めていた。
　3コーナーあたりから一気に押し上げたルヴァンスレーヴが、逃げていたサザンヴィグラスを直線半ばで交わし先頭に立った。大外からドンフォルティスが勢いよく追い上げてきたが、ルヴァンスレーヴのミルコ・デムーロ騎手は手綱を抑えて余裕のゴールイン。ドンフォルティスとの差は1馬身だったが着差以上の強さだった。
　デビューから無傷の3連勝で2歳ダートチャンピオンに輝いたルヴァンスレーヴ。デビュー戦は7馬身差の圧勝劇、2戦目のプラタナス賞はレコード勝ちと圧倒的なレースを見せてきた。今回はメンバーのレベルも上がり、小回りの川崎コースではあったが、「スタートから勝てると思っていました。とても余裕がありました」とデムーロ騎手。この言葉からも現時点では能力が一枚上だと言っていいだろう。そして「初めて乗った時に良い馬でびっくりしました」というコメントも。トップジョッキーをしてそう言わしめたこの馬の潜在能力や将来性は楽しみでしかない。次走についてはオーナーと相談するとのことだが、海外遠征も含めて今後のローテーションに大注目だ。
　ドンフォルティスの武豊騎手は「3コーナーで大きな不利がありました。能力は高いので先々が楽しみな馬ですが、今日はとても残念です」と悔しい表情だった。それでも、一旦ブレーキを踏んだにも関わらず直線では迫力の末脚が炸裂。3着馬には3馬身差をつけており、負けて強しの内容だ。こちらも今後が楽しみな存在といえよう。
　そして、強力な中央勢に割って入ったのが船橋のハセノパイロだ。最後はダークリパルサーとの争いを制して3着に食い込んだ。「勝ち負けになると思っていたが、相手が強すぎました。そう甘くはないですね。でも3着にきてくれましたから今日のところは良しとしましょう」と佐藤賢二調教師。少し残念そうな様子ではあったが、それはむしろ期待の高さの表れだ。デビュー戦からコンビを組んでいる本田正重騎手は「ほぼ思い通りのレースができました。競馬が上手な馬なのでトビは大きいですが小回りも大丈夫。直線もしっかり伸びてくれました」とレース内容には納得の様子だった。前走のハイセイコー記念を勝った時も、クラシックを意識している馬だと語っていたハセノパイロ陣営。今後のローテーションについては未定だが、来年の南関東3歳戦線で中心の1頭になることは間違いない。