余裕の逃げで後続を寄せ付けず
JBCの悔しい敗戦から重賞初制覇
今年で63回目を迎えた伝統の一戦クイーン賞JpnⅢは、中央との交流となってから21回目。1997年のマキバサイレントを皮切りに、ファストフレンドやプリエミネンス、レマーズガール、グラッブユアハート、ユキチャン、クラーベセクレタなど、その時代を彩った中央・地方の女傑たちの名が勝ち馬として刻まれている。地方競馬を代表した女傑クラーベセクレタが優勝してから、早いもので6年の月日が流れた。先日、クラーベセクレタの初仔エリーザが大井の新馬戦に出走し、記念すべき勝利を挙げたことは話題になったばかり。これも競馬の醍醐味だ。
今年のクイーン賞JpnⅢは9頭立てと少頭数。当初は、JBCレディスクラシックJpnⅠを地方所属馬として初めて勝利したララベルが登録されていたものの回避。1番人気に推されたのは、そのJBCレディスクラシックJpnⅠでララベルと死闘を演じて2着だったプリンシアコメータ。2番人気はスパーキングレディーカップJpnⅢの覇者アンジュデジール。3番人気には重賞初挑戦のアンデスクイーンが続いた。
前走のJBCレディスクラシックJpnⅠでは直線で不利を受けて悔しい思いをしたプリンシアコメータだが、今回はメンバー中一番重い55キロを背負いながらも、力の違いを証明した。
レースは、プリンシアコメータが前走に続いて逃げていく形になり、2番手にアンデスクイーン、3番手にタガノヴェローナで、タイムビヨンド、アンジュデジールも続き、さらにティルヴィング、ラインハートと、ここまでが一団。大きく離れてオヤジノハナミチ、さらに離れたところにタッチデュールがしんがりから追走していく展開。
「返し馬からゲートの中も落ち着いていました。逃げる馬もいなかったので、自分のペースで進めることにして、物見をしながら終始フワフワと走っていました」と、プリンシアコメータとコンビを組んだ岩田康誠騎手。3コーナーでは先団の馬群もばらけていき、そのまま楽な手応えで後続を突き放しにかかった。
アンジュデジールが追いかけていくも、その差は縮まらず。上り38秒0とメンバー中最速のタイムをマークしたプリンシアコメータが、アンジュデジールに3馬身差をつけ重賞初制覇を飾った。勝ちタイムは1800メートル1分51秒8(良)。地方最先着の3着には、JBCレディスクラシックJpnⅠで3着だったラインハートが入った。
プリンシアコメータの母は南関東で走ったベルモントフェリスで、母の父は“南関東のサンデーサイレンス”とも異名があったNARグランプリ2014の特別表彰馬アジュディケーティング。子供たちはもちろんのこと、孫の世代になってからも重賞ウィナーを送り出している、希代の名種牡馬であったことを実感させられる。
さて、プリンシアコメータの充実ぶりには目を見張るものがある。心身ともにパワーアップしていて、「今は課題がありません」と矢野英一調教師もキッパリと口にしていた。
ララベルは来春に繁殖入りすることが決まっているが、それまでに再対決は見られるのか? レディスプレリュードJpnⅡを圧勝し、JBCレディスクラシックJpnⅠは挫跖のため直前回避したクイーンマンボとの直接対決も見てみたい。真冬の牝馬たちの戦いが面白くなってきた。
岩田康誠騎手
前回すごい競馬をしていたので力は上位だと、思い切って乗りました。今日も強い内容でしたね。ゴールした後も元気に走っていたくらい余裕がありました。前回乗せていただいた時よりもパワーアップして馬体もどっしりしました。まだまだ強くなっていきそうだし、大きな舞台で活躍してくれると思います。
矢野英一調教師
前日に調教に乗っていても背中から怖さを感じるくらいの良さだったので自信を持って送り出しました。パワーとスタミナ、それに伴い、持続するスピードも持ち合わせています。どんな競馬でもできるようになっているし、小回りの地方のコースも合いますね。この後は賞金次第で川崎記念を考えています。