ゴール前で人気馬を競り落とす
ベテランの鞍上が大一番を連覇
ホッカイドウ競馬最終日の最終レースに行われる道営記念。場内には今年度の重賞ゴール写真が飾られていた。その中で数多く目立つ芦毛の馬体が、マイル~中距離路線で圧勝し続けたオヤコダカ。しかし前哨戦の瑞穂賞で3着となり、突如一強ムードが崩れた。ファン投票1位、昨年2着の雪辱に燃えるオヤコダカが1番人気で、瑞穂賞を勝ったドラゴンエアルが2番人気、ステージインパクトが3番人気。ドレミファドンが取消し15頭の出走となった。
午後8時時点で気温2.2度と冷え込む中、静内高校吹奏楽部の生ファンファーレでレースがスタートした。
ジュエルメッセージが先手を奪ったところで、ワットロンクンが前に出る。2コーナーでオヤコダカが3番手から2番手へ。ステージインパクトは中団、ドラゴンエアルがやや後方を追走した。
3コーナー手前でワットロンクンが下がり始めたのと同時にオヤコダカが先頭に立ち、これまでのオヤコダカの勝ちパターンかと思われた。その真後ろにぴったりと付けたのが五十嵐冬樹騎手のステージインパクト。昨年の3着馬、ジュエルクイーンも同時に上がる。
五十嵐騎手は小さな体を大きく使う独特の追い方で、馬に気合いを入れる。直線は粘りを見せるオヤコダカとの熾烈な競い合いとなり、ステージインパクトがアタマ差交わしたところがゴールだった。勝ちタイムは2分7秒2。3着は後方からじわじわと伸びてきたドラゴンエアルだった。
五十嵐騎手は昨年のタイムビヨンドに続く道営記念連覇。その時と同じく、外から並びかけてオヤコダカを差し切りトップジョッキーの存在感を示した。初制覇の佐久間雅貴調教師は「ここだけを目標にしてきた」。ホッカイドウ競馬の関係者が目指す夢のレースにかける強い思いがあった。
ステージインパクトの生産者、高山牧場の高山正登さんは「手間暇かけてきた馬です」と笑顔を見せた。ステージインパクトは生まれて5日目で母親を失い、乳母に育てられた。流星が縦に「SI」と見えるので「エスアイ君」と呼んでいたという。SIはステージインパクトと名を変え、道営記念という大舞台で強烈なインパクトを残した。
3日後の日曜日、五十嵐騎手はJRA札幌・すずらん賞を勝ったリュウノユキナで福島2歳ステークスに挑戦する。開催が終わってもホッカイドウ競馬の人馬の戦いはまだ続く。今年度で勇退する師匠の桑原義光調教師とのタッグもまだ見られそうだ。
レース後にはスタンド内で恒例のジョッキー交流会を実施。騎手会長でもある五十嵐騎手をはじめ、2年連続3回目の北海道リーディングとなった桑村真明騎手、この日の準メインとして行われたブロッサムカップをクロスウィンドで勝った佐々木国明騎手らが記念撮影やサイン会などでファンとの交流を深めた。
五十嵐冬樹騎手
ゴール前はなかなかオヤコダカを交わせなかったので、無我夢中で追いました。オヤコダカが前、ドラゴンエアルが後ろにいるのでどこで動いていくか判断に苦労しました。一発があると思って勝ちを意識して乗りました。
佐久間雅貴調教師
嬉しいという言葉しか思い浮かばないです。ゴール前は力が入りましたね。調教は予定通りで、十分のデキで挑めたと思います。この馬のいいところは、どんな展開にも対応できるところ。また来年春から、北海道の重賞戦線で頑張っていきたい。