3コーナーから動いて直線抜け出す
万全の仕上げと鞍上の好騎乗で快勝
門別競馬場に今年初参戦を果たした武豊騎手の人気は絶大だ。10月29日に行われた天皇賞・秋GⅠでは、1番人気の支持を集めたキタサンブラックに騎乗して見事に優勝。今もっとも旬な騎手ともなった武騎手の姿を見ようと、門別競馬場には時間を追うごとに続々とファンが詰めかけた。その武騎手が騎乗したのは、中央から参戦してきた4頭では唯一の2勝馬でもあるドンフォルティス。地元重賞を沸かせているホッカイドウ競馬所属馬たちを差し置いて1番人気の支持を集めたのも納得のいくところだが、単勝1.9倍という圧倒的な人気の背景には、“武豊人気”もあったのではないだろうか。
それでもレースは地元所属馬が意地を見せる。ゲートが開くと、1番枠の利も生かしてディーエスソアラーが先頭に立ち、そのすぐ後ろにはサザンヴィグラスとヤマノファイトが続いた。中央勢を差し置いて2番人気の支持を集めたハッピーグリンは、それら先行勢のすぐ後ろに待機と、地元勢がレースの主導権を握る形となった。
しかし、この展開をものともしなかったのが、ドンフォルティスだった。スタートのタイミングこそ合わなかったものの、徐々に位置取りを上げていくと、3コーナーを過ぎたあたりで大外から先行勢をとらえにかかった。武騎手のゴーサインに反応するかのように残り200メートルで先頭に立つと、最後は手綱を抑える余裕でのゴール。2着には出遅れて最後方からとなったフィールシュパースが入り、期待された地元勢は、早めに先頭に立ったサザンヴィグラスが3着をキープするのが精一杯だった。
この勝利によって、ドンフォルティスを管理する牧浦充徳調教師は中央・地方通じての初重賞制覇となり、また山田貢一オーナーも平地では初めての重賞制覇(障害ではドングラシアスが小倉サマージャンプJ・GⅢを優勝)。またドンフォルティスの父であるヘニーヒューズも、日本で生産された産駒では初めての重賞勝ちとなった。
ここまでダートで挙げた2勝が1200、1400メートルと、戦前は距離不安もささやかれていたドンフォルティスであるが、育成調教を任されていた日高・坂東牧場の関係者からは、「牧場にいた頃から操縦性の高い馬であり、女性スタッフが騎乗していたこともあるほどです。折り合いも付けられましたし、距離の不安はないと思っていました」との声も聞かれた。さらに前週の金曜日から門別競馬場で調整を行い、万全の状態でレースに臨んだ牧浦調教師の手腕も大きかった。そこに、これまで北海道2歳優駿JpnⅢで最多の3勝(中央との交流以降)を挙げている武騎手の好騎乗もあっての勝利となったと言っていいだろう。
インタビューに臨んだ武騎手は開口一番、「天皇賞と同じように、今日も出遅れましたね」と話して、ウィナーズサークルに詰めかけたファンを笑わせた。ファンの期待に結果で応えてみせただけでなく、そうしたエンターテイナーぶりもまた、武騎手の一流たる所以であろう。
インタビューの終盤で北海道2歳優駿JpnⅢとの相性の良さを聞かれると、「門別は好きな競馬場です」とも語った武騎手。その言葉に来年は何度でも参戦して欲しいと、この日、門別競馬場へ足を運んだファンは思ったに違いない。
武豊騎手
距離も初めてだっただけに、前半は無理をしたくないと思っていましたが、すごく利口な馬なので、いい感じで走ってくれました。手応えの良さにも現れていたように、馬の状態も良く、早めに抜け出す形にはなりましたが、直線半ばでそのまま押し切ってくれると思いました。
牧浦充徳調教師
前走の後は兵庫ジュニアグランプリを選択するか悩みましたが、距離の不安こそあったとはいえ、門別競馬場の広いコースはこの馬に向いていると思い決断しました。これまでの重賞では惜しいレースもあっただけに、ようやく勝てたとの思いもあります。今後は全日本2歳優駿に向けて調整を続けていきます。