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2017年10月9日(祝・月) 盛岡競馬場 1600m

必勝パターンに持ち込み連覇
ジーワン10勝の記録に並ぶ

 マイルチャンピオンシップ南部杯JpnⅠは、秋のダートGⅠ/JpnⅠ路線の第一戦。それだけに、この路線の常連は夏休みを挟んでいることが多く、予想は決して簡単ではない。ただ、結果的には単勝式1倍台の人気馬が8年連続で2着以内にまとめており、実績馬が高い安定度でファンの期待に応えていた。
 ところが今年は少々様相が異なる人気分布になった。前年の覇者コパノリッキーはかしわ記念JpnⅠを勝ったあと帝王賞JpnⅠを回避して少々順調さを欠き、このレースを過去3年1、1、2着のベストウォーリアもかしわ記念JpnⅠ・4着、さきたま杯JpnⅡ・3着と微妙に着順を落とし始めていた。一方でフェブラリーステークスGⅠを勝ったゴールドドリーム、根岸ステークスGⅢを勝ってフェブラリーステークスGⅠを3着したカフジテイクに勢いが感じられてファンの支持を集め、最終的な単勝人気はコパノリッキー3.1倍、ゴールドドリーム3.4倍、カフジテイク3.5倍で拮抗、ベストウォーリアが4.8倍で続くという構図となった。
 ただ、そんな拮抗した人気分布とは異なり、レースを完全に支配したのはコパノリッキー。2番人気のゴールドドリームが大きく出遅れる波乱のスタートになったが、田邊裕信騎手が「あれこれ考えず、揉まれない位置でレースを運ぼうと思っていた」というコパノリッキーはノボバカラ、ウインフルブルームが先行する3番手を確保。4コーナーでは楽な手応えで前に並びかけるという必勝パターンに持ち込んでいた。最後の直線もほとんど競り合うところのない4馬身差の抜け出しは、完勝といって差し支えないだろう。
 後続は逃げたノボバカラが「マイペースで運べて、思った以上の展開」(吉原寛人騎手)になり、迫ったキングズガードを振り切って2着。いつもよりも前めの好位置を確保できたように思われたカフジテイクの福永祐一騎手だが「あの位置を取れても3~4コーナーで手応えが悪くなる」と位置を上げられず、道中コパノリッキーの内にいたベストウォーリアの戸崎圭太騎手は「4コーナーで他馬と接触して手応えがなくなった」といつもの鋭さを欠いた。前半から緩いペースになり、上がり600メートルが11.8−11.3−12.1と速く、直線勝負のタイプには厳しいラップタイムでもあった。
 コパノリッキーはGⅠ/JpnⅠを10勝目。レース間隔が開いていたとはいえ、かしわ記念JpnⅠに続く連勝で足踏みすることなく、ホッコータルマエと並ぶ記録を達成した。田邊騎手も「記録は頭に入っていたので、自分が流れを止めたくなかった」と数字は意識していた模様。自身もコパノリッキーとのタイトルは今回で5つめ(あと5つは武豊騎手)。特に盛岡競馬場では2014年のJBCクラシックJpnⅠ、昨年の南部杯に続いて3戦3勝で、抜群の相性を誇っている。時間が経てば経つほど、岩手競馬の歴史で語り継がれていくコンビになったといって間違いない。
 戦前はコパノリッキーとベストウォーリアの7歳馬に対し、ゴールドドリームやカフジテイク、ノボバカラといった4、5歳勢が相対して「そろそろ世代交代が進むかも」という図式も考えていたが、今回はコパノリッキーが完全にその流れを押しとどめた。次走予定はこれまでに縁がなかったチャンピオンズカップGⅠで、さらにタイトル数の更新がなるかどうかに注目が集まる。
田邊裕信騎手
若い頃から強いと思っていましたが、3、4年経ってまだまだ走る。精神力や体力が強いですね。気分よく走らせようと、揉まれない位置で。行くと思っていた馬が先行し、思っていた位置がとれ、絡む馬もいなかったのでこれ以上ない展開。ジーワン10勝の記録も頭に入っていたし、ホッとしました。
村山明調教師
帝王賞を回避し、間に合えば南部杯という乗り込みで、追い切りは少し足りないかと思っていましたが、良い走りをしてくれました。4コーナーも良い感じで回ってきたし、(コパノ)リッキーらしい走りでした。次走はこれまで取れていないチャンピオンズカップが目標です。


取材・文:深田桂一
写真:いちかんぽ(佐藤到、国分智)