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2017年10月4日(水) 大井競馬場 1200m

大井1200mのスペシャリストへ
目指すは同舞台のJBCスプリント

 1200メートルのスプリント戦となれば、スピードに優るJRA勢の独壇場といった印象があるが、この東京盃JpnⅡだけは別。1995年に交流が開始されてから2004年までの10回(02、03年は1190メートルで実施)で、地方勢が7勝、JRA勢が3勝と、かつての地方勢は圧倒的な成績を残していた。直線が長く、スピード一辺倒では乗り切れないタフな大井1200メートル。JRAの競馬場とは違う砂質も影響していたように思われる。
 さすがに近年はJRA勢も大井の馬場特性を手の内に入れてきた印象で、フジノウェーブ、ラブミーチャンといったダートグレードでJRA勢と互角に戦えるレベルでなければ勝ち切れていないが、それでも地方勢にとってみればゲンのいいレース。今回の出走メンバーにもブルドッグボス(浦和)やトウケイタイガー(兵庫)などのグレードウイナーが名を連ね、地方馬の勝利が十分に期待できる布陣となった。
 えてして地方勢が……、と言うべきか、しかし……、と言うべきか。勝ったのは7番人気の伏兵、船橋のキタサンミカヅキだった。前半3ハロンが35秒2と、このクラスのスプリント戦のわりにはスローな流れを先団の後ろで我慢し、4コーナーで外に持ち出すと抜群の末脚で差し切った。勝ち時計1分12秒1はキタサンミカヅキ自身が勝ったアフター5スター賞よりも0秒5遅く、いわゆるスローの決め手勝負。外めが軽い今開催の馬場も味方につけ、持ち前の鋭い決め手を存分に発揮した。
 浦和のエース・繁田健一騎手は、これがダートグレード初制覇。しっかり追える腕っぷしは健在で、レース運びにも円熟味を増している。まさに今回のレースは繁田騎手の真骨頂といえるだろう。また、管理する佐藤賢二調教師はヒガシウィルウィンでのジャパンダートダービーJpnⅠに続く、今年2度目のダートグレード勝利。「JRA勢に一矢を報いたい」が今春の口癖だったが、2本目の矢でも見事にJRA勢を撃破した。
 一方で、悔しそうな表情を浮かべたのは、2着に敗れたブルドッグボス鞍上の左海誠二騎手。直線の入口で先頭に立ち、押し切るかと思われたところで勝ち馬の強襲に遭った。「ゴール前で遊ばれた。でも、大井は合っているし、状態も良くなっているから」と、来たるべきJBCスプリントJpnⅠでの再戦に向けて、前を見据えた。
 JRA勢では、1番人気のニシケンモノノフが3着。横山典弘騎手が「休み明けだからね」と話したように、今回は約4カ月ぶりの実戦。それで勝ち馬から0秒2差なら上々で、叩き2戦目となる次走は前進が期待できる。
 勝ったキタサンミカヅキは、これで転入後2連勝となった。ペースに関係なく確実に押し上げてくる強じんな末脚は、まぎれもなく大井1200メートルのスペシャリスト。JRA勢の逆襲も十分に考えられるが、ベストの舞台なら、史上2頭目となる地方馬のJBCスプリントJpnⅠ制覇も夢ではない。
繁田健一騎手
馬体が増えていたけど、パワーアップが感じられたし、自信を持って乗ることができました。道中でためていければ、切れを発揮するタイプ。最後はかわせるか分からなかったけど、かわすことができて良かったです。前走よりも良くなっているので、今後も順調にいってくれればと思います。
佐藤賢二調教師
前走は状態が今ひとつでしたが、今回はだいぶ良くなっていたから、内心期待していました。きょうが誕生日だった北島三郎オーナーにも、いいプレゼントができましたね。次走はJBCスプリントの予定。またJRA勢に対抗できるよう、ビシッと仕上げて臨みたいと思います。


取材・文:大貫師男
写真:早川範雄(いちかんぽ)