2017年8月13日(日) 帯広競馬場

障害先頭で人気馬を振り切る
堅実な走りで今季重賞2勝目

 ファン投票によって出走馬を決める、ばんえい競馬の真夏の大一番、第29回ばんえいグランプリ。お盆休みと、道内でも最大級の規模を誇る勝毎花火大会の日程が重なって帯広近郊は大混雑。ナイターレースのためスタンドからも花火を観られるとあって、帯広競馬場には7,812人が訪れた。
 1カ月前には37.1度まで気温が上がって日本一の暑さを記録した帯広だが、この日のレース時は16度と肌寒い。パドックで見る馬たちも涼しい気候のおかげか調子が良さそうだ。朝まで小雨が降り続き、馬場水分は1.8%の軽馬場となった。1番人気は通算4000勝まであと4勝となった藤本匠騎手のコウシュハウンカイだった。
 好スタートのコウシュハウンカイが先行してレースを引っ張り、ニュータカラコマとオレノココロ、キサラキクをはじめ各馬が先手を奪いに行く。繰り上がり出走となった竹ケ原茉耶騎手のシンザンボーイが少し置かれた格好。2障害手前までは53秒という、ばんえいグランプリにしては速い流れだった。
 最初に障害で仕掛けたのがコウシュハウンカイ。このレース2勝のフジダイビクトリーが続くが膝をついた。そしてコウシュハウンカイを見ながらひと腰で障害をクリアしたニュータカラコマがわずかに先に降りた。
 2頭の競り合いはゴールまで続き、ニュータカラコマが約半馬身の差を縮めさせないまま押し切り、ばんえいグランプリ初制覇を果たした。惜しくも2着のコウシュハウンカイ・藤本騎手は「いい位置で降りているのに歩かなかった」と悔しそうな表情。ファン投票1位のオレノココロは3着だった。
 ニュータカラコマは昨年度から一度も掲示板を外さない堅実な走りを見せ、北斗賞こそ連覇していたが、重賞ではあと一歩のレースが多かった。それが今回は7月の北斗賞から重賞連勝で4連勝。藤野俊一騎手は「春に一度調子を崩したが、その後は暑さにも負けなかった」といい、調子の良さをうかがわせた。
 小森唯永オーナーは「これでまた、ばんえいのファンが増えてくれれば」と笑顔。ばん馬の生産頭数が減り続ける中、帯広市内の牧場に繁殖牝馬を導入して競馬を支える。
 生産者の北村治嘉さん(池田町)は80歳。年齢的に生産をやめることも考えたというが「馬が好きだし、母の花姫は名繁殖牝馬。まだ15歳と若いから子どもの活躍を楽しみにしている」と期待する。産駒数のわりに活躍馬を多く輩出している父ナリタビッグマンを管理していた赤間清美さんは「聞き分けの良い産駒が多い。ニュータカラコマは絵に描いたような歩き方をする」と評価していた。
 帯広単独開催10周年を迎えた今年度は馬券の発売額が1億を超える日が続き、この日の売り上げも約1億4600万円。役者ぞろいの古馬戦線が、これからの秋競馬をさらに盛り上げてくれることを期待したい。
藤野俊一騎手
障害を降りた時、ゴールまで辛抱してくれと願っていました。端コースだと第1障害までの走りが悪い。それでも雨の馬場が馬に向いていた。花火も競馬も見られて、こんな競馬場はないんじゃないか。
尾ケ瀬富雄調教師
夏負けしなかったのは良かった。雨で馬場もこの馬に向いたが、それよりレースの内容がよかった。道中、障害と平均していいレースができた。これからは重量も重くなるから、大事に使っていきます。


取材・文:小久保友香
写真:中地広大(いちかんぽ)、NAR