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2017年7月17日(祝・月) 盛岡競馬場 2000m

馬体を併せ発揮した闘争心
クビ差凌いでグレード初制覇

 帝王賞JpnⅠはJRAからの出走馬で唯一GⅠ/JpnⅠ勝ちのなかった4歳馬ケイティブレイブが、よもやの追い込み勝ち。東京大賞典GⅠのアポロケンタッキーから、川崎記念JpnⅠのオールブラッシュ、フェブラリーステークスGⅠのゴールドドリームと若い4、5歳馬によるGⅠ/JpnⅠ初勝利の流れが続いている。ここ13年で7歳以上の馬が6回優勝しているマーキュリーカップJpnⅢも、今年はグレードレース勝ち馬がクリノスターオー1頭のみというメンバー構成で、他馬はそれぞれ初グレードタイトルを目指すという構図になった。
 レースは、前を行くJRA勢5頭に、北海道のドラゴンエアルが差を詰めての上位争い。今年も盛岡ダートは高速馬場で、決して速く見えることはないが、200メートルごとのタイムが12秒前後でコンスタントに流れていく。ドリームキラリが逃げ、クリノスターオーは2番手。その後ろにディアデルレイ、ピオネロは内に併走して先団はポジションが固まった。
 ミツバは2番枠からのスタートながら、2コーナーを回るあたりでは外へ持ち出して追い上げ態勢を整える。先行勢がピッチを上げた3コーナーあたりでは、反応今ひとつと見えたが、松山弘平騎手は手を動かし続けて直線勝負へ。加用正調教師が「馬体を併せた時に闘争心が出た」というように、ここからの伸びは一段ギアが上がったかのよう。最後は内を割ってきたピオネロとの勝負になったが、クビ差凌ぎきってのゴールインとなった。
 グレードレース初勝利となり、ミツバは今後ダートグレードの常連となっていきそうだが、2月にはすでに川崎記念JpnⅠで4着がある。「帝王賞は使えるものなら使いたかった。ケイティブレイブとは良い勝負をしていたのだから、帝王賞があの結果ならこの馬も良いレースができたはず」と加用調教師。今後はひとまず夏休みを挟むようだが、そのあとは大きなタイトルへ向けてのステップを踏んでいきそうだ。
 地方勢では北海道所属のドラゴンエアルが5着に食い込んだ。元は川崎デビューでダービーグランプリを制し、ダイオライト記念JpnⅡ・4着の数字もある馬だが、その後に約1年7カ月の長期休養があっただけに、価値の高い5着と思える。
 なお、地元のトライアルレース、みちのく大賞典を勝ち、デビューからここまで南関東でのレースも含み16戦12勝のエンパイアペガサスは当初より登録がなかった。「みちのく大賞典後、少し不安が出たので回避は早くに決めました。なんとか間に合わせたという仕上げで出走させるレースではないし、それで悔いの残るような結果を出したくない。青藍賞(9月10日、水沢1600メートル)から、大きいところを目標にできるよう調整していきます」と佐藤祐司調教師。早く大舞台へ挑戦する姿をと、こちらの気がはやるが「本格化は5歳以降」と陣営は見ている模様。そして、ビッグタイトル奪取へ向けての意欲も高い。今年から『メイセイオペラ記念』とサブタイトルのつけられたマーキュリーカップJpnⅢだったが、その広報ポスターには「偉大なるメイセイオペラの物語は、ここから始まった。」とも記されている。次回以降は地元勢も上位争いに加われるようなレースを期待したい。
松山弘平騎手
馬のリズムを第一に考え、前残りの展開もあると思いましたが、広いコースなのでミツバに合う競馬をしようと思いました。思ったより良い位置で運べましたし、動きたいときに動ける位置。3~4コーナーでズブさが出るのが課題ですが、直線はしっかり伸びました。
加用正調教師
相手はピオネロ、あとはクリノスターオーがどのくらい粘れるかと思っていました。3分3厘から前が動いた時の動きが悪かったのですが、馬体を併せた時に闘争心が出ました。ケイティブレイブとは良い勝負をしていましたから、帝王賞は使えるものなら使いたかったですね。


取材・文:深田桂一
写真:佐藤到(いちかんぽ)