第3戦で上位独占のチームEASTが優勝
個人優勝は3戦とも掲示板の矢野騎手
海の日に行われるジャパンジョッキーズカップは今年で3年目。JRAから4名、地方競馬は各地区から1名ずつ計8名の騎手が招かれ、チームJRA、チームEAST、チームWESTに分かれて着順ごとのポイント合計を競うこのシリーズは、初夏のイベントとして恒例となった感がある。それを裏付けるかのように、筆者が乗車した盛岡駅から競馬場に向かう11時半発の送迎バスは、途中の停留所で積み残しが出てしまうほどの大混雑。競馬場内もにぎやかで、レースのたびに大きな歓声が聞こえてきた。
全3戦で争われるジャパンジョッキーズカップは、表彰対象がチーム戦での1位と、最多ポイントを獲得した騎手。メインとなるのはチーム戦だが、各騎手ともひとつでも上の着順を目指すということでは変わらない。
第1戦はC1クラスのメンバーによるダート1200メートル戦。短距離戦ではあるが、向正面から隊列はやや長いものになった。そのなかで一枚上の実力を見せたのがレイズアスマイル。鞍上の内田博幸騎手(JRA)が「力の違いですね」と話した勝利は、道中2番手から抜け出すという内容で、逃げて粘れなかった山口勲騎手(佐賀)が内田騎手の肩をもみながら「強すぎるよ」と笑いながら言うほどの完勝だった。
2着には、7番手から外を回って伸びてきたクリストフ・ルメール騎手(JRA)が入線。続く3着には矢野貴之騎手(大井)が入った。
人気の面ではジョッキーレースならではという点が見受けられた。数種類の専門紙において印の数が少なかった戸崎圭太騎手(JRA)とルメール騎手の馬が、ともに単勝7.8倍(票数の違いでそれぞれ4番人気、5番人気)の支持を受けていたのだ。これは“騎手で買った”人が多かったことの証明ではなかろうか。
芝1700メートルで争われる第2戦は、ルメール騎手のビッグバンドジャズが、盛岡の芝は初めてでも1番人気。この馬もまた、専門紙では印がそれほどついていない馬だった。そういった面もジョッキーレースの面白さだ。
ほぼ一団で進んだ馬群は4コーナーで大きく横に広がり、そのいちばん外を通った下原理騎手(兵庫)が差し切り勝ちを飾った。
検量室に戻ってきた下原騎手は「芝で初めて勝ちました」と、びっくりを通り越して感動しているという面持ち。「SJTや佐々木竹見カップに出させてもらって、それで左回りに少しずつ慣れてきた感じがありますね」と、興奮ぎみに話した。
クビ差の2着には戸崎騎手。「横一線から抜け出したと思ったんですけどね。レースとしては良かったと思います」とコメント。「でもチーム戦としては……。その意味では勝ちたかったです」と続けた。続く3着には山口騎手が入り、第2戦はチームWESTが1、3着となった。
マーキュリーカップJpnⅢをはさみ、第10レースで行われた第3戦はダート1600メートルのA級戦。しかしこのレースへの出走申し込みが11頭にとどまったことで、地元の山本聡哉騎手は騎乗しないことに。山本騎手は規定により5ポイントを獲得することになった。
その第3戦は、スタート直後の先行争いがすぐに落ち着き、11頭の差がほとんどない展開に。その流れに業を煮やしたのがルメール騎手。3コーナー手前で先頭を取ろうと一気に位置取りを上げた。「遅かったので行きました」というその動きは、レース全体に影響を及ぼした。逃げていた山口騎手は並びかけられたところで加速して、そのタイミングで後続の各馬も上昇を開始。4コーナーではまたしても先行グループが横に広がる形になった。
その追い比べを横目に鋭い伸び脚を見せたのが、桑村真明騎手(北海道)のスマートレジェンド。桑村騎手は「盛岡で勝つのは初めてです。左回りには苦手意識があったのですが、これでひとつ階段を登れた気がします」と、満面の笑みを見せていた。
ハナ差の2着には矢野騎手が入り、3着には藤田弘治騎手(金沢)が入線したことで、第3戦は3名しか出ていないチームEASTが3着までを独占。それが効く形になり、チームEASTが総合優勝。個人のポイントでは、3、5、2着の矢野騎手が優勝となった。
表彰式ではチームJRAキャプテンの内田騎手、チームWESTキャプテンの山口騎手が「またこのような機会があれば」と話し、そのほかの参加騎手からも「刺激になります」「楽しいです」などという声が聞かれた。
スタンドのファンからの歓声も、一般レースに比べると大きかったように感じた。今年は3戦とも単勝1番人気馬が3着以内に入らなかったというのも、ジョッキーレースならではといえるかもしれない。優勝賞品として農産物が贈呈されるのも恒例。今後も名手たちの騎乗技術を感じさせてくれる舞台が続いていくことを期待したい。
(個人優勝)
矢野貴之騎手
(大井)
キャプテン
チームEAST
山本聡哉騎手
(岩手)