2着以下を突き放してのレコード勝ち
JBCへの期待高まるスピードを披露
レース当日の午前中は低い雲からの小雨が降り続いていた門別競馬場。その雨は第1レースの前には上がったが、馬場には大きな水たまりが何か所も残った。午後2時の気温は15度。それでも空が雲に覆われていたおかげで、北海道スプリントカップJpnⅢが始まる頃でも13度程度と、それほど寒くはならなかった。過去のこのレースは14頭以下で行われていたが、今年は16頭立て。JRAから4頭、佐賀と高知から各1頭の遠征馬を迎えることになった。しかし人気の分布は極端で、JRA勢のうち、ニシケンモノノフ、ショコラブラン、スノードラゴンの3頭が単勝10倍未満で、ゴーイングパワーが15.4倍。なかでもニシケンモノノフとショコラブランが2倍前後と圧倒的な人気を集めていた。
その一角を崩す可能性が期待されていたのが、地元所属のアウヤンテプイ。このレースにはこれまで4回出走し、そのうち3回は4着または5着に入っていた。昨年はパドックで背中から湯気を立ち昇らせているという状況で6着に敗れたが、今年初戦の前走をハナ差ではあったが勝利。ひとつ前の第10レースが終了した時点では50倍弱だった単勝オッズが、最終的には31.8倍、一時は20倍を切るほどの数字を示していた。
ただ、問題は馬場。この日は3歳の下級条件と2歳のJRA認定の1000メートル戦が、59秒5という速い時計で決着していた。地元の競馬記者が「メインはレコードが出ると思いますよ」と話す状況は、専門紙に『馬場さえ乾いてくれれば』という調教師のコメントが掲載されているアウヤンテプイにとっては、厳しかったことだろう。
果たして、レースは先手を取ったニシケンモノノフが、前半の600メートルを33秒8というスピードで逃げ、後半の600メートルも35秒6で走破。そのスピードを披露されては、ほかの15頭はなすすべがなかった。7年前にミリオンディスクが記録した1分9秒6を0秒2短縮しての勝利になったが、鞍上の横山典弘騎手はゴール前で強くは追っていなかった。
2着は4馬身差でショコラブラン。14番枠から馬群の外側を通って徐々に進出してきたが、相手が悪かったというところだろう。3着のスノードラゴンは、ゴール直前で一気に伸びてきて、ショコラブランにクビ差まで迫った。続く4着にはゴーイングパワーが入線。今年もJRA勢の上位独占という結果になった。
そのうしろの5着に食い込んだのがトウカイビジョン。スタートで3馬身ほどの出遅れがあっての5着だから価値がある。「スタートは想定内で、最後は伸びてくれると思っていましたが、すごかったですね」と、服部茂史騎手は笑顔。この先の短距離戦線で注目できる存在になりそうだ。また、6着のメイショウノーベルは「もうすこし積極的に行けばよかったかもしれないですね」と、岩橋勇二騎手。それでも今後への手応えは少なからず感じているようだった。
その2頭はいずれも、今シーズンから門別所属になった馬。2歳戦が注目されるホッカイドウ競馬だが、JRAなどから移ってきた古馬を再生する実績が重なれば、それもまた価値の向上につながっていくことになるだろう。
横山典弘騎手
強かったですね。黒船賞のときはフェブラリーステークスの疲れがあった感じがしましたが、今回は雰囲気がとても良くて、スタートした瞬間からスピードに乗っていけました。だから僕はただ乗っているだけでしたよ。(デビューした)北海道のみなさんに堂々としたところを見せられてよかったです。
庄野靖志調教師
横山騎手と相談して、ブリンカーを初めて付けたのですが、その効果もあったかなと思います。この馬は門別競馬の出身で、地元のみなさんがたくさん応援してくれていましたから、勝つことができてよかったです。今後はひと息入れて、東京盃からJBCを見据えたローテーションを組んでいく予定です。