2017年5月10日(水) 大井競馬場 1800m

先行した人気2頭の一騎打ち
転入初戦の実績馬がまず一冠

 迎えた南関東一冠目の羽田盃だが、ここに至る過程では残念な出来事があった。NARグランプリ2016の2歳最優秀牡馬で、クラウンカップ(川崎)を圧勝していたローズジュレップが調教中のアクシデントで予後不良。またこの日までに地方通算7000勝にあと3勝と迫っている的場文男騎手が騎乗予定だった期待馬ブラウンレガートは、中間に熱発があり大事をとって回避。あらためて無事にいくことの難しさを思わされた羽田盃となった。
 単勝2.2倍で1番人気に支持されたのは、これが中央から転入初戦となるキャプテンキング。前走ヒヤシンスステークスで、その後ドバイのUAEダービーで惜しくも接戦の2着となったエピカリスにコンマ5秒差で5着だったとうことでは、昨年中央からの転入初戦で東京ダービーを制したバルダッサーレ以上の器という期待もあった。そして2.8倍で2番人気が、ニューイヤーカップ(浦和)から京浜盃(大井)を連勝中のヒガシウィルウィン。やや離れて3番人気に、京浜盃(5着)を叩いて状態上向きが伝えられたミサイルマンが続いた。
 逃げ馬不在のメンバーで、キャプテンキング、ヒガシウィルウィン、イケノアサ、ミサイルマンの4頭が前で並び、互いをうかがいながら1コーナーに入った。枠順の関係で、2コーナーを回ったところで先頭に立ったのは最内のキャプテンキング。ヒガシウィルウィンが半馬身ほどの差で2番手で、あとの2頭も差なく続いた。先行争いにはならなかったため1000メートル通過が64秒1というゆったりしたペースでレースが流れた。
 隊列はほとんど変わらないまま勝負どころの3~4コーナーへ。3番手以下の馬たちの鞍上が必死に手を動かし始めたところ、前2頭の鞍上はまだ抑えたまま。3番手以下との差が開いていったところで、人気2頭の一騎打ちとなるであろうことが見て取れた。
 直線を向いて間もなく追い出しにかかったのが、ヒガシウィルウィンの森泰斗騎手。それを見ながらタイミングを見て追い出したのが、キャプテンキングの矢野貴之騎手。2頭の追い比べはゴールまで続き、ヒガシウィルウィンが詰め寄る場面もあったが、最後まで先頭を譲らなかったキャプテンキングが半馬身差で振り切ってのゴールとなった。
 5馬身離れて4頭接戦の3着争いは、中団で脚を溜めていた赤岡修次騎手のキャンドルグラスが先着。4コーナーまで4番手で踏ん張っていたミサイルマンは直線失速して11着に沈んだ。
 勝ったキャプテンキングは、中央時代は後方追走から直線勝負という脚質だった。しかし的場直之調教師はレース前、「先行馬がいないので、ある程度前めで競馬をしてもいいんじゃないか、ということは(騎手と)話していました」とのこと。2月のヒヤシンスステークスのあと、東京ダービーを目指して間もなく大井に移動。コースに慣れさせるために大井のコースで調教が積まれ、まずは無事に一冠目を通過した。
 2着に惜敗したヒガシウィルウィンの森騎手は、検量室から出てきて開口一番、「次、逆転しますよ。それほど差はないです。距離が延びるのもだいじょうぶです」と、東京ダービーへの期待を力強く語った。
 二冠目の東京ダービーもこの2頭を巡る争いとなりそうで、さらに地方通算7000勝を達成しているであろう的場文男騎手の東京ダービー36度目の挑戦も注目となりそうだ。
矢野貴之騎手
騎乗依頼をいただいてから緊張の毎日で、とりあえず勝ててホッとしています。中央ではうしろから行っていましたが、あまりこだわらずに乗ろうと思っていました。東京ダービーを意識してやってきているので、次の本番に向けて、さらに気を引き締めてやっていこうと思います。
的場直之調教師
勝って当然という実績でこちらに来て、正直なところプレッシャーもありました。マッチレースになって、いい競馬だったと思います。東京ダービーに向けては、距離が1ハロン延びるので、体力強化、心肺機能の強化、馬を信じて調整していきます。この調子を保ってくれれば、いい結果が出せると思います。

2着に惜敗したヒガシウィルウィン

取材・文:斎藤修
写真:宮原政典(いちかんぽ)