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2017年5月4日(祝・木) 園田競馬場 1870m

目標を切り替え鮮やかに差し切る
鞍上の努力が実を結ぶ重賞制覇

 昨年の兵庫チャンピオンシップJpnⅡは地元の川原正一騎手が騎乗する2番人気ケイティブレイブが逃げ切り、好位追走のゴールドドリームが2着だった。
 勝ち馬はその後、ジャパンダートダービーJpnⅠ・2着に入り、さらにダートグレードを3勝。2着馬も今年のフェブラリーステークスGⅠを制した。4年前の覇者でGⅠ/JpnⅠを8勝のコパノリッキー(翌日のかしわ記念を勝って9勝目)を持ち出さずとも、すっかり出世レースとして定着している。
 今年もJRAからは将来のダート路線をリードすると嘱望される精鋭5頭が出走してきた。
 そんな中、圧倒的1番人気はJRA唯一の3勝馬リゾネーターで1.4倍。3連勝の勢いと前走伏竜ステークスでの4馬身差の圧勝劇が人気に拍車をかけた。勝てば中央・地方を通じて初の重賞制覇となるデビュー2年目の木幡巧也騎手にも注目が集まった。
 2番人気は関西の名門・角居勝彦厩舎が送り出す牝馬クイーンマンボで3.5倍。3番人気には、デビュー3戦目から7戦連続で連対中のタガノディグオが6.0倍で続き、この3頭が単勝10倍以内だった。
 対する今年の地方勢だが、笠松から参戦の3頭は地方重賞でも3着が最高という成績で、地元兵庫勢も園田ジュニアカップと3歳三冠の一冠目、菊水賞で1、2着だったマジックカーペット、ブレイヴコールが揃って回避。大将格は兵庫若駒賞馬ナチュラリーだが、菊水賞では前記2頭を相手に4着と完敗だった。
 たとえ兵庫の3歳戦線をリードする2頭が参戦しても、実力に勝る中央勢に太刀打ちするのは厳しいと思われ、そのツートップが不在とあっては、地方勢は苦戦必至の様相だった。
 ゲートが開くと、前走の伏竜ステークスに続いて逃げが予想されたシゲルコングがまさかの出遅れ。これによって、伏竜ステークスでは2番手だったノーブルサターンが楽に主導権を奪うこととなった。2番手外にナチュラリー、3番手内にクイーンマンボ、4番手外に人気のリゾネーター、その後ろにタガノディグオがリゾネーターをマークする形で追走した。
 楽に逃げたノーブルサターンが2周目の向正面でペースを上げると、2番手のナチュラリーが脱落。驚くことにここで差を詰めてくるはずのリゾネーターまで後退。リゾネーターの手応えの悪さを見たタガノディグオは外に持ち出すとグングン前へ接近。直線ではクイーンマンボを競り落とし、逃げ粘るノーブルサターンを差し切り、3/4馬身差をつけての勝利となった。
 ゴール入線後、左手でガッツポーズした川島信二騎手は、2012年のオースミイチバン以来、このレース5年ぶり2度目の勝利。「ゲート練習からずっと毎日、乗ってきた馬で勝ててうれしい」と満面に笑みを浮かべた。
 エンパイアメーカー産駒に多いと言われるゲート難だが、タガノディグオも例にもれない。ゲート内の駐立の悪さが課題だ。昨秋にはゲート内で体を触られると嫌がって動いてしまうほどだったが「怒ると逆効果。じっくり慣れさせた」(川島騎手)と時間をかけた。今もゲートの扉を怖がるが、今回は5番手につけられたように「できるだけ前に行けるように意識していた」と鞍上の望む動きが少しずつできつつある。
 また、今回の最終追い切りは日曜日の4月30日。競馬開催日に騎手が調教に騎乗することは少ないが、あえて川島騎手が騎乗。自ら感触を確かめていた。毎日の地道な調教の積み重ねが実を結んだ勝利だった。
 次走は未定だが、「ジャパンダートダービー(7月12日)など長めのところを視野に入れたい」と宮徹調教師。出世レースとなっている兵庫チャンピオンシップJpnⅡを制したタガノディグオの前に栄光へと続く道が現れた。
川島信二騎手
前のレースが前残りのレースばかりだったので、スタートはよくないですが、前に強い馬がいるし、意識して前につけて、いい位置につけられました。向正面でマークしてたリゾネーターの手応えが悪かったので、逃げていたノーブルサターンに(目標を)切り替えて、長くいい脚を使って伸びてくれました。
宮徹調教師
向正面で、信二が目標をすぐに切り替えたあたりは、馬のことを分かっているからできたこと。うまく乗ってくれました。ゲートの扉を怖がって、スタートはよくないが、毎日、信二が調教で乗ってくれているし、母馬もうちの厩舎にいた馬。その馬で信二と勝てたのが、本当にうれしいですね。


取材・文:松浦渉
写真:桂伸也(いちかんぽ)