2018年3月25日(日) 帯広競馬場

ゴール前3頭の接戦を制す
断然人気こたえ連覇達成

 帯広単独開催の新生ばんえい競馬となって10年目。シーズン最後の大一番、ばんえい記念も50回目の区切りを迎えた。最高気温が10度を上回る好天となって馬場水分は0.9%。砂煙が上がるほど乾いた馬場での争いとなった。
 今シーズンここまで重賞3勝を挙げ、ばんえい記念連覇を狙うオレノココロが単勝1.7倍で断然人気。2番人気は、帯広記念をトップハンデで制し、今シーズン重賞3勝、2着3回ともっとも勢いを感じさせるコウシュハウンカイ。さらにニュータカラコマ、サクラリュウ、一昨年の勝ち馬フジダイビクトリーまでが単勝一桁台。専門紙の印を見てもこの5頭の争いという様相だった。
 第2障害下の到達まで2分以上を要したスローペース。最初に仕掛けたのは予想されたとおりニュータカラコマだが、コウシュハウンカイがほとんどひと腰で障害の天板に脚をかけ、そして先頭で下った。離れて2番手は、障害で膝を折ったもののすぐに立て直したフジダイビクトリーで、オレノココロ、サクラリュウも差なく続いた。
 単独先頭のコウシュハウンカイに、続いた3頭がみるみる差を詰めた。残り10メートル手前、オレノココロがコウシュハウンカイをとらえたところで、2頭が止まって息を入れた。
 「コウシュハウンカイの脚色が悪かったので止めたんですが、あとはお互いに何回止まるかの勝負でした」というオレノココロの鈴木恵介騎手。お互いの馬の余力を見極めながらの駆け引きだ。その間にフジダイビクトリーも並んで3頭の争いとなった。
 ゴール線上での争いとなってオレノココロが1馬身ほど抜け出し、一旦は止まったものの、すぐに立て直して先頭でゴール。2009年に3連覇を達成したトモエパワー以来となる連覇となった。
 ゴール前でもうひと伸びしたフジダイビクトリーが2着に入り、昨年、一昨年の勝ち馬のワンツー。3着のコウシュハウンカイは、「一瞬夢を見たなあ。でもオレノココロとは(車の)4000ccと3000ccくらいのエンジンの差がある」と藤本匠騎手。
 重賞未勝利ながら帯広記念2着などで人気の一角(4番人気)となったサクラリュウは4着。「障害を下りるのがオレノココロと同じタイミングではかないません。1トンの重量では、上の3頭とはまだ力の差を感じました」と菊池一樹騎手。
 昨年の勝ちタイムは4分7秒6(馬場水分0.6%)で、オレノココロが2着のキタノタイショウに24秒もの差をつける独走となったが、今回は勝ちタイム3分59秒3(同0.9%)で、5着のソウクンボーイまで7秒4差という、1トンの重量を考えれば接戦となった。これについて鈴木騎手は、「前半が去年よりスローになって道中の追走が楽になり、そのぶん、ほかの馬も比較的楽に障害を越えられたんだと思います」とのこと。道中の駆け引きや仕掛けのタイミングで結果が大きく変わるのが、ばんえい競馬の難しさでもあり、面白さでもある。それが1トンのばんえい記念になればなおさらだ。
 なお、これまで4、2、2、3着、ばんえい記念には10歳で5度目の挑戦だったニュータカラコマは、ゴール20m手前で倒れ、そのまま息を吹き返すことはなかった。この日は6000人近くの入場があり、その多くがニュータカラコマの最期を心配そうに見守っていた。
 
鈴木恵介騎手
この重賞に限らず連覇というのは難しい。去年勝っていても、また同じようにレースができるかとういうと、そのときどきで違うので。厩舎一丸となった結果、勝てたのがうれしいです。馬体に恵まれて、レースでも落ち着いてるので、そこが強みです。今日も落ち着いていました。
槻舘重人調教師
連覇ということでは、去年の勝ち方があまりにも鮮やかだったので、プレッシャーはありました。(馬体重マイナス21キロは)去年と比較して(近走は)重い馬体重で走っていたので、20キロくらいは絞ったほうがいいかなと思って調整してきました。馬の健康管理に気をつけながら来シーズンもがんばります。


取材・文:斎藤修
写真:浅野一行(いちかんぽ)、NAR