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2018年3月14日(水) 船橋競馬場 2400m

迫り来る後続を振り切り完勝
転厩初戦も長距離で盤石の強さ

 1997年の群馬記念GⅢを制したストーンステッパー、99年のマイルチャンピオンシップ南部杯GⅠ勝ちのニホンピロジュピタなどを管理し、地方のダートグレードにも足跡を残した目野哲也調教師が、今年2月をもって引退。その最後となるGⅠ/JpnⅠ勝利(川崎記念)をプレゼントしたケイティブレイブが、杉山晴紀調教師のもとで新たなスタートを切った。
 心機一転――。そう書けば聞こえはいいが、新しい環境というのは人間でもあっても多少のストレスを感じるもの。ましてや馬は、微細な変化にも敏感に反応する動物である。杉山調教師は「とにかく馬にストレスを与えないことが第一。目野厩舎での担当者から話を聞いて、極力環境を変えないように注意した」と話す。そうした細心の注意が功を奏したのだろう。福永祐一騎手は返し馬で、以前と変わりない感触をつかんでいた。
 ダッシュ良く飛び出したケイティブレイブは枠順を利してハナを切り、後続8頭を率いてスタンド前の直線に入った。しかし、ここからケイティブレイブはストレスと戦うことになる。
 2番手の外につけたマイネルバサラが、執拗にマーク。隙があれば先頭をうかがうような勢いでスタンド前を通過する。必然的にペースは速くなり、縦に長い展開で2周目の向正面へ。なおも追撃の手を緩めないマイネルバサラに加え、2番人気のアポロケンタッキーも早めのスパート。向正面半ば過ぎで3頭が雁行するかたちとなり、1番人気のケイティブレイブにとっては常にプレッシャーをかけられる苦しい展開となった。しかも今開催の船橋は内ラチ沿いが重く、逃げ馬には厳しい馬場。それでもケイティブレイブは懸命に先頭を死守した。
 その粘りに根負けしたか、3コーナー過ぎでマイネルバサラが脱落し、アポロケンタッキーも直線半ばで力尽きた。結果的には1馬身半差だが、次々と襲いかかるライバルを振り切った走りは圧巻。レース後に福永騎手は「アポロケンタッキーが早めに来て、馬も少しあわてた」と話したが、それでも集中を切らさず走り切ったあたりは、精神面の充実ぶりの表れ。ストレスをかけないよう努力した陣営に報いるように、レース中のストレスに打ち克ち、ダート中・長距離路線の覇権争いにおいて一歩リードした。
 一方、ロングスパートをかけたアポロケンタッキーは勝ち馬を捉えきれず2着。内田博幸騎手は「向正面から逃げ馬に厳しい展開に持ち込んだけど、相手が強かった」と脱帽した。ただ、昨年の日本テレビ盃JpnⅡではケイティブレイブを3着に負かして勝利しているうえ、「暖かくなればもっと良くなると思う」と内田騎手も話すだけに、勝負付けが済んだとは言い切れない。展開次第で逆転も可能だろう。
 地方勢で期待された昨年の3着馬ウマノジョー(大井)は、奮闘及ばず4着。JRAから出走した3頭すべてに先着を許したうえ、3着のマイネルバサラにも2秒3の差をつけられる厳しい結果となった。この路線におけるJRA勢との力差は依然として大きく、新星の登場が待たれるところ。
 
福永祐一騎手
前走からタイトな間隔だったけど、いいコンディションだと感じました。スタッフが一生懸命にケアしてくれた結果だと思います。マイルを使ったあとなのでムキになって走らないか心配でしたが、いい集中力をキープしながら走ることができました。また大舞台へ向けて、新しいチームで頑張っていきます。
杉山晴紀調教師
道中は予想通りの展開になりましたが、他馬につつかれて消耗していないかと思って見ていました。でも、迫られた時にも反応してくれて、地力の高さを見せてくれましたね。帝王賞は使うことになると思いますが、その前に1戦するかどうかはオーナーサイドと相談して決めたいと思います。


取材・文:大貫師男
写真:国分智(いちかんぽ)