2018年2月18日(日) JRA東京競馬場 ダート1600m
蘇った自慢の末脚で直線一気
2年半ぶりのジーワンタイトル
JRA、地方、海外のGⅠ/JpnⅠの覇者が10頭も出走した2018年のフェブラリーステークスGⅠ。そのなかには大井所属のララベルも名を連ねた。前年のJBCレディスクラシックJpnⅠを制し、それを花道に引退するか、もしくは年度末まで現役を続けるか、検討されることになっていた。その結論は続戦。ひと息入れて臨んだTCK女王杯JpnⅢ(4着)を経てのラストランには、2月28日のエンプレス杯JpnⅡではなく、フェブラリーステークスGⅠが選ばれることになった。ララベルはダート1600メートルでは6戦3勝、2着3回で連対率100%。「最後にこんな大きい舞台で走らせてもらえるなんて、本当にありがたいことです」と、荒山勝徳調教師はオーナーサイドの選択に感謝という表情をしていた。
しかしながら、相手はこれまで以上に強力。そこに爪痕を残すことはできるのか。最終的に単勝199.4倍の14番人気というのが、競馬ファンが下した評価だった。
それでもそこにはララベルを応援する人たちの気持ちが含まれていた。午後2時に筆者が見た場内のグッズショップに並ぶ出走馬名入りボールペンは、ララベルの分が売り切れていた。それは本馬場入場のときにも感じられた。馬名がアナウンスされると、ララベル、そして真島大輔騎手への声援は、ほかの出走馬よりも大きく、多くの方向から聞こえてきたのだ。
2015年にハッピースプリント(大井・11着)、サトノタイガー(浦和・16着)が出走して以来、3年ぶりとなる地方所属馬の出走。さらに牝馬の挑戦となると、フェブラリーステークスがGⅠに昇格した最初の年、1997年のアカネタリヤ(大井・15着)、エフテーサッチ(浦和・16着)以来。ララベルの馬体重はマイナス16キロでも548キロの体つきは、JRAの強豪に引けをとらないほどに堂々としていた。
いわゆる“逃げ馬”がいないメンバー構成だったが、ゲートが開くと1枠の2頭、ニシケンモノノフとケイティブレイブが先手を主張。テイエムジンソクもその流れに乗って3番手につけた。7番枠からスタートしたララベルも先行争いに加わっていったが、200メートルほど進んだところで少し引くような形での5番手になった。それでも最初の600メートルが34秒1という速い流れについていく脚を見せた。
とはいえ、1000メートルの通過タイムが58秒3というのは、さすがにオーバーペースだった様子。先手を取ったニシケンモノノフは16着、ケイティブレイブは11着に失速してしまった。そうなると、差し、追い込み馬に風が吹く。勝ったのは4コーナーでほとんど最後方にいたノンコノユメ。中団のやや後ろから末脚を伸ばして残り200メートルあたりで先頭に立ったゴールドドリームを強襲する形で勝利を挙げた。着差はクビで、徐々に差を詰めた3着のインカンテーションもクビ差。4着のサンライズノヴァはその3馬身後方で、ラスト600メートルの推定タイムが速い順にワンツースリーだった。
その流れは先行したララベルにとって厳しいもので、ラストランは15着。「抑えるつもりはなかったですし、正々堂々とした競馬ができました。今はすがすがしい気持ちです」と、真島騎手は話した。
荒山調教師は「もう少し前を主張してもよかったんじゃないかな」とは話したが、それでも「JRAのGⅠに管理馬が出るのは初めて。ゲートに入ったとき、手から汗がじんわりと出てきました。こういうことを経験するとまた来たくなりますし、“次は勝ちたい”になりますよね」と、大舞台への出走に刺激を得たようだった。
その荒山調教師は、ノンコノユメの関係者に促されて優勝馬の口取り写真の列に参加。それも特別な経験になったことだろう。
表彰式を終えて検量エリアに戻ってきたノンコノユメを管理する加藤征弘調教師は、淡々としたなかにホッとした表情を見せていた。ノンコノユメは2016年の帝王賞JpnⅠの後に去勢。それまでは「まともに曳き運動もできないくらい」(加藤調教師)に気性が荒く、厩舎スタッフに多くの怪我人が出るほどだった。手術以降は6戦連続で4着以下。「去勢は失敗だったのではないか」という声があることは加藤調教師も知っていた。「でも昨年の春と夏にしっかりと休養したことで以前の体つきに戻りましたし、右の股関節に疲れが出やすい点も解消されましたから」と、じっくり待ったその成果に、手ごたえを感じているようだった。
共同記者会見で次の目標を聞かれた加藤調教師は「オーナーとの相談になりますが、私としては、あまり欲はありません」と、ここでも淡々とした表情。しかし「ブリーダーズカップクラシックの出走権を獲得しましたが」と水を向けられると「それは興味深いですね」と笑顔を見せた。
内田博幸騎手
加藤征弘調教師