【リポート動画】
後方からの追い込み、まくりが決まる
第2戦を制した加藤聡一騎手が優勝
第32回を迎えた全日本新人王争覇戦。地方競馬の若手騎手は地方競馬教養センターから全国に巣立ったメンバーの多くと再会できるこの日を楽しみにしていたようで、騎手紹介式の前から大盛り上がり。そんななか、岩手の鈴木祐騎手は「前回のレースから2週間空いていますからね。ちょっと体がなまっているかも」と話し、北海道の山本咲希到騎手は「明け2歳馬にはたくさん乗っていますが、レース勘はどうですかね」と不安そうにしていた。加えてその2名は高知が初めて。それでも「まあ、なんとかなるでしょう」と笑いながら騎手紹介式へと向かっていった。騎手紹介式が終わると、10名の騎手はそのままパドックに向かって第1戦の出走馬に騎乗。山口以和騎手(佐賀)は「園田でのくやしさをここで晴らしたいですね」と、ヤングジョッキーズシリーズ・トライアルラウンドの西日本ブロック最終戦で、惜しくもファイナルラウンド出場に手が届かなかったことを引き合いに出した。しかしその直後に「あのときとはピリピリ感が違いますけれど」と。それでもパドックに近づくにつれて、各騎手は勝負師の表情へと変わっていった。
第1戦の条件は、高知競馬場における最下級であるC3クラスで、馬場状態は不良。地元所属の塚本雄大騎手を含めた各騎手は返し馬を入念にしていたが、レースは手探りだっただろう。山口騎手が先手を取り、加藤聡一騎手(愛知)が2番手につけた先行争いで、スタートからの400メートルが24秒3というのは、このクラスとしては速いといえるものだった。
それでも2コーナーあたりからはペースダウン。縦長だった馬群は向正面で徐々に縮まり、3コーナーで道中は3番手だった塚本騎手が先頭に立った。しかし逃げ込みを図る塚本騎手を一気に交わし去ったのは、2コーナーでは最後方にいた坂井瑠星騎手(JRA)だった。
「過去のレース映像を見て、そのイメージ通りに乗れました」と、オーストラリアでの修業の合間に帰ってきた日本での勝利にホッとした様子。2着の塚本騎手は「早めに動いた判断は悪くなかったとは思いますが……」と首をひねった。3着は岩手所属ながら高知で期間限定騎乗がある木村直輝騎手。「距離ロスを考えてインを回りましたが、重くならないギリギリのところを通れたと思います」というのは、高知での騎乗経験で得た知見の賜物だろう。同じく高知での期間限定騎乗がある中越琉世騎手(川崎)は「位置取りは後ろでも引っかかってしまって」と、4着でも反省しきりだった。
間にひとつレースをはさんで迎えた第2戦。こちらも第1戦と同様にC3クラスのメンバー。そのなかで単勝2.0倍と人気を集めたのは加藤騎手だった。
しかしながら、出走馬の大半は先行できるタイプ。加藤騎手のサウスディアマンテもそういった戦歴の持ち主だったが、2番枠で出遅れてしまった。
好スタートを切ったのは最内枠の鈴木騎手。50メートルほど進んだところでインコースを避けるように馬を誘導し、6番枠から気合をつけた木村騎手と併せるような形になった。その直後には坂井騎手と山本騎手が続き、レース前に「先行したい」と話していた山口騎手は5番手から。スタートからの400メートルは24秒6で進んだが、第2戦もまた、後方待機の形になった馬たちが上位に進出する結果になった。
向正面から馬群の外を通って進出を始め、早め先頭から押し切ったのは加藤騎手。その3/4馬身後ろの争いは4頭が横に広がり、2コーナーでは7番手あたりにいた木幡巧也騎手(JRA)がインコースから2着に入った。3着に食い込んだのは、スタート直後から最後方を進んでいた保園翔也騎手(浦和)。「行き脚がつかなくて、それでも前は止まると思って乗っていたら、本当に止まりましたね。ただ、ゴール地点では2着かなと思ったんですが……」と、勝利を喜ぶ同期の加藤騎手を横目に見ながら話していた。僅差の4着に入った塚本騎手は、検量エリアに戻ってくるなり「2位に入れたでしょうか」と報道陣に質問。その結果はほどなく発表され、優勝が5着、1着の加藤騎手。続いて2着、4着の塚本騎手と1着、7着の坂井騎手が同点で並び、第2戦の着順が上だった塚本騎手が第2位になった。
上位には入れなかった各騎手も、高知での1日を満喫した様子。「乗っていて楽しかったです。これが今後に生きれば」(木幡騎手)、「明日からマレーシアに行ってきます。これからもっと経験を積んでいきたいと思います」(山本騎手)などと、その目は未来に向いていた。
加藤聡一騎手
(愛知)
塚本雄大騎手
(高知)
坂井瑠星騎手
(JRA)