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2015年12月9日(水) 船橋競馬場1800m

2番手からゴール前の接戦を制す
3歳馬が初ダートで重賞初制覇

 3日前に行われたチャンピオンズカップGⅠでは、牝馬ダートグレード戦線で常に上位を賑わせてきたサンビスタが、一線級の牡馬相手に優勝するという快挙を成し遂げた。ダート界も牝馬が強い時代がやってきたということだろうか。
 今年のクイーン賞JpnⅢは、そのサンビスタに勝ったこともあるトロワボヌールが当然のごとく支持を集め、単勝1.7倍の1番人気。その他のJRA勢は、準オープンを勝って勢いのあるフォローハート(2番人気)や、芝から路線変更のパワースポット(3番人気)、ディアマイダーリン(4番人気)と、ダート交流重賞初参戦で未知の魅力があるメンバーが集まった。
 しかしこのレースは、軽量の地方馬の好走実績もあるハンデ戦。やはり今年も一筋縄ではいかなかった。
 ゲートが開き、先頭に立ったのはノットオーソリティ。ディアマイダーリンが外から徐々に進出して2コーナーで2番手を取りきった。直後の3番手にトロワボヌールが追走。フォローハートは中団に位置取り、パワースポットは最後方からレースを進めた。3~4コーナーに入っても快調に逃げるノットオーソリティを、ディアマイダーリン、トロワボヌールが追いかけ、後方から上がってきたパワースポットもその直後まで迫ってきた。
 そして直線は激しい追い比べに。懸命に粘るノットオーソリティを残り100メートル過ぎでとらえたのがディアマイダーリンで、内から伸びたトロワボヌールをクビ差でしのいで優勝。ダートやナイターなど初物づくしの3歳牝馬が、古馬たちをねじ伏せて見せた。
 2着に敗れたトロワボヌールのクリストフ・ルメール騎手は、「エンジンのかかりが遅かったです。56.5キロは少し重かった。勝ち馬との3.5キロ差は大きかったですね」とコメントを残した。
 勝ったディアマイダーリンは、これまでフラワーカップGIII・3着、フローラステークスGII・2着など芝の重賞でも好走してきた馬だが、菊澤隆徳調教師によると、「ダートは絶対に合うフットワークをしているので、使ってみたかった」とのこと。当初はキャピタルステークス(11月28日・東京芝1600メートル)を予定していたそうだが、条件が合うこちらに変更したことでダート適性を確かめることができた。
 牝馬ダート戦線に新星誕生ともいえるディアマイダーリンの勝利だったが、まだ芝でも底を見せていないだけに、今後は芝・ダート両方を視野に入れながら、状態に合わせてレースを選択していくそうだ。まだ3歳、多くの可能性を秘めている。
 そして3着だったノットオーソリティの走りに、地方競馬ファンは熱くなったことだろう。直線は勝ち馬に最後まで食い下がり、後ろから来るパワースポットの猛追を振り切った。「直線は勝てると思いました! でもゴール前は外の馬の脚色のほうが良かったですね。2番手でいこうと思っていましたが、逃げる形になっても自分の競馬ができました。今日は返し馬も良くて、スタートもしっかり出てくれました」と赤岡修次騎手。前走のJBCでは出遅れて先行することができず悔しい思いをしただけに、今回は納得の表情を見ることができた。重賞6勝の地力の高さを改めて感じさせたノットオーソリティ。今後の重賞戦線ではさらに注目を集めることだろう。
横山典弘騎手
斤量が53キロと軽かったのでなるべく前へ前へというレースを心がけました。初ダートでしたが菊澤調教師からダートを使いたいと聞いていましたし、乗った感じではこなしてくれると思っていました。直線はいつも通り必死に追いました。まだ若い馬なのでいろんな可能性を持っていて今後が楽しみです。
菊澤隆徳調教師
横山騎手がうまく乗ってくれて、これで負けたら仕方ないと思いながら見ていました。馬も丈夫になってきたので調教にも応えてくれました。普段から力が有り余っていてパワフルな女の子。牝馬同士の芝のキレ味勝負だと分が悪いのですが、力比べのダートだったらこの先も楽しめるのではないでしょうか。

重賞6勝の地力の高さを改めて感じさせたノットオーソリティ

取材・文:秋田奈津子
写真:築田純(いちかんぽ)