2015年11月26日(木) 笠松競馬場1400m

直線一騎打ちで実績馬を競り落とす
岩手生え抜きが遠征でタイトル奪取

 1着賞金1000万円という笠松競馬最大の重賞、笠松グランプリ。地方全国交流となり、賞金が一気にアップした2012年こそ、地元・笠松所属馬がワンツーフィニッシュを飾ったが、2013、2014年は、他地区所属馬が上位3着までを独占。今年もここを狙って全国から好メンバーが集まった。
 昨年、ジョーメテオでこのレースを制した浦和の小久保智厩舎から、昨年のJBCスプリントJpnⅠの2着馬サトノタイガーが参戦。単勝1.5倍と断然の支持を集めた。2番人気は、今年ダートグレードで結果を残している岩手のラブバレットで単勝3.4倍と、この2頭が人気の中心。その他、昨年2着の大井のゴーディーや、笠松1400メートルのレコードホルダーである高知のエプソムアーロンといった他地区勢は豪華な顔ぶれ。迎え撃つ東海勢は、JRA所属時にダート短距離の実績がある地元のリックムファサを中心に5頭が出走。なお、兵庫のバズーカが右前肢跛行のため出走取消となり、今年は9頭で争われた。
 ゲートが開くと、出ムチを入れて先手を奪ったのはトップフライアー。サトノタイガーが積極策で2番手につけた。向正面に入ったところではゴーディーが3番手、ラブバレットが4番手に続き、先行集団の後ろにエプソムアーロンが控えていた。
 3コーナーでは早くも馬体を併せて先頭に躍り出たサトノタイガーとラブバレット。エプソムアーロンやリックムファサもそれについていこうと追いかけたが及ばず、人気2頭の一騎打ちに。直線、やや馬体を離しての追い比べはラブバレットに軍配が上がり、1馬身半差をつけて優勝。
 「4コーナーで先頭に立つつもりでいました。今日の強さだったらどの位置からでも勝てたと思います」と山本聡哉騎手。ラブバレットが着差以上の強さを見せつけた。
 2着に敗れたサトノタイガーの左海誠二騎手は「馬が渋くなっていますね。早く先頭に立ちたくなかったんですが……」と悔しい表情を見せた。3着にはエプソムアーロンが入り、今年も他地区勢が上位を占める結果となった。
 レースから戻ってくると、山本騎手は嬉しそうにラブバレットの首筋を撫で、陣営と熱い抱擁を交わした。菅原勲調教師は「本当に嬉しい。来たかいがありました」と何度も喜びの言葉を口にした。
 これで重賞4勝目。古馬になって初めてのタイトルを手にしたラブバレットは、今年、さきたま杯JpnⅡ・4着、クラスターカップJpnⅢ・3着と、交流重賞で好走し頭角を現した、岩手生え抜きの4歳馬だ。
 菅原調教師によると、昨年(3歳時)夏に骨折して戦線離脱したが、成長期であるその時期にしっかり休養したことによって馬体がパワーアップしたそうだ。また、今回は12時間の長距離輸送だったが、その影響もほとんどなかったとのこと。遠征競馬を苦にしない精神力も強さのひとつであり、今後のレースの選択肢も広がることだろう。現時点では1400メートルがベストだということで、次走は12月24日の兵庫ゴールドトロフィーJpnⅢを予定している。
 そして報道陣から、来年のJBCスプリントJpnⅠ(川崎)が1400メートル戦だという話が上がると、菅原調教師は思わず二コリ。頂点へ向けての陣営の期待はかなり高いようだ。これから約1年をかけてどれだけ力をつけていくのか、本格化したラブバレットの走りから目が離せない。
山本聡哉騎手
スタートが良ければ逃げるプランもありましたが、名古屋の馬がいたので3番手くらいがとれればと。外になりすぎないよう最初は押していきました。息の入る位置取りでしたし自分のタイミングで動けたのは良かったです。笠松は、期間限定騎乗の時以来ですが、その時の経験がかなり活きたと思います。
菅原勲調教師
休み明けの前走を使った後、状態がとても良くなりました。サトノタイガーは強いと思っていましたが、今日はいい競馬をしてくれましたね。レースは騎手に任せていたんですが、ゴール前で少し甘くなるところがあるので、そこだけ心配していました。今後は交流重賞で中央馬相手にがんばってほしいです。

断然の支持を集めたサトノタイガーは2着に敗れた。

取材・文:秋田奈津子
写真:宮原政典(いちかんぽ)