dirt
2015年11月25日(水) 園田競馬場1400m

控える競馬も直線弾けて完勝
経験を生かしてダート3連勝

 競馬の予想をするのに難しいものの中に、未知の要素に対する見極めがある。たとえ、芝で好成績をあげていても、初めてダートを走ったら、まったくダメな馬も今までたくさんいた。その逆もまた然りである。
 そういう意味で今年の兵庫ジュニアグランプリJpnⅡの予想は難しかった。能力上位の中央勢4頭はいずれも2勝馬だが、3頭が初ダート。それなら、地元で無傷の4戦4勝マイタイザンにも首位争いに加わる余地があるのではという声も兵庫の関係者からは挙がっていた。
 1番人気は中央勢唯一となるダートの勝ち馬サウンドスカイで単勝2.1倍。これに兵庫出身の岩田康誠騎手が騎乗するオデュッセウスが2.9倍、ダートで活躍したカジノドライヴを父に持つコウエイテンマが5.9倍、地元の期待を一身に受けるマイタイザンが7.9倍と続いた。
 しかし、勝ったのはダート2戦2勝だったサウンドスカイで、見極めが難しかった中央勢3頭が2、3、4着。終わってみれば中央勢が上位独占という結果だった。
 レースは、地元タケマルリートとオデュッセウスを制して、和田竜二騎手のコウエイテンマが主導権を奪い、マイタイザンは外の4番手。スタートはいま一歩だったサウンドスカイは馬群の真ん中から少しずつポジションを上げ、2コーナーでは好位まで進出した。
 向正面で後方にいた横山典弘騎手のマシェリガールが外から先団に襲いかかると、マイタイザンが後退。3コーナーで上位争いは中央勢4頭に絞られた。
 直線に入るとマシェリガールの脚色が衰え、逃げていたコウエイテンマが再び盛り返し、道中で終始かかり気味に競りかけられたオデュッセウスを振り切る。しかし、4コーナーで外に出したサウンドスカイが今回も自慢の末脚を炸裂させると、粘るコウエイテンマを差し切った。これがディープスカイ産駒の地方・中央を通じて初の重賞制覇ともなった。
 「2走前に砂をかぶっても、走る気をなくさないのはわかってたし、小回りコースさえこなせれば、いい競馬はできると思っていた」と佐藤正雄調教師は笑顔を見せた。スタートこそ1完歩目が遅く立ち後れ気味も、道中じわじわとポジションを上げていった前向きさが、課題だった小回りコースを克服した。
 2着コウエイテンマの和田騎手が「ダートもこなしたが、最後は久々のぶんかな」と言えば、3着オデュッセウスの岩田騎手も「慣れてきたら、もっと走る」と、ともに感触は悪くない。初の敗戦となったマイタイザンの杉浦健太騎手は「向正面で後ろから来られた時に、馬が怖がってしまった」と中央勢から厳しい洗礼を受ける形となった。
 注目されるサウンドスカイの今後についてだが、「まったく白紙」(佐藤調教師)とのこと。「まだ芝の可能性も残っているし、考えたい。川崎(全日本2歳優駿JpnⅠ、12月16日)だと間隔が短いし、阪神(朝日杯フューチュリティステークスGⅠ、12月20日)も同じ。来年になるかな」と年内出走に慎重な姿勢を見せた。
 佐藤正雄厩舎と言えば、近年はワンダーアキュート(JpnⅠ3勝)やサウンドガガ(スパーキングレディーカップJpnⅢ)と、ダート巧者による実績が目立っていたが、その系譜を継ぐ新たな看板ホースが誕生した。
戸崎圭太騎手
2走前に騎乗して勝っているので、能力があるのはわかっていました。枠も良かったので、いい位置を取れました。砂をかぶっても怯まず、道中も前向きなので、しまいは伸びると思いました。距離は延びても、道中で一生懸命になり過ぎなければ、今後も楽しみですね。
佐藤正雄調教師
ダートではすでに2つ勝っているし、いい競馬はしてくれると思っていました。スタートでは1歩目が速くないので、前には行けないですが、前に行って戸惑うよりは普段通りでいいと思いました。芝の可能性も残っているし、まだ2歳ですが、どんな競馬もできるし、派手さはないが、奥の深さを感じます。


取材・文:松浦渉
写真:桂伸也(いちかんぽ)