鮮やかに差し切って角川厩舎ワンツー
14年ぶり2歳交流重賞ダブルの快挙
「出走させるからにはワンツーフィニッシュを目指したい」レースの1週間ほど前、北海道2歳優駿JpnⅢにタイニーダンサー、スティールキングと2頭の管理馬を送り出す角川秀樹調教師は、取材陣を前にこう告げていた。
中央所属馬4頭を含む10頭で争われた今年の北海道2歳優駿JpnⅢを制したのは、メンバー中、唯一の牝馬タイニーダンサーで、クビ差の2着に入ったのがスティールキング。まさに角川調教師は“有言実行”の形となった。
このタイニーダンサーの勝利は、2001年のフェスティバル以来、14年ぶりとなるエーデルワイス賞JpnⅢ、北海道2歳優駿JpnⅢのダブル2歳交流重賞制覇の快挙ともなった。
「レースの間隔が詰まっていたこともあり、前走からの状態を維持しながら調教を行ってきました。馬体はいささか寂しく見えたかもしれませんが(前走よりマイナス2キロ)、それでもこれまでのレースでは、良く見せている時よりも結果を出せていたので、今回も勝ち負けの競馬をしてくれるのではとの期待はありました」(角川調教師)
スタート直後、最内枠を生かしてスティールキングが先頭に立つも、1コーナーの手前では、タイニーダンサーがレースの主導権を奪った。前々走のフローラルカップではレースの途中から先頭に立ち、そのままゴールまで押し切ったが、スタートからハナを切ったのは初めてのこと。実はこの騎乗は普段から調教に跨ってきた桑村真明騎手だからこそ知り得る、タイニーダンサーのある“癖”から導き出されたものだった。
「攻め馬で跨った時から無理に押さえるよりも、自分のリズムで走らせた方がいい動きをしていました。結果としてハナに立つ形になりましたが、窮屈に走らせるよりもいいと思っていましたし、道中ではハミも抜けて息を入れることもできました」(桑村騎手)
向正面に入ると、折り合いがついたタイニーダンサーを交わして、かかり気味のエネスクが集団を引き連れていった。3コーナー過ぎではキョウエイギアがまくりを見せ、4コーナー手前ではスティールキングがその2頭に並びかけると、タイニーダンサーは3頭の外に進路を向けた。
「勝負どころでも馬は落ち着いていましたし、直線は弾けてくれるという手応えもありました」(桑村騎手)
最後の直線、3頭の併走から先に抜け出したのはスティールキング。しかし、ゴール手前でそのうしろにつけていたタイニーダンサーが並びかけ、そして鮮やかに交わしていった。
「ゴール前ではいつも以上に声が出ました。レース前にワンツーフィニッシュができればと話していましたが、それでもこの結果は出来すぎですよね」(角川調教師)
今年のホッカイドウ競馬の2歳戦では、強さが一際目立っていた角川厩舎の所属馬たち。タイニーダンサーだけでなく、決して抜けた能力を持った馬はいなかったとも角川調教師は話す。
「この世代だけ特別な調教を行ってきたわけでもありません。ただ、強い馬同士がお互いを高め合うような調教を行えたことで、さらなるレベルアップを果たせたのでは、との思いはあります」(角川調教師)
そう話した角川調教師の表情は、実に晴れやかだった。
桑村真明騎手
最高に嬉しいですね。1800メートルは初めてということで不安こそありましたが、馬も落ち着いていましたし、直線では手応えの良さの通りに力強い走りを見せてくれました。まだまだ快進撃を続けられる馬だと思いますし、今後、ホッカイドウ競馬を離れてからもタイニーダンサーの応援をよろしくお願いします。
角川秀樹調教師
桑村騎手からは『場合によってはハナに行ってもいいですか?』とも言われていましたが、うまく乗ってくれました。この後は中央への移籍(美浦・伊藤圭三厩舎)が予定されていましたが、このパフォーマンスを見たオーナーから、『今後のこと(次走や移籍時期など)を考え直したい』とも言われています。