前半ハイペースのサバイバルレース
直線早め先頭で押し切り連覇達成
9月後半からはダートグレードレースの連発。東京盃JpnⅡからはRoad to JBCもスタートし、ダート路線は一気に盛り上がる。そして秋のダートJpnⅠ第一弾となるのは、マイルチャンピオンシップ南部杯。肌寒さを感じる気候の中、好メンバーの集結に盛岡競馬場は前年比145.3%となる6,261名の入場者が熱戦を見守った。今年の南部杯はJRA、地方他地区、地元それぞれに期待馬が揃ったが、ローテーションを考えると様々な思惑が考えられ、予想の方は難解。「軸はベストウォーリアだが、相手が……」という構図で人気が分散した。地方勢の上位進出も期待され、ハッピースプリントが単勝3番人気、ポアゾンブラックが6番人気の支持を集めた。
メンバーを見渡すと、どうしても行きたいと思える存在が見当たらず、昨年逃げて2着だったポアゾンブラックの田中淳司調教師も「なにかに前へ行ってもらいたい」というような口振り。ならば、有力どころの多くは2、3番手を狙うことになるのかとも予想したが「この枠(1番)なら、行ければハナでも」という藤岡康太騎手のタガノトネールに、エーシンビートロン、ポアゾンブラックが3コーナーまでほぼ併走のまま進み、スタートからのハロンごとのラップが12秒3-10秒5-11秒2-11秒7とハイペースのまま緩まなかった。直後にベストウォーリア、その外にダブルスターがおり、その後ろにワンダーアキュート。力尽きた馬から順に脱落するサバイバルレースの様相になった。
ベストウォーリアは一見絶好と思える4番手追走だったが、福永祐一騎手は「外からプレッシャーがきつく、少し(仕掛けが)早いかなと思いながら乗っていた。前走ほどの伸びではなかった」とのこと。確かに直線半ばで易々と抜け出したかに見えたが、最後の1ハロンは14秒0。全体のラップを見ても前半3ハロン34秒0に対し、上がり3ハロン38秒9と、その差4秒9は、近年の南部杯で最大の数字になるハイペースであり、福永騎手が伸びを感じなかったとしても不思議はない。一方でプレッシャーをかけ続けたダブルスターの関本淳騎手は「強気に乗っていく策で、ずっとベストウォーリアの外へついていったが、相手は全く動じなかったね」と。結果、2着タガノトネールとの2馬身差は、やはりベストウォーリアの完勝と表現して差し支えないだろう。
地方勢はポアゾンブラックが厳しい展開に巻き込まれて5着。ハッピースプリントはスタート直後に躓き、追い上げていったが思ったほどに差が詰まらず、宮崎光行騎手が「着順掲示板くらいはあるはずですが」と言っていた6着は、いずれも不完全燃焼に終わった。
レース後のインタビューでは、ベストウォーリアの次走以降に話題が移った。「1400メートル(の大きいレースを)を作ってくれ」と石坂正調教師が笑わせたが、オーナーと相談の上としながらも、昨年とは違いJBCスプリントJpnⅠへ進むとコメント。「スプリンターの本質が出てきた」というベストウォーリアがどのような進化を見せるかが楽しみになった。
福永祐一騎手
外からのプレッシャーがきつく、1番人気なので楽な展開ではなかったし、(休み明けで)前走ほどの伸びではありませんでした。負けられない一戦だったので、勝てて良かったです。(次走がJBCスプリントなら)1200メートルでは少し置かれるかもしれませんが、切れる脚があるのでむしろ面白いのでは。
石坂正調教師
昨年よりもメンバーが強いと思っていましたし、マークされて厳しい展開でした。(オーナーと相談の上で)次走はJBCスプリント、昨年は2000や1800メートルでは距離が長いように感じました。1200メートルに戸惑うかとも思いますが、元々はスプリンターの本質が出てきたようにも思います。