ハイペースを中団で機をうかがう
有力2頭を直線とらえ重賞初制覇

　例年、9月の秋分の日前後に行われていた日本テレビ盃JpnⅡだが、今年は10月7日に実施。秋の深まりを感じるナイター開催の船橋競馬場は、メインレースの頃になるとひんやりとした空気に包まれていた。
　Road to JBC第3弾である今年の日本テレビ盃JpnⅡは、JRAの実績馬2頭に人気が集中した。1番人気はＧⅠ／JpnⅠ・4勝のコパノリッキーで単勝1.6倍。2番人気はこのレース連覇を狙うクリソライトで2.0倍となり、この2頭の馬連複はなんと1.3倍。昨年のJBCクラシックJpnⅠ・1、2着馬が前哨戦で相まみえ、一騎打ちムードが漂っていた。
　しかし、それに待ったをかけたのが地方のダートグレード初参戦、3番人気のサウンドトゥルーだった。
　ゲートが開くと、無理をすることなく先頭に立ったコパノリッキーを、徹底マークというクリソライトがピタリと2番手につけ、2頭が後続を離しながらハイペースを作った。4、5馬身後ろにサミットストーンとラヴィアンクレールが追走。その様子に、「このまま人気馬2頭で決まるのか？！」と多くのファンが思ったに違いない。
　しかしスタートから中団の位置取りだったサウンドトゥルーの大野拓弥騎手は、「1～2コーナーを上手く立ちまわれた後、流れが速いことに気づきました。これならチャンスがある」と思ったそう。向正面に入ると、サウンドトゥルーは徐々に進出を開始し、3コーナー過ぎでは3番手まで上がっていた。直線に入るとコパノリッキーの手応えが怪しくなり、クリソライトが先頭に立ったのだが、残り200メートルでそれをあっさりと交わしたサウンドトゥルー。そのまま3馬身突き放し、同世代の実力馬たちを鮮やかに一蹴した。
　ここまで28戦して着外が4回のみと、堅実派といえるサウンドトゥルーだったが、重賞3戦目で嬉しい初タイトルを手にした。「500万や1000万クラスでモタモタしていましたが、ようやく本格化してきたようです」と笑顔の高木登調教師。そして「今、とても状態が良いんです。それをレースに生かすことができました」という大野騎手の言葉からも、充実の5歳秋を迎えたようだ。JBCを目前にしての新星誕生。さらに相手が上がる大一番で、どんな走りを見せてくれるだろうか。
　2着のクリソライトは得意の船橋コースだけに、勝って次走に弾みをつけたかった。「ここは勝利が欲しかった」と音無秀孝調教師は悔しそうだったが、「馬体は少し重目だったし、1800メートルより2000メートルの方が向いていますから」と、JBCに向けまったく悲観はしていなかった。
　7カ月半ぶりの実戦となったコパノリッキーは、クリソライトから7馬身離された3着という結果。「今日はただの休み明けではなく、骨折からの復帰ですから仕方ありません。使いつつ良くなる馬なので、次ですよ次」と武豊騎手。こちらもこの後に繋がるレースになったようだ。
　そして、地方馬最先着は5着のサミットストーン。前走のアンタレスステークスＧⅢで蹄を負傷し休養を余儀なくされていたが、地元の大舞台に間に合うことがきた。石崎駿騎手は、「現状ではまずまずの走りでした。今はちょうど良化の最中ですから」と前向きな表情で語った。2013年にはJBCスプリントJpnⅠ（金沢）に出走して6着だったが、今年は地方競馬のトップホースとしてJBCクラシックJpnⅠに挑む。JRA勢の厚い壁を壊すことができるのか、ファンの大きな期待を背負うことになる。