2番手から直線後続を突き放す
あらためて実力を示す6馬身差
お昼過ぎに数十分ほどにわか雨が降った盛岡競馬場だが、馬場は変わらず良のまま、夏恒例の短距離交流重賞、クラスターカップJpnⅢをむかえた。パドックで一際注目を集めていたのが、今回が盛岡競馬場初騎乗となるミルコ・デムーロ騎手だ。今年3月にJRA所属騎手となり、すでに人気、成績ともにファンには欠かせない存在となっている。そんな名手を一目見ようと大勢のファンが集まり、カメラで撮影したり、声援を送ったりしていた。そしてレースを制したのは、そのデムーロ騎手が手綱を取ったダノンレジェンド。単勝1.4倍の断然人気に応え圧倒的なパフォーマンスを披露した。
上位人気馬に先行馬が揃いポジション争いに注目が集まる中、先手を取ったのは昨年の覇者サマリーズ。ダノンレジェンドはそれをマークするようにピタリと2番手につけた。その外にエーシンビートロン、ラブバレットが続き、すぐ後ろにルベーゼドランジェとポアゾンブラックがつけ、6頭が一団となって先行集団を形成した。直線に入ると早くも先頭に立ったダノンレジェンド。そのままぐんぐん後続を突き放し余裕のゴールイン。6馬身差の圧勝劇を見せつけた。
戻ってきたデムーロ騎手は開口一番、「めっちゃ、つよかった~!」と満面の笑顔。ファンの期待通りの結果を出し、表彰式では改めて拍手と歓声に迎えられた。
これで重賞4勝目を手にしたダノンレジェンドだが、前走の北海道スプリントカップJpnⅢでは3着に敗れ連勝がストップしていた。村山明調教師はその敗因として、位置取りが後ろ過ぎたことを挙げた。そのためデムーロ騎手には、「前の方でレースをしてほしい」と指示を出したそうだ。この馬の課題は『スタート』と『もまれ弱い』ことだと村山調教師ははっきり口にしたのだが、その課題がクリアできればこれだけ強いレースができると再確認。しかも今回は、次走に向けて8分くらいの仕上げでの参戦とのことだから、まだまだこの馬の能力は底知れない。この後は、東京盃JpnⅡからJBCスプリントJpnⅠに向かう予定だ。秋のダートスプリント戦線は、ダノンレジェンドをめぐる戦いになることは間違いないだろう。
そして、今年のクラスターカップJpnⅢは地方勢の健闘も光った。2着は、北海道のポアゾンブラックだ。勝ち馬には離されたものの3着には4馬身差をつけているのだから実力のある証拠。「本当は2、3番手でスムーズにレースがしたかったのですが、スタート1、2歩目があまり速くないので。でも、今までもまれ弱いところがあった馬が、あの位置で競馬ができたのは収穫です」と阪野学騎手。JRAからの転入初戦となった北海道スプリントカップJpnⅢで2着に好走した実績からも、今後もダートグレードでの活躍が期待できそうだ。
接戦の3着争いを制したのは、地元岩手代表のラブバレット。場内ビジョンに映し出されたゴール前のストップモーションで3着が確実だとわかった瞬間、スタンドの地元ファンからは大きな拍手が上がった。南郷家全騎手は、「いい感じでスピードに乗れました。2着はあるかなという手応えでした」とコメント。2走前のさきたま杯JpnⅡでは見せ場十分の4着だっただけに、それがフロックでないことを証明した。JBCスプリントに向けこちらも楽しみな1頭。この秋は岩手競馬ファンの期待を一身に背負うことになりそうだ。
取材・文:秋田奈津子
写真:佐藤到(いちかんぽ)
写真:佐藤到(いちかんぽ)
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