dirt
2015年8月12日(水) 盛岡競馬場 1200m

2番手から直線後続を突き放す
あらためて実力を示す6馬身差

 お昼過ぎに数十分ほどにわか雨が降った盛岡競馬場だが、馬場は変わらず良のまま、夏恒例の短距離交流重賞、クラスターカップJpnⅢをむかえた。
 パドックで一際注目を集めていたのが、今回が盛岡競馬場初騎乗となるミルコ・デムーロ騎手だ。今年3月にJRA所属騎手となり、すでに人気、成績ともにファンには欠かせない存在となっている。そんな名手を一目見ようと大勢のファンが集まり、カメラで撮影したり、声援を送ったりしていた。そしてレースを制したのは、そのデムーロ騎手が手綱を取ったダノンレジェンド。単勝1.4倍の断然人気に応え圧倒的なパフォーマンスを披露した。
 上位人気馬に先行馬が揃いポジション争いに注目が集まる中、先手を取ったのは昨年の覇者サマリーズ。ダノンレジェンドはそれをマークするようにピタリと2番手につけた。その外にエーシンビートロン、ラブバレットが続き、すぐ後ろにルベーゼドランジェとポアゾンブラックがつけ、6頭が一団となって先行集団を形成した。直線に入ると早くも先頭に立ったダノンレジェンド。そのままぐんぐん後続を突き放し余裕のゴールイン。6馬身差の圧勝劇を見せつけた。
 戻ってきたデムーロ騎手は開口一番、「めっちゃ、つよかった~!」と満面の笑顔。ファンの期待通りの結果を出し、表彰式では改めて拍手と歓声に迎えられた。
 これで重賞4勝目を手にしたダノンレジェンドだが、前走の北海道スプリントカップJpnⅢでは3着に敗れ連勝がストップしていた。村山明調教師はその敗因として、位置取りが後ろ過ぎたことを挙げた。そのためデムーロ騎手には、「前の方でレースをしてほしい」と指示を出したそうだ。この馬の課題は『スタート』と『もまれ弱い』ことだと村山調教師ははっきり口にしたのだが、その課題がクリアできればこれだけ強いレースができると再確認。しかも今回は、次走に向けて8分くらいの仕上げでの参戦とのことだから、まだまだこの馬の能力は底知れない。この後は、東京盃JpnⅡからJBCスプリントJpnⅠに向かう予定だ。秋のダートスプリント戦線は、ダノンレジェンドをめぐる戦いになることは間違いないだろう。
 そして、今年のクラスターカップJpnⅢは地方勢の健闘も光った。2着は、北海道のポアゾンブラックだ。勝ち馬には離されたものの3着には4馬身差をつけているのだから実力のある証拠。「本当は2、3番手でスムーズにレースがしたかったのですが、スタート1、2歩目があまり速くないので。でも、今までもまれ弱いところがあった馬が、あの位置で競馬ができたのは収穫です」と阪野学騎手。JRAからの転入初戦となった北海道スプリントカップJpnⅢで2着に好走した実績からも、今後もダートグレードでの活躍が期待できそうだ。
ミルコ・デムーロ
騎手
勝ててとても嬉しいです。村山調教師から、すごくいい馬だからとずっと聞いていましたが本当に強くて驚きました。スピードがあって、とても真面目で賢い馬です。盛岡競馬場では初めて騎乗しましたが、とてもきれいな競馬場ですね。
村山明調教師
4コーナーまでに楽にいい位置につけられたのが勝因ですね。追い出しを我慢して気分良く走らせてくれたことが最後の伸びに繋がったと思います。秋に向けていいスタートが切れました。大井は、東京スプリントで勝っているので、その経験を活かしてJBCスプリントまでいい結果を出していきたいです。

 接戦の3着争いを制したのは、地元岩手代表のラブバレット。場内ビジョンに映し出されたゴール前のストップモーションで3着が確実だとわかった瞬間、スタンドの地元ファンからは大きな拍手が上がった。南郷家全騎手は、「いい感じでスピードに乗れました。2着はあるかなという手応えでした」とコメント。2走前のさきたま杯JpnⅡでは見せ場十分の4着だっただけに、それがフロックでないことを証明した。JBCスプリントに向けこちらも楽しみな1頭。この秋は岩手競馬ファンの期待を一身に背負うことになりそうだ。

取材・文:秋田奈津子
写真:佐藤到(いちかんぽ)