早めの仕掛けから6馬身差圧勝
人馬とも念願のグレード初制覇
先週は日本列島へ台風の接近があり、多くの競馬場で馬場状態が悪化。盛岡競馬場の開催も天候が心配されたが、台風は去って前日には関東甲信で梅雨明けが発表。当日は曇り空ながらも、マーキュリーカップJpnⅢとジャパンジョッキーズカップを含む全レースを良馬場で実施することができた。マーキュリーカップJpnⅢには近年になって、南関東からの遠征馬が増えてきている。それによりJpnⅢながらメンバーの層が厚くなり、予想の難しいレースになってきた。ダートグレードでは単勝式の人気上位をJRA勢が占め、あとは大きく離れて地方勢は揃って万馬券というレースさえ見られる中、ここでは比較的人気が分散。上位5番人気までJRA勢ではあったが、そのあとは地方勢があまり差なく続いていた。そして、地方勢で最も人気を集めていた6番人気の大井・ユーロビートが圧勝。第2回のメイセイオペラ以来、17年ぶりの地方勢優勝となった。
6馬身差という結果からも分かるように、レースは途中からユーロビートの独壇場。1番人気のメイショウコロンボの逃げは、2コーナーあたりから一気にペースが落ちてハロン14秒台に。このペースダウンに素早く反応したのがユーロビートの吉原寛人騎手で、当初後ろから3頭目あたりにいたが、グイグイと位置を上げて向正面で先頭に立つ勢い。メイショウコロンボはペースを上げて先頭を奪い返すが、この日は粘りが今ひとつ。ユーロビートは「最後の坂までに息を入れられたのが良かった」と吉原騎手が態勢を整えて直線ラストスパート。一気に後続は置き去りとなった。
一見楽勝に映ったが、吉原騎手のアクションはゴールまで激しかった。「4コーナーからは、このままでいいのかというくらい最高でした。今年の目標がグレードレース制覇でしたが、まさかこんなに早く勝てるとは思っていませんでした」と笑顔を見せていた。金沢所属でデビュー年からトゥインチアズでJRA遠征して勝利を挙げて全国に名前を売り、昨年はハッピースプリントに騎乗して南関東三冠まであと一歩という大活躍。いまや全国どこのグレードレースでも常連と感じさせる吉原騎手だが、15年目のここがグレードレース初制覇。意外とも感じたが、地方所属馬がダートグレード競走で勝ち星を挙げること自体が大変な難関であり、昨年は3頭(地方所属騎手は4人)、一昨年はのべ5頭(地方所属騎手はのべ3人)しか勝っていない。そして今年はユーロビートと吉原騎手が地方勢の初勝利、15年という数字がより重みを感じさせる。
ユーロビートのレース選択もバッチリ当たった。こちらも初ダートグレード制覇となった渡邉和雄調教師は、「広いコースの長距離戦が良い」といい、盛岡への遠征で結果を出した。このあとは、「大井の長距離戦もあまりないのですが、東京記念(2400メートル)の連覇を目指します。今年はJBCも大井でありますので…」と、JBCクラシックJpnⅠへの出走も視界に入っているようだった。
吉原寛人騎手
行き脚がつかなかったので思ったより後方から。1~2コーナーでペースが遅くなったので一気にまくって、目標のメイショウコロンボの横まで行けたし、最後の坂までにひと息入れられたのが良かった。グレードレースでここまでうまくいくとは思いませんでした。自分でもいいレースだったと思います。
渡邉和雄調教師
ちょっと仕掛けが早いかと思いましたが、2番手になった時に息が入れられて、もう一度動けたのが良かったし、最高の結果になりました。切れるというよりはロングスパートタイプで、広いコースの長距離が良い。このあとは東京記念の連覇を目指します。