海外遠征帰りも王者の貫録
ジーワン最多勝に並ぶ勝利
夜風が心地よい絶好のナイター競馬日和となった大井競馬場。この日は2万3千人以上のファンが集まり、上半期のダート頂上決戦の行方を見守った。ドバイ帰りのホッコータルマエ、かしわ記念JpnⅠで復活勝利を挙げたワンダーアキュート、地方の大将格ハッピースプリントらジーワン馬5頭に加え、JRAのダート重賞で好走しているクリノスターオーは地方の交流重賞初参戦と、今年も豪華メンバーが集結した帝王賞JpnⅠ。一番の注目は、海外遠征後の初戦を迎える王者ホッコータルマエがどんな走りを見せるのか。パドックでは「状態面は大丈夫なのか?!」という不安がささやかれる一方で、「この実績で単勝1.5倍はつきすぎなのでは?!」という声も聞かれた。結果は後者。この単勝オッズが高いと思えてしまうほど、やはりホッコータルマエは強かった。
ゲートが開くと、まずクリノスターオーが先手を主張、ニホンピロアワーズが競りかけるように続き、さらにクリソライトが1~2コーナーで先行争いに加わった。隊列が決まった向正面ではクリノスターオーが先頭を走り、クリソライトが並ぶように2番手、2馬身差でワンダーアキュートとニホンピロアワーズが続いた。ホッコータルマエはそれらJRA勢をマークする位置取りで、少し離れた6番手にハッピースプリントが追走した。
3コーナーあたりでは前の6頭が凝縮して一団となり、その中からクリソライトが先頭に躍り出た。そしてホッコータルマエは手応え良く2番手まで進出。「僕の悪い癖で、いつも早く前を捕まえにいくんですけど(笑)、そのぶん少し気を抜いていましたが余力は十分ありました」と勝利を確信していた幸英明騎手。直線残り200メートルあたりで抜け出すと、内で懸命に食い下がるクリソライトに3/4馬身差をつけ1着でゴールイン。2分2秒7という好タイムで貫録の勝利を飾った。
「良い状態でレースに臨めました」と口を揃えたホッコータルマエ陣営。昨年のドバイ遠征の際は、レース後にストレス性腸炎を発症し長期休養を余儀なくされた。また、海外遠征後の各日本馬の状況を見ると、馬体故障を発生したり、帰国後初戦は敗戦するケースも多いことから、断然の1番人気に不安を感じるファンも少なくなかっただろう。しかし、ホッコータルマエにとって今年は2度目の海外遠征。ドバイワールドカップでは果敢に逃げて5着と健闘し、その経験をしっかり身につけて日本に帰って来た。「1カ月の検疫の期間に疲れはとれました。緩みすぎるのが心配だったので、すぐに厩舎に入れて気合を戻すよう調教を始め、ここに向けてじっくり仕上げました」と、中間の順調さを語った西浦勝一調教師。さらに「日々成長を感じます。精神面がどんどん強くなっています」と言葉を続けた。
これでGⅠ/JpnⅠ・9勝目。ヴァーミリアン、エスポワールシチーが持つGⅠ/JpnⅠ最多勝記録に並んだ。この圧倒的な強さをもってすれば、歴史に名を刻む日はすぐそこだと思わざるをえない。以前から、「出走するレースは負けられない」と幸騎手が口にしているが、今後どれだけのタイトルを積み重ねていくのか、王者ホッコータルマエの底力は計り知れない。この後は休養に入り、秋はJBCクラシックJpnⅠから始動する予定だ。
そして地方競馬ファンを大いに沸かせたのは、3着のハッピースプリント。帝王賞JpnⅠで地方所属馬が馬券圏内に入ったのは2010年(フリオーソ1着、ボンネビルレコード3着)以来、5年ぶりのこと。直線ではしぶとく末脚を伸ばし見せ場十分の内容で、地方のトップホースのプライドを見せてくれた。前走かしわ記念JpnⅠ(3着)から引き続きコンビを組んだ宮崎光行騎手は、「この馬で2000メートルに乗るのは初めてだったし、ペースなども考えて今日は大事に乗りました。今後同じ条件の時は、もう少し前で勝負してもいいかも。ただ、落ち着きすぎているところがあるので、ジョッキーがなだめるくらいの前向きさが出てくるといいですね。そうすれば中央馬と五分に戦えると思います」と精神面を課題にあげた。2戦続けてジーワン3着と、あと一歩のところまできているだけに、秋に向けての成長に大きな期待がかかる。
幸英明騎手
もしかしたらハナを切るまであるかなと思っていましたが他に主張する馬がいたのであの位置に。結果的に良いポジションでしたね。去年くらいから安定して強さを維持しながら走っているのは本当にすごいと思います。タルマエが勲章をもらえるのであればジーワン最多勝利を目指してがんばりたいです。
西浦勝一調教師
馬も早く走りたいという気持ちを見せていたので結果を出せて良かったです。幸騎手が馬を信じて落ち着いて強いレースをしてくれました。昨年のアクシデントからよくここまで立ち直ってくれましたよね。なんとかジーワン最多勝利馬にさせてあげていので、一戦一戦全力でやっていきたいと思います。