迷いのない逃げで後続を完封
芝で4勝もダートで重賞初制覇
北海道スプリントカップJpnⅢでグレード初制覇を果たしたシゲルカガは、これで18戦6勝となったが、そのうちの4勝が芝1200メートルを逃げ切ったというスピード馬。しかしながらわずか3度の経験のダート1200メートルの条件でも2勝、2着1回と安定した成績を残している。「ダートは2歳時(兵庫ジュニアグランプリJpnⅡ)にも走ったことがありましたが、その時はまだ力もつききっていなかったこともあるのか、思ったような成績を残せませんでした。実は2走前の千葉ステークスを使う際、芝1400メートルのレースと両睨みだったのですが、スプリントの条件がこの馬には合っていたことや、父のパイロの産駒成績からも、芝だけでなく、ダートもこなしてくれるのではとの期待もありました」とは管理する谷潔調教師の言葉。そして、久しぶりのダート戦となった千葉ステークスでは善戦どころか、見事な逃げ切りで勝利を収めると、続く東京スプリントJpnⅢでも果敢に先手を取り、ゴール前ではダノンレジェンドに交わされたものの2着に粘り混んだ。
今回出走した中央馬4頭のうち唯一重賞未勝利のシゲルカガではあったが、ダノンレジェンドに次ぐ2番人気の支持を集めた。
「自分の形でレースができる馬ですし、小細工はしたくありませんでした」と鞍上の勝浦正樹騎手が話していたように、ゲートが開いて馬群からいち早く抜け出すと、後続に3馬身ほどの差をつけて逃げた。ホッカイドウ競馬に転入緒戦となるポアゾンブラックなどの先行勢が続き、過去2年続けてこのレースで4着のアウヤンテプイは先行勢をマークする位置につけた。一方、1番人気のダノンレジェンドはその先行争いに加わらず中団からレースを進めていった。
直線に入ってもシゲルカガのスピードに陰りは見られず。ゴール前、ポアゾンブラックが迫って来るも、3/4馬身の差を保って先頭でゴール。ダノンレジェンドは直線で猛烈な追い込みを見せるも、2頭をとらえきれず3着まで。4着には早めに仕掛けたアドマイヤサガスがインコースで粘り込み、アウヤンテプイは昨年より着順を落として5着だった。
この勝利は、シゲルカガの父であるパイロにとっても初めてのグレード勝利となった。現在、日高町のダーレー・ジャパン・スタリオンコンプレックスで繋養されているパイロは、芝・ダートを問わない産駒の活躍もあって、2013年には171頭もの繁殖牝馬を集めており、今シーズンもすでに150頭に迫る配合を行っている。
勝浦正樹騎手
この馬らしいレースができました。道中も自分のリズムで走れていましたし、最後の直線では自分から動いていったほどです。ゴールの瞬間まで勝てるかどうかわかりませんでしたが、それでも持ち前のしぶとさで粘り混んでくれました。重賞初制覇の手綱を取れたこともまた嬉しいですね。
谷潔調教師
前走(東京スプリント)と同じくナイター競馬となりましたが、その時と同様に落ち着きも見られていましたし、状態は前走以上でした。最後まで交わされなかったことからしても、確実に力をつけていると思います。JBCスプリントを目標に、馬の状態を見ながら今後のローテーションを決めていきたいです。
「もうシーズンも後半ですが、シゲルカガが重賞を勝利したことで、明日からは再び配合申し込みの電話がかかってくるかもしれませんね」とは、ダーレー・ジャパン・スタリオンコンプレックスのノミネーションスタッフ。今後、シゲルカガがダートでさらにタイトルを積み重ねていくようであれば、パイロもまた種牡馬としての評価をこれまで以上に高めていくに違いない。
取材・文:村本浩平
写真:中地広大(いちかんぽ)
写真:中地広大(いちかんぽ)