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2015年5月5日(祝・火) 船橋競馬場 1600m

前の2頭を射程に直線突き抜ける
コンビ復活の9歳馬がJpnⅠ制覇

 船橋競馬場では新しい誘導馬がデビューした。中央5勝の実績で、その後は船橋の出川克己厩舎に移籍したプレファシオ。先月にデビューしたばかりの新米誘導馬だが、かしわ記念JpnⅠ本番は先輩誘導馬たちの先陣を切って、これまで以上の堂々とした姿で出走馬たちをエスコートした。これから船橋競馬場の顔として息の長い誘導馬生活を送って欲しい。
 5月5日のこどもの日。場内には家族連れやカップル、友人同士など、たくさんのお客様が押し寄せて活気にあふれていた。
 そうした中で行われたかしわ記念JpnⅠは、マイルチャンピオンシップ南部杯JpnⅠの勝ち馬ベストウォーリア、砂の女王サンビスタ、ジャパンダートダービーJpnⅠの覇者で、前走はダイオライト記念JpnⅡを勝っているクリソライトの3頭に人気が集中。
 しかし、終わってみれば、セイクリムズンと並んでの年長馬、9歳のワンダーアキュートが快勝した。コンビを組む和田竜二騎手とは、2年3カ月前のフェブラリーステークスGⅠ以来となる再コンビだった。
 「最近の成績は振るわなかったですが、調教では以前と変わらなかったので、レースは半信半疑でしたが、状態はすごくよかったので期待はしていました」(和田騎手)。
 レースは、セイントメモリーがハナを主張。好位からベストウォーリアやハッピースプリント、セイクリムズンが続き、差なくサンビスタやワンダーアキュート、向正面ではクリソライトも加わって先団を形成した。そこから3馬身ほど後方にバトードール、大きく離れた最後方にはクロスオーバーとユーセイクインサーという隊列。
 「いいスタートを切って理想的な位置でレース運びができました。3~4コーナーでちょっとズブくなるところがあるので、そこを何とかついていければいいなぁと思っていました」(和田騎手)。
 3コーナーでベストウォーリアとハッピースプリントがセイントメモリーを一気に抜き去ると、ワンダーアキュートも進出していった。
 4コーナーではハッピースプリントが外にふくらみながらも先頭に立つ勢いで、ベストウォーリアは最内からもうひと伸び、その間からワンダーアキュートも和田騎手のステッキに応えてグングン伸びてきた。「2頭の間に入ったところで脚色が違っていたので負けないと思いました。抜けたら遊んでいたので、まだ余裕はありました」(和田騎手)。
 ワンダーアキュートが2着のベストウォーリアに1馬身差をつけてのゴール。勝ちタイムは1分37秒4(良)。
 「変わらずにいい時の走りをしてくれて正直ビックリしています。年齢的な面は感じませんでした」(和田騎手)。
 ワンダーアキュートはこれで7つ目の重賞を奪取。9歳馬によるGⅠ/JpnⅠ制覇は史上初だそう。衰えを見せない迫力あふれる末脚には恐れ入る。この後は6月24日に行われる帝王賞JpnⅠ連覇を目指す予定で、中央のGⅠへの挑戦も再び視野に入ってくるくだろう。9歳馬の挑戦は続いていく。
 一方、地方最先着は3着のハッピースプリントだった。昨年の南関東二冠馬で、それ以降も高いレベルで戦い続けてきた。今回は2歳時以来の宮崎光行騎手とのコンビ。「マイルだったので気合をつけていって、強引に勝ちにいく競馬をしました。ジリ脚のところがあるのでもうワンパンチ欲しいですね。僕が思っていたよりも善戦してくれました」(宮崎騎手)。
 ここ数戦は力を出し切れないレースが続き、陣営はもっと走れていい馬という思いが強かっただけに、「積極的な競馬をしても踏ん張っていたし、こういう競馬は今後に向けても力になります。手応えをつかめたし力を再確認できました」と森下淳平調教師。この後は帝王賞JpnⅠに向かう予定だ。
 なお、森下厩舎では3月中旬以降、ハッピースプリントをはじめとした所属全馬が調整方法を変えた。これまでの馬場中心の調整を、今は角馬場から馬場に出して行い、細かな内容は森下厩舎流。坂路がない限られた環境でどう仕上げていけば中央馬を倒せるのかということは、開業当初から追求し続けている。
 その調教を行う厩舎スタッフの技術レベルがともなってきたからこそ、実行に移し始めたそうだ。効果がもたらされるのは更なる技術向上など長い目で見ていかなくてはならないことだが、森下厩舎は高い志を持って進化し続けている。今後に向けても、ハッピースプリントと森下厩舎の存在は頼もしい。
和田竜二騎手
今日はまだまだ力があるというのを見せてくれたし、これからも期待して競馬場に見に来て欲しいですね。中央ではジーワンで2着はあっても勝っていないので、引退するまでには勝たせたいと思って乗っていたんですが、あの頃は僕の力も足りなかったので、もう一度挑戦させてみたいです。
佐藤正雄調教師
ワンダーアキュートと和田騎手に感謝しています。年齢的なこともあって多くは望めないですが、馬体重508キロなら切れる(脚を使う)ので、ひょっとしたらと思っていました。9歳になってもまだ衰えを知らないというか、(レースの)回数もそれほど使っていないので筋肉も柔らかいです。


取材・文:高橋華代子
写真:いちかんぽ(国分智、築田純)