dirt
2016年3月15日(火) 高知競馬場1400m

先行策から押し切り連覇達成
目標のJBCスプリントへ好発進

 今年の黒船賞JpnⅢも平日開催となったが、JRA所属の新人女性騎手、藤田菜七子騎手が来場するということで、例年以上のにぎわい。高知駅前からの送迎バスの始発便は、2台運行でも座席数以上のファンが乗車した。1日の入場者数と売得金額がそれぞれ昨年のおよそ1.6倍となったのは、“藤田菜七子騎手効果”が大きな要因だろう。
 その藤田騎手は第1レースから4レースまで連続騎乗。その姿がパドックに現れるたびに、無数のシャッター音が響いた。パドックの周囲には10台ほどのテレビカメラ。しかし第5レースの黒船賞JpnⅢのときにはすべて撤収され、雰囲気もそれまでのムードとは一変という緊張感に包まれた。
 この日は晴天に恵まれたが、前日は夕方まで冷たい雨が降っていた。その影響で馬場状態は不良。そして「今週は内側の砂がかなり重い」と、地元所属騎手が口を揃える状況だった。
 それを念頭に置いたのか、黒船賞JpnⅢのゲートが開いた瞬間、サクラシャイニー鞍上の赤岡修次騎手は、最内枠でもインコースを避けるようにしてスタート。しかしその横から岩手所属のラブバレットが気合をつけながら先手を取った。続いて昨年の覇者ダノンレジェンドが2番手に。さらにニシケンモノノフ、タールタンが先頭集団を形成していった。
 その流れに一石を投じたのが、このレースで2年連続2着のドリームバレンチノ。向正面に入ったあたりから一気に上昇し、3コーナーでは先頭に立つ動きを見せた。
 しかしダノンレジェンドはそれに追随。先頭集団から抜け出したその2頭を見る形でニシケンモノノフもついていったが、最後はダノンレジェンドの独壇場。懸命に追いかけ続けたニシケンモノノフが2着に入り、失速したドリームバレンチノに代わってタールタンが3着。今年の黒船賞JpnⅢは、単勝10倍未満の3頭が人気順どおりに3着まで入線するという結果になった。
 ダノンレジェンドを勝利に導いたミルコ・デムーロ騎手は、高知競馬場で騎乗するのが16年ぶり。2000年1月20日の前回騎乗時(条件交流のはりまや盃)は2着だったが、表彰式で橋口浩二アナウンサーに「高知での初勝利」と水を向けられると、とてもうれしそうに笑った。今回は黒船賞JpnⅢの前に組まれた『はりまや盃』に騎乗(7着)できた点もプラスに働いたのかもしれない。
 4着ドリームバレンチノから2馬身差の5着には、地元所属のスクワドロンが食い込んだ。しかし手綱を取った永森大智騎手は「4コーナーでは4着があるかと思ったんですが」と浮かない表情。本人としては、同馬の前走でミスをしたという反省を含めて、この結果には納得していないようだった。
 それにしても、今年の勝ち時計1分27秒0は、パワーが必要な馬場という点を考慮すると、優秀と考えてよさそう。それをダノンレジェンドは先行策から押し切ったのだから、6歳になってさらにグレードアップしたようにも映る。そのターゲットに据えられているのは、11月3日に川崎競馬場で行われるJBCスプリントJpnⅠ。今後は東京スプリントJpnⅢから昨年と同様のローテーションを経て、昨年は惜しくも届かなかった頂点を目指していく。
ミルコ・デムーロ
騎手
馬はとてもいい雰囲気で、返し馬もスタートもレース中もすべて良かったです。僕は本当に乗っていただけです。1400メートルにも問題なく対応してくれましたね。3コーナーでドリームバレンチノが並んできたときも余裕がありました。昨年はJBCで2着でしたから、今年は勝ちたいと思います。
村山明調教師
休み明けで初めての58キロという点が心配でしたが、クリアしてくれて安心しました。本質的に1400メートルはこの馬にとって少し長いのかもしれませんが、JRAでも勝ったことがありますし、昨年の黒船賞と同じように最後まで頑張ってくれました。今後は川崎のJBCスプリントを目標にしていきます。



取材・文:浅野靖典
写真:桂伸也(いちかんぽ)