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佐賀の小松騎手が2戦を制す
MVLJは別府真衣騎手の手に
3月5日に行われた名古屋ステージは、個人戦の1位が高知の別府真衣騎手。そこで得られた個人分のポイントはリセットされ、団体戦のポイントのみ、第2ステージの佐賀に引き継がれる。しかし、その名古屋ステージから2日後に、佐賀所属の岩永千明騎手が落馬事故により負傷。そのため佐賀シリーズでのレディスチームは1名減の4名で戦うことになった。ファンにとっては岩永騎手の容体が気になるところだが、佐賀ステージの出場騎手紹介セレモニーで司会進行の赤見千尋さんから「入院はしていますが、着実に快方に向かっています」と報告があった。
しかしながら、団体戦で人数が1名少ないのは圧倒的に不利。さらに佐賀での1戦目となった第8レースでは上位人気馬の大半が、佐賀所属騎手で構成される“ヤングチーム”の手綱となっていた。当日の馬場状態は、この日の朝まで降っていた雨の影響で不良。さらに本馬場には最近になって大量の砂が補充されたとのことで、見た目にもパワーが必要と思える雰囲気だった。
その第1戦。鈴木麻優騎手(岩手)のインワンブレスが返し馬のときに暴れ、鈴木騎手が振り落されるというハプニング。しかし鈴木騎手は足から着地し、手綱も離さず馬も走らずという状況だったのは幸いだった。
9頭立ての第1戦は、内枠から木之前葵騎手(愛知)のコンゴウサクラが先手を取りに行ったが、南谷圭哉騎手と小松丈二騎手も先行策。3頭がレースを引っ張る展開は、最終的に小松騎手のチェルシーダンスが押し切る形となって、5着までをヤングチームが独占した。
その第1戦の3コーナー手前で、観客席から悲鳴が上がった。最後方を追走していた下村瑠衣騎手(高知)のカシノエキスプレスが、右肩から倒れていくシーンが大型ビジョンに映ったのだ。馬はそのあとスタート地点付近にいる係員に近づいていったが、その鞍上には人影なし。その状況に遠方からこのイベントを目当てに来場したファンの多くは、検量室のほうを覗きこむようにして事態の推移を心配していた。
しばらくして、下村騎手は馬場管理用の乗用車に乗って戻ってきたが、車内では仰向けになっているのが見えた。そしてそのまま医務室に運び込まれ、病院で検査するのがベターという判断がなされて、救急車が手配された。
このアクシデントでレディスチームはさらに1名減。しかし馬を出走取消にすることはできない。下村騎手の代役には、この日の騎乗を終えていた川島拓騎手が呼び出され、急いでパドックへと向かっていった。
ということで、このシリーズの最終戦は、女性騎手3名、佐賀所属騎手6名で争うことに。ただし団体戦の得点は、川島騎手の分はカウントせず、レディス側に最下位と同じ2点が加算されることになった(別に岩永騎手の分としても各レースで2点が加算された)。
第1戦と同じ1400メートルで行われた第2戦は、好スタートから先手を主張した小松騎手のアンフィシアターが逃げ切り勝ち。3番手を追走した木之前騎手のタピスドフルールが2着を確保して、3着には6番手からレースを進めた別府騎手のハクユウデイジーが食い込んだ。
この結果、佐賀ステージでの個人戦は、2戦2勝の小松騎手が文句なしの優勝。2位は石川慎将騎手、3位は木之前騎手となった。団体戦は、佐賀での2戦で好結果を残したヤングチームが逆転勝ち。そして女性騎手のなかでもっとも成績が良かった騎手に贈られるMVLJ(Most Valuable Ladies Jockey)賞は、別府騎手に決まった。
お祭り的な要素がある『レディス&ヤングジョッキーズシリーズ』ではあるが、表彰式を前にしての別府騎手はさえない表情。「どういう感じで出て行けばいいんですかねえ」と、戸惑いを見せていたが、それでも下村騎手の意識がはっきりしていて、地元への連絡などもしてあると確認できたことで、すこし気持ちが落ち着いたようだった。下村騎手の件については、表彰式でもファンに伝えられた。
騎手は常に危険と隣り合わせの職業ではあるのだが、それにしても最終的に2名を欠くことになってしまったのは残念だった。それでも女性騎手、そして交流競走に騎乗する機会が少ない若手騎手にとっては、普段と違う雰囲気、展開のレースを経験できる貴重な舞台。主催者側としては来年も継続したい意向があるとのことで、ケガをしてしまった岩永騎手、下村騎手の快復を祈りつつ、次回の競演を楽しみにしたい。
取材・文:浅野靖典
写真:桂伸也(いちかんぽ)
写真:桂伸也(いちかんぽ)
小松丈二騎手
(佐賀)
石川慎将騎手
(佐賀)
木之前葵騎手
(愛知)
別府真衣騎手
(高知)