第1戦 |
第2戦 |
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2戦ともスローペースの逃げ切り
名古屋ステージは別府騎手が優勝
3月3日、川崎競馬場では、デビュー戦を迎えるJRA所属の新人、藤田菜七子騎手を目当てに7000人以上のファンが入り、たくさんの報道陣が押し寄せた。翌4日、名古屋競馬場では、地方競馬で活躍中の女性騎手が全員(ばんえいは除く)集まり、東海・北陸の若手騎手と団体戦で争う『レディス&ヤングジョッキーズ』が開催された。
第7レース後にオープニングセレモニーが行われたが、その開始を待つファンの熱気はなかなかのもので、前日の川崎競馬場に劣らないと思えるほど。セレモニー後はサインを求めるファンの手が伸び続けていた。
このイベントは昨年に続いて2回目の開催。昨年は1月29日(木)に行われた。筆者は昨年も現地で観戦したのだが、ウイナーズサークルを囲むファンの数は、明らかに今年のほうが多かった。そして今年は昨年よりもスケールアップ。以前から実施されていた佐賀競馬場の『なでしこチャレンジカップ』と連携し、2ステージで行われることになった。
ちなみに昨年の名古屋では、第1戦(1400メートル)が単勝5番人気、6番人気、9番人気の順で入線して大波乱。続く第2戦(1600メートル)は7番人気馬が差し切り勝ち。こういったジョッキー対抗戦では、ハイペースになって伏兵が台頭しがちというのは以前からある傾向なのだが、今回は少し様相が違った。
1400メートルの第1戦は、5番人気までが10倍を切る単勝オッズ。差し馬が多いメンバー構成ではあったが、スタート後に先手を取りに行ったのは、3走前に逃げて2着に残った、鈴木麻優騎手(岩手)のマッシヴビクトリー。1コーナーの入口あたりで単騎逃げの態勢を固めたが、そのペースは見た目にも遅いものだった。
直後の2番手を進んだ村上弘樹騎手(愛知)はそのままの位置をキープ。3番手以降も特に動きがないまま3コーナーを迎えたが、各馬の位置取りはほとんど変わらず。そこからペースが上がっても、前半の貯金をいかして鈴木騎手が逃げ切った。
2着には村上騎手が残り、3着は後方から八木直也騎手(愛知)が食い込んできたが、その勝ち時計は1分33秒3。B級のレースでも、同じ日のC級戦より2秒ほど遅いというレース内容は、各騎手が手探りのなかでの先手必勝が功を奏したという印象だった。
「最初から逃げようと思っていました。勝てたのは、この日の第4レースに乗せてもらえたおかげですね(7番人気馬で逃げて3着)。あれがなかったら、勝負どころで焦っていたと思います」
鈴木騎手は昨年の名古屋でも3着、1着の成績で優勝しており、こういう舞台で力を発揮するタイプなのかもしれない。
続く第2戦は1800メートル。レースを前にして、下村瑠衣騎手(高知)は「この距離は久しぶりです」とつぶやいていた。高知ではコーナー6回のレースが年に数えるほどしかない。そういう点は他場の騎手より不利といえるが、下村騎手は中団追走から最後の脚を伸ばして、7番人気馬を4着にまで導いた。
そのはるか前でゴールしたのが、1番人気のゲスワットに騎乗した別府真衣騎手(高知)。「第1戦の逃げ切りを見習って乗りましたよ」と、会心の笑顔。2着には好位から中島龍也騎手(金沢)が流れ込み、3着には後方から木之前葵騎手(愛知)が食い込んだというレースは、第1戦と同じような展開だった。2戦とも勝ち馬が逃げ切りというのは、騎手対抗戦ではあまり例がないかもしれない。
この結果、個人戦は8着、1着の別府騎手と、5着、2着の中島騎手が23ポイントで同点。規定により、第2戦で先着した別府騎手が名古屋ステージ優勝となった。第1戦を制した鈴木騎手は、第2戦が10着で第3位。
そして団体戦は、2戦の合計ポイントが83となったレディスチームがヤングチームに10ポイント差をつけてリード。この団体戦のポイントは、佐賀競馬場での第2ステージ(3月12日)に引き継がれる。
第1戦、第2戦のレース後は、検量室のパトロールビデオを見ながら、各騎手が大声で笑いあいながらレースぶりを振り返っていた。それはベテランの先輩騎手が誰もいないからこそ、という風景。『レディースジョッキーズシリーズ』が休止され、それを補うという形で実施されているイベントではあるが、ヤングジョッキーズにとっても同世代だけで乗れるレースが面白いと感じているようだった。
取材・文:浅野靖典
写真:岡田友貴(いちかんぽ)
写真:岡田友貴(いちかんぽ)
別府真衣騎手
(高知)
中島龍也騎手
(金沢)
鈴木麻優騎手
(岩手)