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2016年3月2日(水) 川崎競馬場2100m

着差以上の完勝で連覇達成
目指すは牡馬相手のジーワン

 2月18日に川崎競馬場3号スタンド跡地にオープンした『マーケットスクエア川崎イースト』。ここは日本で最も競馬場のコースに近い大型複合商業施設で、建物のわずか数メートル先を競走馬が駆けていくシーンや、コース全体が一望できる観戦場所が設けられている。買い物客が何気なく競馬に興味を持つきっかけ作りとしては最高な場所と言えるだろう。
 そんな全国的にも注目を集めている川崎競馬場で実施された牝馬によるエンプレス杯JpnⅡは、62回目を迎えた伝統の一戦。今年は10頭と少頭数でメンバーも小粒の印象は拭えなかったが、昨年の覇者アムールブリエの格は断然上で、単勝1.1倍の1番人気に支持された。
 結果的にもアムールブリエが危なげない勝ちっぷりで、「着差以上に強かったです」と、久しぶりにコンビを組んだ武豊騎手も顔がほころんだ。
 レースは、ティンバレスがハナを切ってゆったりしたペースを作っていき、アムールブリエは2番手を追走、その直後にヴィータアレグリアが続いた。先団の隊列にいたこの3頭が、結果的には上位を独占することになる。
 「あまりダッシュのいい馬ではないのですが、ある程度前にいたかったので、最初のコーナーまではハナを切ってもいいくらいの気持ちで行きました。非常に乗りやすい馬でいいポジションは取れたなと思っていて、あとは前後を気にしながら乗りました」(武騎手)
 2周目の3~4コーナーで逃げるティンバレスにアムールブリエが並びかけていき、最後の直線半ほどで完全に抜き去った。「手応えもすごく良かったし、4コーナーはとてもいい感じで回ることができたので、これなら大丈夫だろうなと」(武騎手)。 一番重い56キロの斤量を背負いながらも、最後は2着に脚を伸ばしてきたヴィータアレグリアに1馬身差をつける貫録勝ちだった。タイムは2100メートル2分18秒1(良)。3着には逃げ粘っていたティンバレスが入った。
 これまでのダートグレードレースでも高いレベルで走り続けてきたアムールブリエの意地とプライドが勝った結果と言えるだろう。昨年のエンプレス杯JpnⅡを皮切りに、ブリーダーズゴールカップJpnⅢ 、名古屋グランプリJpnⅡに続いて、ダートの長距離戦で4つ目のタイトルを奪取。「関東オークス(3着)以来久しぶりに乗りましたが、ずいぶん馬がしっかりして力強くなっているなぁと思いました」(武騎手)。5歳牝馬のさらなる成長が楽しみだ。
 この後は帝王賞JpnⅠや今年川崎で行われるJBC競走にもチャレンジしていきたいそうで、これからのダートグレード戦線においてどんな存在感を示していくのか興味深い。
 地方勢の最先着は6着で、関東オークスJpnⅡ・3着の実績があるトーセンマリオンが入った。地元の南関東から参戦したのはたった2頭で寂しい限り。昨今のダートグレード戦線はこうした状況も少なくなく、何とか現状を打破して欲しいのだが……。
武豊騎手
どの新聞を見ても◎だったので、負けたら大変だと思っていたので、勝ててホッとしています。ダートは安定して走ってくれますし、牝馬ならトップレベルだと思います。前走の川崎記念も上位にきていたし、牡馬ともやれると思います。明日の(川崎でデビューする)藤田菜七子ちゃんもよろしくお願いします(笑)。
松永幹夫調教師
実績はすごくあるんですが、競馬は何が起きるかわからないのであまり油断はできないなと思っていました。比較的調子の波がない馬で、最近はちゃんと力を出してくれて昔のような惨敗がありませんね。まだまだ馬は若いし、もっと力をつけて、男馬に負けないくらいの競馬ができるように頑張って欲しいです。

取材・文:高橋華代子
写真:宮原政典(いちかんぽ)