好位につけて早々と勝利を確信
ついに掴んだ2歳JpnⅠのタイトル
2歳ダートチャンピオン決定戦・全日本2歳優駿JpnⅠ。非常に寒い一日で、低気圧の影響から関東沿岸部にも降雪があるかもしれないという予報もあったが、川崎競馬場は後半のレースから冷たい雨が降りしきった。今年デビューしたばかりの若駒たちに試練を与えるかのような過酷な条件にも感じられたが、強い馬というのはどんな状況下に置かれても力をしっかり発揮するものだということを改めて証明してくれたように思う。北海道2歳優駿JpnⅢの覇者で、ホッカイドウ競馬から参戦したハッピースプリントが1番人気に応えて堂々たるパフォーマンスを披露。「僕の乗り役人生で一番走る馬だと思ってここに来ました。今後こういう馬にはなかなか巡り会えないと思います」と鞍上の宮崎光行騎手。
スタート前、ナイトバロンがゲート内で立ち上がるアクシデントがあり、馬体故障のために残念ながら競走除外に。全馬がゲートからいったん外に出され、ハッピースプリントもその直後は落ち着き過ぎた様子も見受けられたそうだが、またゲート裏に戻るとグッと気合を乗せて気持ちを切り替えていたという。
レースは、スザクとニシケンモノノフが先行していき、ハッピースプリントは気合をつけられながらその後ろ、3番手から進めていった。「小回りなのでいい位置につけようとは思っていました。1コーナーであの位置につけられたところで、あとは馬の力を信用すれば、能力で勝てると確信していました」(宮崎騎手)。
3~4コーナーでスザクが後続を引き離そうとしたところで、すかさずハッピースプリントも反応して上がっていくと、最後の直線ではハッピースプリントが楽な手応えで抜き去り、スザクに1馬身半差をつけての完勝となった。勝ちタイムの1分40秒4(稍重)は、4年前に優勝したラブミーチャン(1分40秒0)に次ぐタイム(中央との交流になった97年以降)。2歳王国北海道勢にとっては是が非でも獲りたかった2歳チャンピオンの称号だったと言えるだろう。
「北海道ではこの馬に併せられる馬がいません。物事に動じないし、古馬よりおとなしくてドシッとしているので、いつも通りの調教ができて、いつも通りのレースをしてくれて本当に偉い馬です。これまで味わったことのない感覚の2歳馬で、相当な馬ですね」(田中淳司調教師)。
レース前から、今回の勝ち方次第では来年のUAEダービーに挑戦したいという思いを抱いていたそうで、レース後には田中調教師自身の口から、それが改めて語られた。「オーナーさんあっての僕らだし、オーナーさんの考えはまだわからないですが、僕自身は挑戦してみたいと思っています。この仕事をしていく上で、日本一になって世界に挑戦してみたい。そういう部分でJRAさんと差があるし、地方競馬の僕らでも(世界に)挑戦できるところを見せたいです」(田中調教師)。
関係者をこれほどまでに惚れ込ませているハッピースプリントに、今後どんな未来が待っているのだろうか。どんな記録と記憶を刻んでいくのだろうか。夢は無限大だ。
宮崎光行騎手
追い切りとレース前に4、5日乗せてもらいましたが、北海道にいた頃よりも状態は良かったと思います。操縦しやすいし言うことを聞いてくれて、2歳の時点でこんなに乗りやすい馬は初めてです。まだ調教でも七分程度ですが、これからパワーアップして力がついていけばもっとすごい馬になると思います。
田中淳司調教師
(門別競馬場にできた)坂路の効果もあると思います。同じような調教場ができればJRAにも立ち向かっていけるのが実証できました。GⅠ(JpnⅠ)という称号は夢だったので、それをクリアできて最高ですね。北海道の2歳は強いと言われながらもなかなかGⅠ(JpnⅠ)を勝てなかったので、これ以上にないくらい感激しています。