レースハイライト タイトル
dirt
2013年11月28日(木) 園田競馬場 1400m

次を見据えたレース運びで完勝
JpnⅠタイトルに確かな手ごたえ

 近年、地方で行われるダートグレードは中央・地方間の実力差が大きく、残念ながら人気が完全に二分されてしまうようなことも少なくない。それでも2歳戦ともなると地方にも期待馬や有力馬がいて、今回の地方勢にも重賞勝ち馬が3頭、いずれもまだ底を見せていないという成績を残している。
 しかしながらやはり人気の中心となったのは中央勢。1番人気はスザクで1.8倍だが、ニシケンモノノフも1.9倍と人気を分け合い、2頭の馬連複は1.3倍。地方勢の期待馬は、デビューから一方的な内容ばかりで7連勝という名古屋のリーダーズボード。前走ゴールドウィング賞も8馬身差の圧勝で、タイム的にも近年の勝ち馬に比べて出色のもの。2頭とはやや離れたものの、3番人気の支持を受けた。
 ダッシュよく飛び出したのはリーダーズボードだが、内からシゲルカガがハナを主張し、リーダーズボードは抑えて2番手から。スザク、ニシケンモノノフが続き、人気3頭が好位でお互いの様子をうかがった。
 やや掛かり気味に逃げたシゲルカガのペースは緩みのないもの。3コーナーあたりから仕掛けたリーダーズボードが4コーナーで外から並びかけ、直線を向いて一旦は先頭に立とうかという場面もあった。しかしこれを並ぶ間もなく交わし去ったのがニシシケンモノノフで、中団追走からロングスパートで追ってきたマキャヴィティをしりぞけての勝利。着差は半馬身だったが、完勝といえる内容。リーダーズボードは1馬身半差で3着。スザクは3コーナー過ぎから手応えが一杯になり6着に沈んだ。
 まずは地方最先着の3着に入ったリーダーズボードに触れておきたい。「4コーナーで外から(他の馬が)来る気配がなかったときは、夢を見ましたよ。最後に来られちゃいましたね」と戸部尚実騎手。それでも、「中央相手によくやりました」とは川西毅調教師。少しの悔しさもあり、それでも今後への期待という満足の表情も見られた。
 勝ったニシケンモノノフは、ホッカイドウ競馬でデビューし、1200メートルの重賞イノセントカップをレコード勝ちして中央入り。管理する領家政藏調教師は、この12月に70歳を迎え、来年2月での定年が決まっている。それゆえ、最後にGⅠ(JpnⅠ)を勝たせようと親しい馬主さんたちが有力馬を集めている。ニシケンモノノフもその1頭だ。
 「ハナに立つ競馬もできると思っていたんですが、次が1600メートルなので、今日そういう競馬をすると、次に距離がもたなくなる可能性もあったので、折り合いをつけて最後に脚を伸ばしたいと思っていました。今日は勝つことも重要なテーマでしたけど、いかに次に向けていい内容で勝てるかということをこの馬には求めていたので、よくそれにこたえてくれました」という福永祐一騎手の言葉からもその意気込みが伝わってくる。「次の1600メートル」とは、もちろんJpnⅠの全日本2歳優駿だ。
 領家厩舎には、同じくホッカイドウ競馬から鎌倉記念(川崎)を制したニシノデンジャラスもすでに転厩。こちらは朝日杯フューチュリティステークスを目指すとのこと。
 来年2月までに行われるGⅠ/JpnⅠはもういくつもない。関係者は、「最後に大輪の花を」と、一丸となって必勝態勢だ。

福永祐一騎手
メイショウボーラーの仔で、乗った感触もよかったし、門別でレコードを出しているくらいスピードを持っている馬だったので、どのくらい走ってくれるか期待していましたが、期待以上の走りで、強い内容でした。領家先生が来春で定年なので、最後にジーワンをこの馬で、という思いもありました。
領家政藏調教師
(福永騎手には)前回も乗ってもらっているので、同じように3番手あたりからとは思っていました。2コーナーあたりまで掛かり気味でしたが、下げたら落ち着いてくれました。仕掛けが早いかと思ったんですが、しっかり伸びてくれました。距離的には1600メートルまでかなと思います。

リーダーズボード(左から2頭目)は好位追走から3着と健闘した

取材・文:斎藤修
写真:宮原政典(いちかんぽ)