佐賀から挑戦する全国区
2度目の笠松でタイトル奪取
昨年から優勝賞金が大幅にアップして、文字通り、笠松競馬における最高峰のレースになった笠松グランプリ。昨年はエーシンクールディとラブミーチャンの対決に場内は大いに沸いたが、笠松が誇るその2頭は引退。地元ファンにとっては、新たなスターが誕生してほしいところ。そこにJRAのオープンクラスからエーシンジェイワンが移籍して、このレースに臨んできた。昨年の笠松グランプリ、そして今年2月28日に行われたオッズパークグランプリの1、2着馬は、全国レベルで実績を残していた馬。しかし今回の遠征馬5頭の近走成績をみると、そこまでのものとはいいがたい。となれば、地元所属のエーシンジェイワンに期待が集まるのは無理からぬところで、単勝オッズは最終的に1.3倍までになった。
そのエーシンジェイワンは装鞍所から2人曳きで、パドックでは他馬と一緒に歩かずに待機所でじっとしていた。初めての笠松での実戦ということも含めて、陣営はそれを作戦としたのかもしれない。しかし今回は、JRA在籍時と同じような逃げ戦法はとれなかった。
最内枠を得た佐賀のエスワンプリンスがダッシュ力を効かせて先頭に立ち、2番手には大外枠から気合をつけた川崎のナターレが続いていく。エーシンジェイワンはそこから少し離れた3番手を追走。向正面でも隊列の並びはあまり変わらないまま進み、3コーナー手前でナターレ鞍上の吉原寛人騎手が、エスワンプリンスを負かしにかかった。
しかしエスワンプリンスはそこで再び加速すると、先頭をキープしたままゴール。2着争いはきわどくなったが、ナターレがわずかに粘り切った。エーシンジェイワンは3番手から差を詰められず、ゴール前では猛追してきた船橋のコアレスピューマ、兵庫のエプソムアーロンに交わされ5着という結果になった。
エスワンプリンスの勝ちタイム1分24秒5は、レコードに0.2秒差という速いもの。ただ、その道中には着順のカギとなる展開があったらしい。鮫島克也騎手は「コーナーになると外に行こうとしていて。オッズパークグランプリのときがそうだったんで、気をつけていたんですが」と語り、ナターレの吉原騎手は「逃げられれば粘れると思っていたんですが、前の馬(エスワンプリンス)が外に張ってきたので行けなくて……」と、悔しそうにレース内容を振り返っていた。
逆にその状況を味方につけたのが、3着に入ったコアレスピューマ鞍上の向山牧騎手。「内がずっとガラ開きなんだもの。そりゃ行くしかないでしょう」。4着とはクビ差だったが、それはまさにコース取りの差だったといえそうだ。
とはいえ4着までが遠征馬という結果は、地元ファンにとっては残念に感じるところだろう。もちろん、笠松競馬に携わるホースマンたちも。3カ月後には同じ笠松の同じ距離で、再び地方全国交流の大舞台、オッズパークグランプリが実施される。『名馬、名手の里』から、また全国レベルで戦える優駿が登場してくるだろうか。3カ月後の捲土重来に期待したい。
鮫島克也騎手
逃げられたら逃げようという作戦でしたが、3着だったオッズパークグランプリよりも速い時計を出したいとは思っていました。それでこういう走りができたのですから、馬自身が強くなったんだなと感じます。今後の選択肢も広がりましたね。これからも強い相手と戦って、力をつけてほしいと思います。
手島勝利調教師
オッズパークグランプリではどれだけ差せるかという競馬をしましたが、今回は逃げたいと思っていました。ただ、輸送距離が他の馬より長いので、そこは心配でしたね。それでも結果を出せたので、佐賀記念に行くべきかなとは思うんですが、またオッズパークグランプリかなあという気もしています。