レースハイライト タイトル
dirt
2013年11月7日(木) 門別競馬場 1800m

坂路で鍛えられ中央勢を一蹴
目指すは2歳JpnⅠのタイトル

 昨年の4月、門別競馬場に新設された屋内坂路コース。全長900メートル、幅員10メートル、最大斜度5.5%という調教施設は、浦河町のBTC(軽種馬育成調教センター)や、外厩(認定厩舎)として利用されている民間の育成牧場の坂路コースとも肩を並べるもの。周回コースと平行してより多彩な調教が行えるだけでなく、雪などで馬場の使用が困難となる冬期間でも、滞りなく調教を行えるようになった。
 この屋内坂路コースでの調教を入厩当初から行ったのがハッピースプリントである。オーナーで、そして生産者でもある辻牧場は、「ホッカイドウ競馬から中央馬を倒せるような強い馬を送り出したい」との思いで、牧場の期待馬でもあったハッピースプリントを田中淳司厩舎へと入厩。前年から坂路を利用していた田中調教師もまた、そこで培ったノウハウをハッピースプリントに注ぎ込んだ。
 この北海道2歳優駿JpnⅢまで5戦3勝で臨んだハッピースプリントであるが、負けた2戦はJRA北海道シリーズで行われた芝のレースであり、後方からのレースとなりながらも上がり3ハロンでメンバー中最速を計時した函館2歳ステークスのように、芝でも通用するスピード能力も持ち合わせていることを証明していた。
 そして圧巻だったのは前走のサンライズカップ。スタートのタイミングが合わずに、最後方からのレースを余儀なくされたものの、そこからまくり気味に順位を上げていくと、一気に馬群を飲み込んで2馬身半差の優勝。先行馬たちが上位を占めていた馬場状態からしても、まさに桁違いと言っていい強さを見せつけた。
 この北海道2歳優駿JpnⅢでも、4頭の中央勢を差し置いて、単勝1.5倍という圧倒的な1番人気を集めたのはハッピースプリント。前走の出遅れもあって注目のスタートとなったが、スムーズにゲートを出ると、密集した馬群の中団よりやや後方に待機。最内を引いたアースコネクターがレースを引っ張って行く中、ハッピースプリントは残り1000メートル過ぎで外に進路を向けると、距離ロスは問題としないかのようにじわじわとポジションを上げていった。
 4コーナーを過ぎたあたりでは、まくり上げるかのように逃げるアースコネクターを交わすと、さらに加速を続けながら先頭でゴール。2着には2馬身差で逃げたアースコネクターが粘り込み、内を突いて3着に入ったエイシンホクトセイはそこから4馬身差。中央勢を相手にしようとも、ハッピースプリントの強さは揺るがなかった。
 ホッカイドウ競馬勢としては3年ぶりとなるこの重賞勝利を、ひとえに坂路効果という言葉で片付けることはできないかもしれない。だが今後も高い能力を持った馬が入厩し、様々な経験を重ねてきた優れたスタッフが育て、そして坂路を中心とした恵まれた施設で調教が行えるのなら、中央勢や優れた成績を残している外厩馬たちと互角以上の活躍ができるということを、ハッピースプリントが証明してくれた気がする。
 今後、ハッピースプリントは全日本2歳優駿JpnⅠを目指し、門別競馬場で調教が行われていく。来週には日高でも初雪が降ると言われているが、雪の影響や馬場の変化は問題としない屋内坂路コース。ハッピースプリントもまた、万全の状態で出走してくれるに違いない。
宮崎光行騎手
この馬の能力を信じて騎乗しました。前走は出遅れもありましたが、今回はスタートも良く、中団で競馬もできたので、あとはどこで仕掛けようかと考えるだけでした。2歳馬離れしたパワーを含め、ずば抜けた能力を持っている馬。それでもまだまだ良くなる可能性も秘めています。
田中淳司調教師
今回は中央馬が相手ということもあり、古馬の胸を借りてしっかりと調教を行ってきました。普通に走ってくれればいい結果が出せると信じていましたが、改めて能力の高さを証明できたと思います。全日本2歳優駿に向けて左回りのトレーニングも重ねていますし、いい結果を残したいです。


取材・文:村本浩平
写真:岡田友貴(いちかんぽ)