初めての逃げも安定した強さ
タイトルを重ね夢はドバイへ
今年のJBCクラシックJpnⅠは、前日に京都で行われたみやこステークスGⅢとややメンバーが分散することになったが、それでも中央勢はこの路線の実績馬が集結し、GⅠ/JpnⅠ勝ち馬4頭が単勝一桁台。中でもホッコータルマエは前走マイルチャンピオンシップ南部杯JpnⅠで2着に敗れ連勝が途切れたにもかかわらず、ファンは単勝1.4倍という断然人気に支持した。昨年あたりまでとダート中長距離路線のレースが明らかに変わってきているのは、中央の有力馬に典型的な逃げ馬がいないということ。今回も、さてどれが逃げるのだろうというメンバーで、逃げ馬といえるのは名古屋のサイモンロードくらいだった。
ゲートの出がよかったのはワンダーアキュートだが、ダッシュよく飛び出して行ったのはやはりサイモンロード。しかし意外にもホッコータルマエが最初の3コーナーまでにハナを取りきった。1番枠で内で包まれるのを嫌ったのかもしれない。
隊列が決まったところでペースが落ちついた。いや、落ち着きすぎたというべきか。同じ舞台で毎年行われている白山大賞典JpnⅢが、近年は中央馬と地方馬の実力差が開いてしまったこともあり、縦長となって前に中央馬、離れて後ろが地方馬という展開もめずらしくないが、今回は1周目のスタンド前で全馬がひとかたまり。ジャパンダートダービーJpnⅠを制して以来4カ月ぶりのクリソライトは馬群の中で行きたがって鞍上を手こずらせていた。緩みのないペースだと追走に苦労することがあるハタノヴァンクールも口を割って行きたがるような場面があった。
どの馬がどこで仕掛けてくるのかという展開だが、2コーナーを回ったあたりからホッコータルマエの幸英明騎手が徐々にペースアップ。向正面でサイモンロードが後退すると、3番手を追走していたワンダーアキュートが仕掛けていき、3~4コーナーではホッコータルマエに1馬身ほどの差にまで迫った。
しかし直線に入るとホッコータルマエが再び突き放しにかかり、後続を寄せつけず完勝。2馬身と差が開いたワンダーアキュートに、ゴール前でソリタリーキングが迫ったがハナ差及ばず3着だった。
タイムの出やすい不良馬場だったとはいえ、前半スローに流れたわりにコースレコードでの決着となったのは、後半一気にペースアップしたからだろう。ホッコータルマエが逃げ切った上り3ハロンは37秒0。ワンダーアキュートも同じ37秒0だから、向正面での差を詰められなかったことが数字でもわかる。上り最速はソリタリーキングで36秒8。近年の白山大賞典JpnⅢで上り最速だったのが昨年のニホンピロアワーズの37秒5というものゆえ、さすがにこのタイムで上がられたのでは後続勢は追いつけない。後続の末脚を封じるホッコータルマエの幸騎手による完璧な騎乗だった。
2着のワンダーアキュートは今回の馬体重がプラス17キロの519キロ。前走で12キロ減っていたぶんを戻したと言えなくもないが、馬体が完成したと思われる4歳以降、勝った時の馬体重は500キロ台前半から510キロ。武豊騎手は「枠順が逆なら違う競馬になっていたかも」と。たしかに3番枠に入った帝王賞JpnⅠでは逃げの手に出て、外枠に入った日本テレビ盃JpnⅡでは内のソリタリーキングを行かせて2番手から。逃げ馬不在のこのメンバーでは、展開は枠順によるところが大きいようだ。
3着から大差がついたとはいえ、地元のジャングルスマイルが地方最先着の4着と健闘。クリソライトは掛かりまくったことがすべてで5着。スローに流れて好位を追走できればチャンスはあったはずのハタノヴァンクールだが、3コーナーあたりからずるずると後退。四位洋文騎手によると「3コーナー手前でガクガクっときた」という。レース直後にはその程度はわからなかったものの、どうやら脚元に異常があったようだ。
「来年はドバイに挑戦したいという夢を持っています」とは、勝ったホッコータルマエの西浦勝一調教師。まだ4歳だが、いよいよ安定した強さを発揮するようになった。次走に予定しているというジャパンカップダートGⅠで、あらためてその力が試される。
幸英明騎手
もしかしたら逃げることもあるのかなとは思っていましたが、逃げたことがなかったので、それがどう出るかちょっと不安はあって乗っていました。それでも向正面半ばくらいでハミをとってくれて、行けるんじゃないかと思いました。これから負けられない立場になってきたなというプレッシャーも感じています。
西浦勝一調教師
前回負けて、なんとかここはと思っていたので、勝ててホッとしました。逃げたのは意外でしたが、幸君の判断でああいうレースをしてくれたので、間違いないと思って安心して見ていました。どこの競馬場に行っても対応してくれるので、すごく賢い馬だと思っています。
スタンド前では大歓声が上がった
地方最先着は地元金沢のジャングルスマイル(4着)
取材・文:斎藤修
写真:いちかんぽ(国分智・宮原政典)、NAR
写真:いちかんぽ(国分智・宮原政典)、NAR
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(YouTube地方競馬チャンネル内)