JBCを睨んだ好メンバーが集結
マイペースに持ち込み後続を完封
「JBC開催まで残り27日となりました」。メインレースを前に場内に伝えられた実況アナウンスを聞き、ビッグレースがすぐそこまで迫っていることを実感した。毎年、金沢競馬の年に一度の交流重賞としてファンが楽しみにしている白山大賞典JpnⅢだが、今年はその意味合いがやや異なる。11月4日に同じ舞台で争われるJBCクラシックJpnIの前哨戦という重要な位置付けにあるからだ。それは出走馬のレベルにも表れ、JRAから参戦した5頭すべてが重賞勝ち馬という実績のあるメンバーが揃った。人気はその中の4頭に集中し、最終的な1番人気は、2011年にこのレースを優勝したシビルウォーが単勝2.3倍。JpnI・2勝で別定60キロを背負ったハタノヴァンクールが単勝2.9倍と2番人気で続いた。
今年の地元金沢の大将格は、JRAからの転入後5戦全勝、重賞3連勝中のサミットストーンだ。白山大賞典JpnⅢはこれまでも金沢所属馬の健闘が目立ってきたレースでもあり、地元ファンに期待されたサミットストーンと吉原寛人騎手には、パドックから大きな声援が送られていた。
ゲートが開くと、好ダッシュから先頭に立ったのはエーシンモアオバーだ。フリートストリートが2番手でそれをマークし、サミットストーンが押しながら3番手につけた。シビルウォーやハタノヴァンクールは先行勢を見ながらという位置取りでレースが始まった。
1周目スタンド前でシビルウォーが早くも動き、大外から4番手まで押し上げたが、エーシンモアオバーのマイペースは変わらず向正面へ。そして再びシビルウォーが仕かけると今度はハタノヴァンクールも一緒に動き出した。ペースが上がり3コーナー手前でサミットストーンが後退。最後はエーシンモアオバー、ハタノヴァンクール、シビルウォー、この3頭の見応えのある追い比べとなったが、とうとう最後までエーシンモアオバーが先頭を譲らないままゴール。半馬身差の2着にハタノヴァンクール、ハナ差でシビルウォーが3着という結果となった。
レース後、「逃げ馬のペースにやられてしまった」と何人かの騎手が口にしていたが、エーシンモアオバーに騎乗した岩田康誠騎手も「これで差されたら仕方がない」と語るほど絶妙なペース配分での逃げ切りだった。
「この馬の持ち味を出せるのはこのレースしかない」(沖芳夫調教師)という陣営の狙いが見事にはまり、昨年の名古屋グランプリJpnⅡに続いて2つ目のタイトルを手にした。この後はJBCか、昨年同様浦和記念JpnⅡに向かうことになりそうだ。
2着に敗れたハタノヴァンクールの四位洋文騎手は、「スタートダッシュも良くなかったし、最後に交わせなかったのはやはり斤量の影響があると思う。でも道中砂をかぶせたりして、次に繋がるレースはできました。悔しいけど、納得はしています」と振り返った。強力なライバルが揃うJBCクラシックJpnIへ向けて、本番と同じコースを経験できたことは大きなプラスになるだろう。
そして、地元の期待を背負ったサミットストーンは地方馬最先着の5着に入った。吉原騎手は、「やはり中央馬との差は痛感したが、JBCでは作戦を練って見せ場を作りたいですね!」と意気込みを語った。加藤和義調教師の話では、JBCスプリントJpnIのほうに出走する予定とのことだ。
さて、白山大賞典JpnⅢが終わった金沢競馬場では、いよいよ本格的にJBCへのカウントダウンが始まる。
岩田康誠騎手
今回もいつものこの馬の形で逃げようと思っていました。ちょっとペースを上げて他の馬に脚を使わせる作戦が思ったようにはまりましたね。後続の脚音も聞こえてきましたが、なんとか押し切ってくれました。よく最後までもってくれたと思います。スタートが早くて先行ができるし、素直で乗りやすい馬です。
沖芳夫調教師
メンバーも揃っていたし、函館でも盛岡でも負けて馬がいたので正直厳しいと思っていましたが、嬉しいです。こうやってハナでがんばってくれると結果がついてきますね。昨年から賞金を稼いだおかげでジーツー、ジースリーなら胸を張って出られるようになりました。平坦小回りコースが合うんですよね。