手ごたえ十分に抜け出し後続を完封
目標はJBC連覇、そして再び世界へ
東京盃JpnⅡ連覇が期待されたラブミーチャンは疲れが抜けず残念ながら回避。代わりというわけでもないが、地方馬で期待されたのは川崎のハードデイズナイトだった。3歳馬同士の優駿スプリント、さらに古馬相手のアフター5スター賞まで4連勝。ひとつひとつステップアップしての連勝で、単勝5.5倍、4番人気の支持を受けた。しかしJBCスプリントJpnIを目指そうという中央一線級の壁は厚かった。ハナを奪ったたオーセロワが後退すると、好ダッシュから直後を追走していたハードデイズナイト、そして単勝2.2倍で1番人気のタイセイレジェンドが並んだまま、4コーナーで先頭へ。そのまま2頭の一騎打ちになるかにも思えたが、やはりその流れは厳しいもので、ハードデイズナイトは直線半ばで後退。タイセイレジェンドが余裕の手ごたえのまま単独で先頭に立った。レースを見ていた矢作芳人調教師は、「(先頭に立つのが)早いよ、大丈夫かな」と思ったという。しかしタイセイレジェンドはそんな心配をよそに、後続を寄せつけないまま先頭でゴールを駆け抜けた。
混戦の2着争いは、スタートいまいちもラチ沿いを通って徐々に位置どりを上げてきていたテスタマッタが抜け出した。近走、中距離では折り合いが課題だったが、1400メートルのさきたま杯JpnⅡを勝った時のように、流れの速い短距離のほうがむしろスムーズに追走できる。しかし勝ったタイセイレジェンドからは3馬身半も離されていた。半馬身差でアドマイヤサガス、ハナ差でティアップワイルドと続き、地方最先着は今回も後方から追い込んできたアイディンパワーでアタマ差5着。ハードデイズナイトは8着だった。
勝ったタイセイレジェンドは、ドバイ帰りの休み明けとなったクラスターカップJpnⅢ、そしてオーバルスプリントJpnⅢと、ともに僅差の2着に敗れていた。しかし両レースともに別定59キロを背負っての結果だけに、陣営にはあまり落胆の様子はかった。そして今回は「この1キロ減は大きいです」(内田博幸騎手)という58キロ。さらに中央の他の有力馬との斤量差も縮まり、きっちり結果を出して見せた。
内田騎手は大井から中央に移籍し、地方でも中央でもリーディングを獲った。矢作調教師は大井で調教師として活躍した父を見て育ち、中央で調教師になった。昨年このコンビで、川崎で行われたJBCスプリントJpnIを制した時、内田騎手は「川崎で、南関東出身のコンビで……」とコメントしていた。しかし今回、「大井出身のコンビで、初めて地元の大井で、重賞を勝ててほんとうによかったです」という言葉にはより一層感情がこもっていた。
タイセイレジェンドの次走はもちろん連覇がかかるJBCスプリントJpnIとなるが、矢作調教師はさらに続けた。「今年ドバイで悔しい思いをしたので、来年もできれば行きたいと思っています。そのためには次のJBCを勝つことが必須条件だと思っています」。人も、馬も、地方競馬から世界の頂点を目指せる時代になった。
内田博幸騎手
1番人気に推されていたので、勝ててホッとしています。少し馬場が軽くなったという不安はあったんですけど、前回より1キロ軽い58キロで、馬を信じて乗りました。ある程度先行グループに取りついて、早め早めに行きたいと思っていたんですけど、うまくいきました。
矢作芳人調教師
やっと大井で重賞を勝つことができて、感無量なものがあります。ちょうどこのシーズン、10月、11月に調子が上がる馬なので、状態には自信もありましたし、1キロ軽くなったことで、いい競馬をしてくれるんじゃないかという期待感もありました。もちろん連覇を狙って金沢に向かいたいと思います。