好ダッシュも控えて3番手から
直線迫る中央勢を振り切り完勝
6歳になり、今シーズン限りで引退とされるラブミーチャンの走りがますます安定している。今年に入ってから負けたのは黒船賞JpnⅢでの6着のみ。東京スプリントJpnⅢではセイクリムズン以下、ダート短距離路線の実績馬をしりぞけ、スーパースプリントシリーズでは、盤石の競馬で名古屋でら馬スプリントからファイナルの習志野きらっとスプリントを3連覇。そして今回、牝馬としては決して楽ではない別定55キロにもかかわらず1番人気に支持されたラブミーチャンは、その期待にこたえて見せた。13番枠のラブミーチャンは、スタートこそ互角だったがダッシュ力の違いですぐに単独で先頭へ。それにしても東京スプリントJpnⅢ以来2度目の騎乗となった戸崎圭太騎手は落ち着いていた。内から行く気を見せたドスライス、タイセイレジェンドを行かせて好位の3番手に控えた。そのうしろ、4番手集団を追走してきたのも中央馬で、直線を向くと、ラブミーチャンと中央5頭の争いとなった。
一昨年このレースに出走したときのラブミーチャンは直線の坂で失速したが、今回は違っていた。じっくりと脚を溜め、残り200メートルの坂下で戸崎騎手に追い出されると、中央勢に迫られはしたものの、ゴール前ではもうひと伸びを見せて先頭でゴールを駆け抜けた。
ラブミーチャンが抜け出しているのはわかったが、3頭横並びとなった2着争いは、ドバイ遠征以来の復帰戦で59キロを背負ったタイセイレジェンドが内で粘っていた。着差だけで見れば、ラブミーチャンからその後ろの中央5頭、6着のドスライスまでがコンマ4秒差という接戦。しかし直線でのラブミーチャンの手ごたえと、ゴール前での脚いろからは、完勝といっていい内容だった。
勝ったラブミーチャンだが、今回の馬体重は前走の船橋からマイナス7キロで、今年唯一の惨敗となった黒船賞JpnⅢと同じ502キロ。「昨夜笠松を出発する前に食わせて、船橋より太目にと思っていたんですが、マイナス7キロは意外でした。パドックではあまり汗をかいてなかったので夏負けも心配したんですが、パドックでの足音と、そのあと返し馬は問題なかったということを(スタート前のゲート裏で)戸崎騎手から聞いて安心しました。長距離輸送はこれが最後になりますし、坂を克服してくれたのは、またひとつ手柄になりました」と柳江仁調教師。勝った喜びよりも、むしろ安心した様子が印象的だった。
ラブミーチャンは、これでダートグレード5勝目。今年ここまで地方馬ではほかに交流重賞を勝っている馬がいないだけに、地方競馬全体でもラブミーチャンにかかる期待は大きいものとなっている。このあとに予定されている、東京盃JpnⅡ、そして金沢で行われるJBCスプリントJpnⅠが、いよいよ現役生活の集大成。その結果次第では、2年連続3度目のNARグランプリ・年度代表馬も見えてくる。
そして今回もうひとつ注目となったのは、騎手の山本3兄弟の対戦。岩手に所属する長男の政聡騎手。目下岩手リーディングの次男、聡哉騎手。そしてデビュー2年目で船橋に所属する聡紀騎手は、自厩舎から遠征したアイディンパワーへの騎乗で、この対戦が実現。地方競馬では兄弟や親子で同じレースに騎乗するということはよくあるが、3兄弟での対戦はめずらしい。それがダートグレードの舞台で叶ったということは、3兄弟いずれもが切磋琢磨して活躍しているということの証しでもあろう。
戸崎圭太騎手
外枠もありましたし、内から行く馬がいたので控えましたが、行く馬がいなければ行ってもいいかとは思っていました。ラブミーチャンを信じて、リズムを崩さないように、ゴールまでしっかり走れるように乗りました。最後は詰められましたけど、強いレースを見せてくれました。
柳江仁調教師
これからの一走一走は、なんとか無事にという段階ですから、それで結果を残してくれるのは、競走馬としての充実期みたいですね。騎手の指示にもすごく素直にしたがうようになりました。無事にお母さんとして北海道に返してあげないといけないので、あまり無茶もできません。予定どおり次は東京盃です。