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2013年8月11日(日) 帯広競馬場

ゴール前5頭横一線の激戦
障害5番手から差し脚決める

 ばんえい競馬のルーツであるばん馬大会は昔、お盆の夏祭りのイベントとして各地で盛り上がりをみせた。真夏の大一番、ばんえいグランプリはその名残ともいえるだろう。当日は北海道日本ハムファイターズのイベントも開催され、入場人員は4,621人。昨年の3,312人を大きく上回った。
 今年はファン投票12位までのうちの10頭が出走するドリームレース。1位のキタノタイショウは今季重賞2勝で、カネサブラック(ばんえい記念2勝)などが昨シーズン限りで引退した後のばんえい競馬を牽引する存在。賞金別定では負担重量を課されることの多い同馬だが、今回はクラス別定のため、オープンクラスの5頭がすべて810キロ。ハンデに恵まれた感もあり、1番人気に推された。
 第2障害で最初に仕掛けたのは、7月の北斗賞を制したインフィニティー。この日の帯広は気温が29.1度まで上がり、金曜までの不安定な気候で湿った馬場も2.0%まで乾いた。騎手が「重い馬場だった」というように、障害では各馬が何度も息を入れ、キタノタイショウも膝を折る苦戦ぶり。その中で、最初に障害を降りたのはシベチャタイガー。ギンガリュウセイ、インフィニティーと続き、差し馬のホッカイヒカル、ホクショウダイヤが続いて、キタノタイショウは遅れて6番手。
 ゴール前は5頭の競り合いとなり、ホクショウダイヤが持ち味の差し脚で、2着のギンガリュウセイに0秒3差という接戦を制した。勝ちタイムは2分35秒1。2012年2月のチャンピオンカップ以来、久々の重賞制覇となった。
 ホクショウダイヤは10歳牡馬。重賞の常連だが、追い込み脚質で展開や馬場に左右されることもあり、惜しいレースが続いていた。また、表彰式にも参加できないほど気性が激しく、5月26日の大雪賞では、レース直前に松田道明騎手の指を噛んで骨折させ、騎乗変更。ピンチヒッターの島津新騎手で勝利したものの、松田騎手は2カ月の休養を余儀なくされた。今回松田騎手は骨折以来初めての同馬への騎乗だったが、「怖いということはない。(復帰後)調教もずっとつけていた」といい、細かいハミ使いなどをひとつひとつ丁寧に教えていたという。
松田道明騎手
スタートがよく、いい位置に付けることができました。馬場は重かったのですが、他の馬が苦戦していたので間に合いました。第2障害で馬との呼吸を合わせて、最初に馬が行きたいと思った時に仕掛けたのがよかった。この馬の良さは、差し脚と、前向きな気持ち。最高のレースができました。
松井浩文調教師
馬は夏バテもなく、調子はよかった。普段はおとなしいのにレースになると気性の激しさが出る。そこがいいところでもあります。もう10歳。今後は1個でも多く勝つことができれば。目標であるばんえい記念は、以前も見せ場があったし、(調教の)やりようによってはチャンスがあると思います。


 松田騎手に今後の目標を聞くと「ばんえい記念でしょう」。松田騎手と松井浩文調教師のコンビはカネサブラックと同じ。「2障害で膝をつきかけたけれど、立て直したのはさすが松田。タイムの流れも読んでいた」と松井調教師が言えば、松田騎手は「馬をよく管理してくれる」。信頼関係で結ばれた黄金タッグはこれからも続く。
 オーナーの井内昭夫さんは今季、4歳牡馬のホクショウユウキが重賞2勝し、2歳馬も3頭がオープン入りと「ホクショウ軍団」も絶好調。表彰式ではお孫さんも登場し、なごやかな雰囲気だった。
 レース後、ファンからは「今年の重賞はいいレースが多いね」という声が聞かれた。ゴール前は息をのむ接戦が多く、人馬ともに新たなスターが登場。これからも古馬戦線は群雄割拠の好レースが続きそうだ。

取材・文:斎藤友香
写真:NAR、中地広大(いちかんぽ)