早め2番手から直線抜け出す
偉大な兄に続けと重賞3勝目
関東以西では猛暑が伝えられ、画面越しに見た船橋の習志野きらっとスプリントは乾ききった良馬場と見受けられたが、岩手は今まさに梅雨のまっただ中。前週はかなりの降水量があり、盛岡競馬場自慢の芝コースが土曜日のレースでは使用不能となってダート変更になるほど。またマーキュリーカップJpnⅢ当日も盛岡地方は大雨・洪水警報が発令される空模様だったが、なんとか降雨を免れて曇、重馬場という状態でレースが実施された。帝王賞JpnⅠからレース間隔が1カ月弱というポジションのマーキュリーカップJpnⅢ。帝王賞ではJRA代表馬6頭がすべてGⅠ/JpnⅠ馬というハイレベルのメンバーになったが、その時の補欠馬2頭に、3頭が加わったこちらのJRA代表馬もすべてダートグレード勝ち馬という豪華版。レース史上最強といえる布陣になった。ただ、昨年のこのレースでレコード勝ちのシビルウォーは軽い骨折明けで昨年12月のジャパンカップダートGⅠ(9着)以来、グランドシチー、エーシンモアオバーらも若干レース間隔が空いており、現時点での力比較に難しさが感じられるレース前だった。
レースは人気を集めたJRA勢5頭の争いとなったが、直線で抜け出したのはソリタリーキングだった。いち早く逃げるエーシンモアオバーの直後という絶好のポジションを確保し、福永祐一騎手が「仕掛けるタイミングだけ間違えないよう」というほどの優位を作り出していた。連覇を狙ったシビルウォーは斤量58キロのせいか道中の反応がひと息で2着まで。単勝1番人気のグランドシチーも最後の直線は思ったほどに伸び切れず惜しくも3着。1馬身1/4差とはいえ、ソリタリーキングは着差以上の強さと映った。
ソリタリーキングは昨年9月の日本テレビ盃JpnⅡ以来の勝ち星。石坂調教師が「ちょっと分からないところのある馬」というように、前走の平安ステークスGⅢ(9着)が意外な凡走で、今回は少し人気を落としていた。GⅠ/JpnⅠ・9勝の偉大な兄ヴァーミリアンがいることからどうしても話題先行の面はあったが、こちらも重賞3勝目で長兄サカラートとは兄弟でのマーキュリーカップ制覇となった。
JRA勢5頭からは大きく水を開けられたが、6着には地元の青森産馬トーホクキングが入り2年連続の地方勢最先着。盛岡競馬場で来年11月3日に第14回JBCが行われることが発表されてから初めてのグレードレースであったが、改めて力差を感じさせられる結果となった。マーキュリーカップの行われた盛岡ダート2000メートルは、JBCクラシックJpnⅠも行われるコース。JBC開催まで残された時間は決して長くはないが、今回の差をどこまで詰めることができるか、岩手競馬の底力にも期待をしたい。
福永祐一騎手
馬場が軽かったので逃げ馬の後ろくらいと思っていましたが、2番手が取れていい流れに。道中もいいリズムだったので、仕掛けるタイミングだけ間違わないように動きました。まだ集中していない面もありますが、もともとの能力が高いですし、これを機に勝ち星を積み重ねていってほしいですね。
石坂正調教師
(前走、平安ステークス9着は)ちょっと分からないところのある馬で、決して自信のない状態ではなかったんですけどね。今回は地方の競馬ですから前へ行こうと思っていましたし、道中2番手が取れて、そこから前へ行く気を見せていました。次走は日本テレビ盃です。