ゴール前抜け出しJpnⅠ初制覇
混沌のダート覇権争いに名乗り
ダートマイルのJpnⅠ、そして帝王賞JpnⅠに向けてということでは、ベストともいえるメンバーが集まった。とはいえ、それは層の厚いJRA勢のこと。地方勢にとってフリオーソの抜けた穴は大きく、ダートグレード勝ちのあるナイキマドリードこそいたものの、地方馬はすべて単勝万馬券という極端な人気。そして結果もファンの支持どおり、JRA勢の中でも単勝2~4倍台と期待された3頭で馬券圏内を争う結果となった。
「内枠で包まれるよりはと思って逃げるつもりでした」(濱中俊騎手)というエスポワールシチーが好ダッシュから先頭に立ち、ピエールタイガーの真島大輔騎手も気合を入れて行く気を見せたが、すぐに控えて2番手。ナイキマドリードが続き、ホッコータルマエが4番手。他のJRA勢3頭はそのうしろ、中団を追走という隊列に落ち着いて1~2コーナーから向正面に入った。
エスポワールシチーが引っ張る展開はほとんど緩みがなく、3ハロン目に12秒5があった以外、1200メートルまでは12秒0より速いラップを刻んだ。さすがにこの流れは地方勢には厳しく、3~4コーナーを回るあたりでは早くもJRA勢の争いに。
直線を向いてもエスポワールシチーが単独で先頭。ホッコータルマエが2番手に迫ったが、1馬身半~2馬身ほどの差がなかなか詰まらない。8歳のエスポワールシチーには、かしわ記念4勝目という快挙も見えたが、パサパサに乾いた馬場もあってか最後に行き脚が鈍った。残り100メートル、ホッコータルマエがエスポワールシチーをとらえると、1馬身半突き放しての勝利。直線差を詰めたローマンレジェンドが1馬身差で3着に入った。
勝ったホッコータルマエは、佐賀記念JpnⅢ、名古屋大賞典JpnⅢと連勝し、前走アンタレスステークスGⅢでは、2キロの斤量差があったとはいえニホンピロアワーズを競り落として勝つなど確実に力をつけてきていた。これでダートグレード4連勝で、JpnⅠ初制覇。若い4歳世代から、ハタノヴァンクールに続いて古馬ダート中長距離戦線の覇権争いに名乗りを挙げた。
これでダートGⅠ/JpnⅠでは、昨年秋のマイルチャンピオンシップ南部杯以降、すべて勝ち馬が異なるという混沌とした状況。
「今年前半の区切りとしての目標は帝王賞」とホッコータルマエの西浦勝一調教師。1番人気ながら3着に敗れたローマンレジェンドは今回が初めてのマイル戦で、「流れがちょっと忙しかったし、今回は休み明け。帝王賞に向けてということではいい競馬ができた」と藤原英昭調教師。別路線組のニホンピロアワーズ、ハタノヴァンクールも帝王賞GⅠを視野に入れている。4歳世代にはダイオライト記念JpnⅡを逃げ切ったオースミイチバンもいる。エスポワールシチーもまだまだ元気だ。フェブラリーステークスGⅠを制したグレープブランデーこそ復帰は秋以降の予定だが、7週後の帝王賞は、これら有力馬がJRAの選定枠に収まるのかという心配はあるものの、間違いなくこの路線の頂上決戦となりそうだ。
今開催からオープンした新投票所は大盛況
なお、船橋競馬場のスタンド裏には、この開催から新投票所がオープン。そして大型連休最終日となったこの日は好天にも恵まれ、早い時間帯からたくさんのファンが来場。地方競馬IPATの効果もあり、かしわ記念1レースの売り上げは、8億965万4200円のレコードとなった。
幸英明騎手
強い競馬でした。スタートも速いほうですし、器用さもある馬なので、1600メートルでもだいじょうぶだと思っていました。予定通りのポジションにつけて、エスポワールシチーを射程圏に入れながら、あとはうしろのローマンレジェンド、セイクリムズンを気にかけながらという競馬で、いい結果になりました。
西浦勝一調教師
使うごとに力をつけているし、レースセンスもすごくいいので、乗り役の意のままに動いてくれます。調教を積むたび、レースをするたびに力をつけているので、すごく充実してきています。馬が自分でオンオフを切り替えられるので、競馬に対してすごく集中しています。すごく賢い馬です。