レースハイライト タイトル
dirt
2013年5月2日(木) 園田競馬場 1870m

好ダッシュから楽々突き放す
今後に夢が広がる6馬身差圧勝

 今年の兵庫チャンピオンシップJpnⅡは、大型連休の谷間にあたる平日の開催。翌日の憲法記念日にダートグレードレースが設定されなかったのは、おそらく地方競馬IPATでの発売を考えてのことだろう。
 それでも年に3回しかない園田競馬場でのダートグレードレース。競馬場には朝からたくさんの観客がやってきた。
 そのいちばんの目当てであるメインレース。今年は地方所属馬の重賞勝ち馬が高知のマインダンサーだけというラインナップでは、メンバー的な盛り上がりにいささか欠けるところではあったが、来場しているJRAの騎手は、全国リーディングの1位から3位までと5位、6位という豪華メンバー。パドックの周囲から聞こえてきたシャッター音は、過去に園田競馬場で筆者が見たダートグレードレースと遜色がないほどに感じられた。
 JRA所属5頭の人気は割れ模様。2倍を切る支持を集めたコパノリッキー以外の4頭が、すべて5倍台という時間帯があったほど。その数字は次第にばらけていったが、拮抗の争いという全体像でファンは捉えていたようだった。
 しかし、コパノリッキーは強かった。
 芝の重賞で逃げ粘る競馬を見せていたバッドボーイが出遅れ。対照的にコパノリッキーは完璧なタイミングで飛び出して、すかさず後続を引き離した。2番手につけたのは地元所属馬では大将格のイチノバースト。その後ろにJRAのソロル、高知のマインダンサーがつけて、ノウレッジ、ベストウォーリアのJRA2頭は中団に。全体的に縦長の展開は、ほとんどそのままの位置取りで1周目のゴール地点を通過していった。
 レースが動きをみせたのは、スタート地点に戻ったあたり。先頭をうかがうJRA勢が差を詰めにかかり、3コーナー手前では先頭から5番手までがすべてJRA所属馬になった。その後続の動きに呼応してコパノリッキーもスピードを上げていったが、鞍上の手は不動のまま。逆にベストウォーリアの岩田康誠騎手、ノウレッジの蛯名正義騎手が懸命に手を動かしている姿は、そこで“勝負あった”を示すものだった。
 果たしてその結果は、コパノリッキーが最後は流しぎみに走って6馬身差で勝利。2着ベストウォーリアと3着ソロルの間には9馬身もの差がついていた。
 「ゲート入りであんなに待たされたのに、微動だにしなかったんですよ。いやあ、すごいわ」と、感嘆の声を漏らしたのは、担当厩務員の木戸健太郎さん。「調教では乗り役さんから、まだ緩いって言われるんです。幼い面も残っていますし、これからもっと強くなりますよ」という彼のコメントは、兵庫チャンピオンシップ歴代3位、良馬場では断然のタイムを楽々とマークしたことを考えると、今後への楽しみや期待が増す一方になる。
 「祐一くんが、相当な馬ですよ、と言っていましたし、今日は期待していました」と、オーナーの小林祥晃さん。将来への夢が果てしなく広がっていきそうな圧倒的な勝利には、観客の多くもまた、満足そうな表情をみせていた。
福永祐一騎手
逃げられれば逃げるということはレース前にオーナーに伝えてありましたが、楽に先手を取れたのでマイペースで行けました。前回のレース(伏竜ステークス)はスタートで滑ったので、そこだけは気をつけて。強かったですね。最初のコーナーのところで、だいたい勝てたかな、と思いました(笑)。
村山明調教師
ペースが落ち着いているかな、と見ていましたが、内心はドキドキしましたよ。ここまで順調に追い切りをこなしていますし、調教時計も出そうと思えば出せる馬。地方の重めのダートもこなしましたし、この先の成長も見込めます。今後は日本ダービーかジャパンダートダービー、もしくはその両方を目指します。


取材・文:浅野靖典
写真:桂伸也(いちかんぽ)