2番手から直線抜け出し快勝
期待の地元馬も粘りを見せる
2008年以降のかきつばた記念JpnⅢでは、7枠に入った馬が3着以内に入線しているというデータがある。今年の該当馬は、地元代表格のサイモンロードと、ダートグレードで善戦を続ける高知のコスモワッチミー。いずれも地方競馬ファンの期待を集める存在である。
とはいえ、このレースは2006年に川崎のロッキーアピールが勝利して以降、2着以内に入ったのはJRA所属馬のみ。今年もやはり上位人気を独占したのはJRA勢であり、その4頭はすべて単勝10倍未満となっていた。なかでも1.9倍と人気を集めたのが、3走前に兵庫ゴールドトロフィーJpnⅢを勝利しているティアップワイルド。地方競馬には初登場ながら、昨年のフェブラリーステークスGⅠで4着に入った実績があるダノンカモンも、2.5倍という高い支持となっていた。
今年のかきつばた記念は、高知のクイックリープが出走を取り消して11頭立て。ゲートが開いた瞬間に、まっさきに飛び出していったのはサイモンロードだった。最内枠を得ていたティアップワイルドも先手を取る姿勢を見せたが、競るのを避けるようにして2番手に。そしてすぐさまサイモンロードの外に出した。その直後にはセレスハント、ダノンカモンとJRAの2頭が続き、1コーナーに入ったあたりでペースが一旦落ち着く形になった。
名古屋競馬場では馬群が向正面に到達すると、場内の映像が馬を正面から見る角度に切り替わる。そして先頭が3コーナーに入るところで再び横からの映像に戻るのだが、今年はそこで場内からどよめきが起こった。
大きく映し出されたのは、手応えよく逃げているサイモンロードの姿。
地元ファンを沸かせたサイモンロードは3着
その直後にいるティアップワイルドは鞍上が手を動かしている。「これは、ひょっとして」というざわめきがしばらく続く。しかし次第に2頭の差は小さくなり、直線に入ったところで順位が逆転。それでも場内の観客からは、粘り込みを図るサイモンロードへの声援が続いた。その声量はゴール直前でダノンカモンが猛追してきたところで最高潮に。きわどくなった2着争いの結果は、全馬のゴール後に場内映像でスローVTRが流されたときに聞こえてきたため息が示していた。
「内枠だったらもっと楽に逃げられたでしょうね。でも、こういう経験をしていけば、もっと強くなっていくと思います」と前を向いたのは、サイモンロードを管理する角田輝也調教師。ダノンカモンを管理する池江泰寿調教師は「向正面でまくり切ったほうがよかったかもしれないですね」と振り返り、次走は浦和のさきたま杯JpnⅡを予定しているとコメントを添えた。
白熱の2着争いに2馬身差をつけたティアップワイルドは、ダートグレード2勝目。「夏はあまりよくない」(西浦勝一調教師)そうで、今後は1戦か2戦して休養に入る予定とのことだが、暑い時期が過ぎれば実りの季節。「JBCが目標になりますね」と水を向けると、笑顔とともに「そうですね」という答えが返ってきた。
石橋脩騎手
逃げるつもりでしたが、外が速かったので2番手に。前回(東京スプリント)は砂をかぶってリズムが悪くなったので、今回は逃げ馬の外につけて行けたのも良かったと思います。3コーナーでは前の馬の手応えがよくて一瞬あせりましたが、4コーナーでは脚いろが逆転していたので大丈夫だと思いました。
西浦勝一調教師
3コーナーあたりでは逃げ馬の勢いがよかったので心配しましたが、4コーナーではこちらの手応えが上でしたね。いつも一所懸命に走ってくれる馬で、ジョッキーもうまく乗ってくれました。今後はさきたま杯や北海道スプリントカップあたりを目標にしていく予定です。