レースハイライト タイトル
dirt
2014年3月19日(水) 船橋競馬場 2400m

狙い通りの展開で直線抜け出す
GⅠ馬がプライドを示しての完勝

 この日、2011年の東京ダービーなど重賞11勝を挙げた名牝クラーベセクレタの引退式が行われた。東京ダービーのゼッケン“10”をつけて本馬場に登場すると、ファンからは惜しみない拍手が送られた。一時代を築いたクラーベセクレタの引退は寂しくもあるが、川島正行調教師が「良い子を生み、その子が船橋に帰ってきてくれるだろう」と語ったように、その血を受けつぐ子供たちが、また地方競馬を盛り上げてくれることを楽しみにしたい。
 その引退式の余韻が残る中、船橋競馬伝統の一戦、ダイオライト記念JpnⅡが行われた。1番人気に支持されたのは、前走の川崎記念JpnⅠで久々のダートにも関わらずホッコータルマエに半馬身まで迫っての2着だったムスカテール。単勝1.6倍の評価を受けた。2番人気は2012年のジャパンカップダートGⅠの覇者ニホンピロアワーズで2.1倍と、この2頭の一騎打ちムードが漂った。しかし結果は、ニホンピロアワーズの完勝。ムスカテールは馬群に沈み、明暗が分かれた。
 レースは予想通りトウショウフリークが先手を取ってペースを握った。大外からサミットストーンが2番手につけ、3番手にニホンピロアワーズ、ムスカテールは内の4番手と、スタート直後はこの位置関係だったのが、この時ニホンピロアワーズの酒井学騎手の好判断があった。「ムスカテールを見ながら自分で動ける位置でレースがしたかったので、ここでわざと内を開けたんです。そうしたら思った通り相手が内から進んでくれて、ヨシッと思いました」。1周目のスタンド前では、ニホンピロアワーズがムスカテールを前に見ながら絶好の位置取りでレースを進めることになった。
 トウショウフリークのゆったりとしたペースでレースは終盤へ。すると3コーナーあたりでムスカテールの手ごたえがあやしくなり、岩田康誠騎手の腕がさかんに動き始めた。一方、ニホンピロアワーズの手ごたえは抜群。後続を引き離そうとするトウショウフリークを直線半ばで捉えると、並ぶ間もなく交わし先頭でゴールイン。溜め逃げで見せ場を作ったトウショウフリークは2馬身離されての2着。2番手でレースを進め、最後まで粘った船橋のサミットストーンが3着に入った。人気を集めたムスカテールは5着。岩田騎手は「3コーナー過ぎから手ごたえが悪くなりました。原因は分かりません」と首をかしげていた。
 レース後、スタートからゴールまでを冷静に振り返ったニホンピロアワーズの酒井騎手。「最後も、ムスカテールが伸びてくるのではないかと気を緩められなかった」と、ライバルを意識しながらの騎乗だったようだが、「ここで負けたら、この後自信を持って臨めないですから」とジーワン馬のプライドはきっちり守った。今年前半の大目標、帝王賞JpnⅠに向けて、「相手は強いけど反撃する力は持っています。もちろん倒しにいきますよ」と、この馬を知り尽くしている鞍上は力強い言葉を残した。
 地方馬最先着は3着だったサミットストーン。石崎駿騎手は「道中も手ごたえがとても良くて、最後まで頑張ってくれました。重賞を獲れる力は持っています」と称えた。金沢ナンバーワンの実績を引っ提げて今年から南関東に移籍し、すでにその能力の高さを示している。これから南関東を背負って立つ頼もしい存在になりそうだ。

酒井学騎手
前走からも調整は順調でいい状態で臨めて、力をしっかり発揮してくれました。左回りのコーナーを注意していましたが上手に回ってくれたし、イメージ通りの競馬ができました。最後気を抜くところがあるので、直線の短い地方の馬場が合っています。まだまだ強いということをみなさんに見せていきたいです。
大橋勇樹調教師
フェブラリーステークスではほとんど力を発揮できませんでしたし、距離やメンバーを考えると負けられない一戦でした。輸送でかなり馬体が減ってしまいますが、飼い葉を食べないわけではないので心配していませんでした。去年2着に敗れている帝王賞ではライバルたちに負けないよう頑張りたいです。

最後まで粘った船橋のサミットストーンが3着に入った

取材・文:秋田奈津子
写真:国分智(いちかんぽ)、NAR